【田村耕太郎氏インタビュー】グローバルリーダーは自分を高める環境を自ら作る(3) 

2017年度特別インタビュー
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実業家であり、元政治家であり、シンガポール・リークワンユー政治大学院で地政学の教鞭も取る田村耕太郎氏へのインタビュー、最終章。グローバルで活躍する個人に対してメッセージを贈る。

世界中のリーダーから学んだことは何か?

= 敢えて言う。人格とリーダーシップは別モノ =
世界のリーダーの話はぜひしたいと思っていた。なぜなら日本における「グローバル人材」関連の議論や書籍に、違和感を覚えているからだ。ラッキーなことに、日本人の中でも私ほど旬で世界的なリーダーに出会わせてもらっている人間は珍しい。だからこそ果たさねばならない責務、つまり伝えないといけないことがあると思っているからだ。

結論としては、世界を舞台に活躍する彼らに明確な共通点はないと思う。リーダーにはリーダーの数だけ個性があるのだろう。様々な出版社から「世界的リーダーの共通点」のようなタイトルで書籍執筆を依頼されるので、仮説を立てて彼らを分析しようと試みたが、共通点が見出せないのだ。利他的な人もいれば利己的を通り越して自己中心だけど大成功している人も少なくない。オープンな人もいれば、引きこもりのような人もいて、細かい人もいれば、大雑把な人もいる。本当に様々なタイプのリーダーに出会う。アンナカレーニナの世界のごとく「世界的なリーダーの形はそれぞれ違う」のだ。

唯一、共通点があるとしたらトンデモナイ人が多い。トンデモナイという意味は、頭脳的な優秀さであったり、エネルギー量だったり、性格がトンデモナイかったりと様々だが。もっとわかりやすくいうと「リーダーは必ずしも人格者ではない」というか、「深く知れば人格者とは程遠い」ということだ。これは、一緒に投資や事業をやるなど、深く付き合わないとわからない。初対面でインタビューしたくらいで本性は読めない。お金があるのに半端ないケチだったり、朝令暮改どころか朝礼朝改で人を振り回したりもする。感情の起伏も実は激しい。事業はブラックすれすれのグレーソーンをガンガン突き進む。彼らくらいの百戦錬磨なら、一度しか会わない日本人のインタビュアーなど煙に巻くこと容易いだろう。

敢えて言おう。「世界で活躍するリーダーシップと人格は関係しない」。時代を切り開くような人物に人格を求めてはいけない。時代を切り開くような人は、必ず突出した部分があるから自然と人間としてバランスが崩れているのだろう。逆にバランスが取れている人は、突き抜けられないと思う。しかし、日本は強烈な免疫システムのごとく、少しでも異分子に感じるホリエモンや村上世彰といった尖った人材が現れれば、寄ってたかって排除してしまう。

社会がこのようなトンデモナイ変人を受け入れ、育てるくらいの度量がないと、いかに「日本にシリコンバレーを」「起業家人材を育てよう!」と言っても無理だ。中国や米国を見ていると、トンデモナイ人材を出る杭として打つのではなく、活かしながら伸ばし、ある意味したたかに自分も美味しいところ頂く社会の懐の深さがある。そして失敗にも寛容だ。特にアメリカ社会は一度罪を犯しても、カムバックしてくる人材を大歓迎する。スポーツから芸能まで「カムバック賞」が必ずあるところが素敵だ。

= 日本で強まる同調圧力 =
今の日本では、何かに突出して人間としてのバランスを崩している人材をリーダーとして認めるのは難しい。最近、日本に帰るたびに、益々同調圧力がかかった社会になってきていると感じる。芸能人の不倫に対してさえ、一般国民やメディアが憤って謝罪を求める様子を見ていて、「大丈夫か?」と思ってしまう。血税で食べている人間ならまだしも、自分の力で稼いでいる人がなぜ謝罪しないといけないのか。学校教育でも、軍人教育のなごりのような「指示待ち」「コンセンサス重視」の人材を育てている。こうした日本の教育は、イノベーションを起こすような人材には息苦しいだけだろう。確率的には、1億人以上の人口を抱える大国なら、多くの傑出したリーダー候補生がいてしかるべきだ。しかし、多くの才能が同調圧力やミスに対して不寛容な環境のせいで窒息しているように見える。日本でもセンスのある人には出会うが、そのセンスを活かせる状況が作れない。従い、大きな方向転換ができる人材は、意図的に日本の外で育てざるを得ないだろう。

どのように自己成長・自己研鑽をしているのか?

=自分の周囲にいる人の平均が自分の能力=
私のような個人として動く仕事の仕方だと、日々のベンチマークがなく成長度合いを測りにくい。そのため、年2回ほど自分を測る機会を持っている。1つは、アメリカを中心とする超一流の起業家、ノーベル賞受賞者、新旧の大統領のアドバイザー、名門大学の総長や名門大学院の学長らで合宿して討論する秘密の会だ。この会は講演もパネルもなく、議論が中心だ。内容を一切他言してはならないので詳細は書かないが、誰もが知っている著名人も少なくなく、各人のプロジェクトは「人類を前に進める」クラスの壮大なものばかりだ。そこでの毎年の再会で、必ず「この1年何をやっていたのか」と聞かれる。その時のやりとりで、自分が1年どれくらいのことをできたのか測ることができる。

もう1つは私が唯一の日本人フェローとして登壇するミルケンインスティテュート主催のグローバルカンファレンスだ。ここも世界中のリーダーが集まる。特に世界の金融界はほとんどの主要メンバーが参加するので、パネル登壇をしたり、参加者の活躍の様子を見聞きすることで自分のポジショニングを再認識できる。

