第12回 創造的な仮説を考えるためのコツ(3)発想を途中で止めず、「So What?」を繰り返す 

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前々回と前回の2回にわたり、創造的な仮説を考えるためのコツとして「常識を疑う」「新しい情報と組み合わせてみる」「発想を途中で止めず、『So What?』を繰り返す」という3つのポイントを紹介し、それぞれについて詳説してきました。今回は最後の「発想を途中で止めず、『So What?』を繰り返す」ということについて考えてみましょう。

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前々回に少し触れましたが、創造的な仮説は、ものごとをしつこく粘り強く深く考える中から生まれてくるものです。しつこく粘り強く深く考えるからこそ、前回紹介した「新しい事実」とそれまでに考えてきたことが化学反応を起こし、誰も思いつかなかったようなアイデアが生まれてきます。これも以前に触れた事例ですが、ニュートンとリンゴのエピソードもそれに近いといえるでしょう。

とはいうものの、「しつこく粘り強く深く」は、姿勢としてはよくわかりますが、具体的にどうすればよいのでしょうか? ここでは、その具体的な方法論として、「発想を途中で止めず、『So What?」を繰り返す』ということを主張したいと思います。

参考:「なぜ?」を5回繰り返す

その前に、トヨタ流問題解決について簡単に触れておきます。トヨタには、「『なぜ?』は5回繰り返せ」という有名な社内の格言があります。これは、トヨタ流問題解決を磨き、世に知らしめた大野耐一元副社長が最初に言ったといわれています。

たとえば、「A部品の不良率が高い」という問題があったとします。そこで最初の「なぜ?」を問います。その結果、「Bラインの作業のバラツキが大きい」という大きな原因が発見されたとします。そしてさらに「なぜ、Bラインの作業のバラツキが大きいのか?」を問います。

いくつか仮説を持ちながら調べた結果、「器具や人のポテンシャルには問題はないが、マニュアルが整備されておらず、作業手順が標準化されていない」といった原因がわかってきます。

多くの会社では、ではマニュアルを作ろうで終わってしまうかもしれませんが、これは下手をすると対症療法にとどまってしまい、問題の再発生を防ぐことができません。

そこでさらに「では、なぜマニュアルが整備されていないのか?」と問いかけていきます。「マニュアルがなくとも業務手順はばらつかないだろうとマネジャーが思い込んでいた」あるいは「マニュアルの更新が技術の進化に追いついていない」などのより本質的な原因が見えてきます。

もし前者が主要因であれば、さらに「なぜ、マニュアルがなくとも業務手順はばらつかないだろうとマネジャーが思い込んでいたのか?」を問い、「当該のマネジャーが以前勤めていた会社にはマニュアル化する文化がなく、そのやり方をそのまま持ち込んでしまった」などのさらに新しい原因が見えてきます。

こうして突き詰めていった結果、ことは単純なマニュアルの存否の問題ではなく、「暗黙知を形式知化するという組織文化を、多忙を理由に、教育し切れなかった」という、業務負荷や人材開発に関する組織的問題に行き着くかもしれません(なお、ここで挙げた事例は架空のものであり、トヨタの実際のケースではありません)。

ちなみにトヨタには、「5W1H]という非公式的な社内用語がありますが、これは巷間言われているものとは意味が違います。トヨタにおける「5W1H」は、「5回『なぜ?』を繰り返して問えば、自ずとHow(解決策)は1つに定まってくる」という意味だそうです。

「So What?」(だから何が言えるか?)を何回も繰り返す

ファクトから仮説を発想するのは、「なぜ?」を問うのとは逆の方向ですが、しつこく粘り強く考えることが良いアイデアをもたらすのはここでも同じです。「So What?」をしつこく何回も繰り返すことが、それまで他者が考え付かなかった新しい仮説をもたらします。これも例で考えてみましょう。

たとえば、「ペットを家族のように扱いながら飼う人々が増えている」という事実があります。ここから何が言えそうでしょうか? 「ペット向けの葬儀がもっと盛んになる」あるいは「ペット向けの保険がもっと売れる」などがすぐに出てきます。では、たとえば「ペット向けの葬儀がもっと盛んになる」からは何が言えそうでしょうか?

「ペット向けのお墓が売れる」「ペット専門のお坊さんのニーズが高まる」「人間とペット共用の仏壇ニーズが高まる」などが考えられそうです。ちなみに、最後の「共用仏壇」は、仏教的な常識(「人間」と「畜生」を明確に区別する)から考えると成り立ちにくいように思われます。これは逆に言えばチャンスかもしれません。仏教的な戒律を乗り越えながらも、「ペットを篤く供養したい」というニーズをうまく満たすことで、それまでになかった商品を生み出せるかもしれないからです。

なお、上記の例はニュートラルな立場で考えてみましたが、望まれる「So What?」は、立場によって変わってきます。たとえば、お坊さんの立場であったら、上記の仮説からさらにどのような踏み込んだ仮説を出せるでしょうか? あるいは、IT業界の新商品担当者であったら、どのような踏み込んだ仮説を出せるでしょうか。たとえば後者であれば、「バーチャル仏壇」などの斬新なサービスを提示できるかもしれないのです。

ところで、「So What?」は何回繰り返せばいいのでしょうか? 筆者自身、明確な答えは持っていないのですが、「これで競合を出し抜けるか?」「ありふれすぎた結論ではないだろうか?」などを自問し、ある程度の自信やワクワク感が持てるところまでは繰り返し考えてみたいものです。

「他にないか?」も同時に考える

さて、ここまで説明して来た内容は、「深さ」を主な論点にしてきました。実はもう1つ重要なのは「広さ」です。広さについても同様に、「しつこく粘り強く」考えておきたいものです。なぜなら、最終的に選んだものの「質」は、全体の候補の「量」に比例することが少なくないからです。最初の1つのアイデアで「これだ!」と思考をとめてしまうのではなく、「他にないか?」「もっと良いものはないか?」を繰り返し問う姿勢が必要です。

そのために、5個以上、あるいは10個以上はアイデアを出す、というルールを自分自身に科してみるなども一つの方法です。たとえば、先ほどの「ペット向けの葬儀がもっと盛んになる」から他にどのような「So What?」が出てきそうでしょうか。皆さんも5つ以上考えてみてください。

「他にないか?」をシステマチックに考えるテクニックとしては、ロジックツリーの活用もあります。奥さんへのプレゼントというテーマを考えてみましょう。この例ではたとえば

「有料」と「無料」
「モノ」、「サービス」
「衣」・「食」・「住」・「その他」
「メンタルなもの」、「フィジカルなもの」

など、いわゆるMECE(モレなく、ダブりなく)の軸を複数だし、どんどん枝分けしていくのです。

たとえば、「有料」で「モノ」で「衣」で「フィジカルなもの」であれば、洋服や靴というアイデアがでてきます。「無料」で「サービス」で「その他」で「メンタルなもの」であれば、自作の曲を演奏するなどが考えられます(所定の効果が得られるかはまた別問題ですが)。

実は、広く考えるもっと有効かつ手軽な方法は、他人の力を借り、チームで考えることです。「深く考える」ということは人数が集まったからといって必ずしも加速しないことが多いのですが、広さや幅は、チームで考えることで覿面に効果が現れます。ぜひ積極的に活用されるといいでしょう。

【お知らせ】本連載が『グロービスの実感するMBA』シリーズ第3弾として書籍になります! ここまでの議論を、より身近に理解するためのケースを追加し、構築した仮説の検証法についても詳しく解説します。ダイヤモンド社より、2008年9月に刊行の予定です。どうぞお楽しみに。

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