私は自分にない能力を持ち、それを磨き奮闘している多様な人々に囲まれることを常に意識している。「自分の周囲にいる人の平均が自分の能力」とよく言わる。つまり、どんな人々に囲まれて生きていくかがとても重要なことだ。自分を奮い立たせてモチベーションを高めて何かやることも意義があるだろうが、私の場合はこのように自分で自分を焚き付けなくても済む仕組みを作っている。

= 日本人であることのメリットを最大限生かす =
海外で活躍する上で、日本という背景を持っていることは実に大きいと感じる。幸か不幸か先ほど申し上げたような世界のリーダーが集まる機会で日本人の存在感がないので、「日本のことなら、コータローに聞こう」「日本に関する部分はコータローに任せよう」という状況になっている。だから私は分不相応なほど力のある世界的なリーダーとの出会いに恵まれることになっているのだと思う。1億2千万人の人口がいるのに、今の私と被るようなポジショニングの日本人が驚くほど少ない。世界に出れば、日本人や日本に対するリスペクトはまだ大きいし、日本や日本人と何かやりたいと思っているリーダーもたくさんいる。日本を背景に持つ日本人として非常に美味しい目に遭う毎日である。

= 海外にいることのメリットを最大限生かす =
海外にいることの最大のメリットは、日本を相対的に見られるということだ。日本にいるときは、望ましくないポイントを過大評価したり、素晴らしい点を過小評価したりしていたが、今は素直に見ることができる。働き方も変わった。ファミリーが人生の中心で、その次に仕事がある。あくまで成果で測られるので、時間の使い方や仕事に対する考え方が大きく変わった。成果は生産性と直結しているし、周りの人々が日本にいる日本人より自分の人生を謳歌しているので、“自分にしかできないこと”に重きを置き、それに注力するようになった。

多様な宗教や民族あふれるアジアでは、皆に共通の「常識」などない。多様な皆に横串を刺すとしたら、公明正大で合理的な成果主義しかないのだろう。外に出れば日本ほど誰も助けてくれないが、その代りに自分の頭で考え、行動して結果を出せば、どんな働き方をしようが誰も何も言わない。海外の人々は自分のことで精いっぱいな働き方をしているので基本的に他人にあまり関心がないが、日本では他人に関心があり過ぎてまるで相互監視しているようだ。徹底的に追い詰めて生産性を高めるような働き方をしていないから、他人のことを気にする暇があり、空気を読んで本当に必要かどうかわからない残業や会議をするなど、窮屈な生活になっているのではないか。

私は日本にも頻繁にいくが、成果を出せば、好きなタイミングで好きな人にだけ会って、最低限必要な話だけして、あとは美味しいものを食べて帰ることができる。こういうのは日本国外では一般的というか当たり前すぎることだと思う。日本は同調圧力が強いので、働き方改革も皆が一斉に同じようなことをしなくてならないようなものになっており、少し滑稽に思える。第一歩としては悪くないのかなぁとも思うが。

今一番やりたいことは何か?

= 「日本を開くこと」に時間を使いたい =
海外にいると、日本への想いは募り、愛国心は強くなる。この素晴らしい国や文化を創ってくれた先人たちに対する感謝の気持ちでいっぱいだ。だからこそ、日本をオープンにしたい。日本や日本人は、開いていけば眠っている潜在能力を覚醒させて大きく飛躍できると思う。アジアナンバーワンの名門大学、国立シンガポール大学のリークワンユースクールで私が主催しているASEAN地政学プログラムも、アジアを中心に世界で飛躍したい、起業家、投資家、医師・会計士・弁護士等のプロフェッショナル、大企業幹部やファミリー企業のオーナーたちがすでにのべ230名ほど参加してくれている。彼らの2割以上は私のプログラム卒業を経て、海外に拠点を設置し外に出ている。外に出て鍛えれば光る人材もたくさんいる。日本に持っていけば日本を根本から変えていく人材もたくさんいる。日本社会を変えるのは「若者、馬鹿者、よそ者」といわれているが、そういう人材で日本が本当に好きな方々が世界にたくさんいる。

リークワンユースクールとDataramaを使って日本のリーダーや企業や技術・製品を世界に出していきたい。アジア有数のブティック型投資銀行のアドバイザーもやっているが、日本に投資したい事業家や投資家は増えている。彼らが見出している日本国内の機会を日本人にもシェアし、外の資金や経営能力を使って日本の経済やビジネスの生産性を高め人口減少や高齢化でも成長する可能性のある日本市場にしていきたい。家事支援人材から始まる訓練された高度技能を持つ外国人人材の日本への送り出しも手伝わせていただいた。明治維新も戦後の復興も古くは戦国乱世も、日本は世界に開いたときに大きく飛躍する。日本を開くプロジェクトをたくさん回している。それらが「石の上にも三年」でようやく動き始め、自律的に回転し始めた。面白いことになると思う。こうご期待!

= もともと人類はグローバルな存在で、日本はその最先端=
人類はアフリカで誕生したと言われている。アフリカで生まれた人類が陸路や海路を使い、欧州からアジアにわたってきた。そして日本列島へ。そう考えるとわれわれ日本人の古い遺伝子には結構なリスクテイカーでありグローバルな素養が眠っている。それをたたき起こせばいいことだと思う。

日本人が心も社会も世界に対して開いた時に、その能力は覚醒されるのだと思う。それをアジアに拠点を持ちながら、日本、アメリカ、欧州を渡り歩きながら、現実的に日本社会に貢献できる形で、日本を開くことに尽力したい。そう考えるといつもワクワクしている。

 

【ポイント】
・未来を切り開くようなリーダーに人格を求めてはいけない
・自分の周囲にいる人の平均値が自分。どんな人々に囲まるか?環境作りを意識せよ
・日本人は元来グローバルなリスクテイカー。日本を開いて覚醒させればまだまだ捨てたものではない

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