切れる“包丁”を選んで使い込んでほしい~『[新版]グロービスMBA経営戦略』座談会 

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2017年3月、『 [新版]グロービスMBA経営戦略』が刊行された。1999年の初版以来の全面改訂である。執筆に当たったグロービス経営大学院の3教員に、その要諦を聞いた。(司会は、水野博泰=GLOBIS知見録「読む」編集長)

司会: 新版上梓、おめでとうございます。それぞれのご担当パートを教えてほしい。

嶋田毅(以下、嶋田): 全3部、各部3章ずつで全9章という構成。私は、第1部「経営戦略の基本コンセプト」を担当した。1章はポーター流ポジショニング論に通じる、事業経済性の活用をメインにしている。2章では旧版では取り上げていなかった資源ベース論、3章では戦略の動的な捉え方、ラーニング論などを取り上げている。

荒木博行(以下、荒木): 私は第2部「経営戦略立案の実務に使えるフレームワーク」を担当した。4章では、事業戦略の立案に不可欠なフレームワークについて学ぶ。5章では、全社戦略という視点で、「PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)」やアンゾフのマトリクスなどのフレームワークを紹介。6章では、戦略立案と実行の橋渡しという観点で、立案した戦略を評価する視点や考え方を学ぶ。

山口英彦(以下、山口): 私は第3部「経営戦略の応用」を担当した。事業創造戦略、グローバル経営戦略、競争優位の再考という切り口で、最新の戦略論についてまとめた。競争優位の考え方の変遷についても触れている。

司会: 18年ぶりの全面改訂。そこに込めた思いは?

嶋田: 18年の間にいろいろなことが変わった。旧版の時には、ITビジネスは黎明期だった。当時はまだプレゼンスがほとんど無かった企業が今ではものすごく大きな時価総額になったりしている。経営戦略論を語る上でのモデルプレーヤーが変わったのだ。特にITビジネス戦略の考え方やグローバル戦略の考え方について、ぜひとも最新の知見を盛り込みたかった。マイケル・ポーター的ポジションニング論を押さえつつ、資源ベースの戦略論(リソース・ベースド・ビュー)を丁寧に解説する必要もあった。

山口: 世の中も大きく変わったが、我々グロービスの教員も18年の間に経営大学院や企業研修の場において様々な経験を積んだ。その中で、経営戦略のどういうコンセプトやフレームワークが実務家にとってより重要なのかという現場感を掴んできた。数ある戦略論の中で、「これはぜひ知っておくべきだ」「限界もあるが、こう使えば太刀打ちできる」など、我々の目に見えたものをできる限り反映した。

荒木: 今回の改訂に当たって3人で何度もディスカッションした。「今、我々が実務家として伝えるべきコンセプトは何だ?」というところを卓上に全部並べて、取捨選択し、ストーリーで味付けし、再構成するということをゼロベースで繰り返した。この本は、教科書でありながら、同時に実践性を強く意識して作ったという点を強調したい。

司会: パートごとに、具体的な学びポイントを伺いたい。

嶋田: 第1部で特に力を入れたのは、3章の「学びながら会社を進化させていく、戦略を進化させていく」という視点を盛り込んだことだ。フレームワークの単なる解説ではないので、楽しみながら読んでいただきたい。

荒木: 第2部のキーワードは「実践性」だ。フレームワークを知っていても本当に使いこなせている人は少ない。「どこでつまづきやすいか」という実務視点を貫いて解説した。また、ビジネスパーソンにとってのフレームワークを、料理人にとっての“包丁”にたとえると、本書ではできる限り多くの包丁を並べて紹介している。まずはどんな包丁があるのかを理解した上で、「自分に合った切れる包丁」、つまり今の自分にとって使えるフレームワークやアプローチを選んで使いこなしてほしい。ただし、時代の流れとともに包丁の切れ味が変わることもある。そんな時は、また本書に立ち返り、使える包丁のレパートリーを広げることに挑戦してほしい。

山口: 「経営戦略など不要だ」と言う人がいる。論拠の1つに「環境変化が激しすぎるので想定通りにうまくいかない」というものがある。それはその通り。だから、トライアンドエラーで作り直していくことが必要だ。不確実性の高い中でどのように戦略を作り修正していくのかを7章で紹介している。戦略の賞味期限が短くなっていることへの対処法については9章に書き込んだ。

司会: こんな人たちに、こんなふうに読んでもらいたいという読者ペルソナと、メッセージを聞きたい。

嶋田: 30代後半ぐらい、これから会社を背負っていく立場の人たちをイメージしている。今の時代、「止まる」ということは「退化」を意味する。常に学び、徹底的に考え、徹底的にやり抜き、そこからまた学ぶ――というサイクルをどれだけスピーディーにぐるぐる回せるかが勝負。本書の中にヒントがある。要所要所で開いて活用してほしい。

荒木: 現場の実務に苦しんでいる、悩んでいるミドルマネジャーの姿が浮かんでくる。実務で悩んだ時に、この本を手にとって、どんなアプローチをすればいいのか、考えるきっかけにしてほしい。また、当然ながら本で読むだけでは限界がある。そういう限界を感じたら、ぜひグロービスに来て学んでほしい。
 
山口:
 本書の間口は非常に広い。経営戦略を実務にしている人も、「経営戦略のこと、ちょっと興味があるな」という初心者も、それぞれに発見があるはずだ。なるべく、多くの方に読んでもらいたい。

司会: 経営戦略の新たな必読書になりそうだ。ありがとうございました。


『[新版]グロービスMBA経営戦略』
グロービス経営大学院(著、編集)
ダイヤモンド社
2800円(税込み3024円)
 

慶應義塾大学法学部卒業、スイスIMD BOTコース修了。住友商事株式会社を経て、グロービスに加わり、法人向けコンサルティング業務に従事。
現在は、グロービス経営大学院にてオンラインMBA、特設キャンパスのマネジメントを行うとともに、グロービス経営大学院及び企業研修における戦略系、および思考系科目の教鞭を執る。
著書に「ストーリーで学ぶ戦略思考入門――仕事にすぐ活かせる10のフレームワーク」、「グロービス流ビジネス基礎力10」、「グロービス流ビジネス勉強力」、「グロービス流リーダー基礎力10」がある。知見録にて、「できる人の思考術」連載中。

東京大学理学部卒、同大学院理学系研究科修士課程修了。戦略系コンサルティングファーム、外資系メーカーを経てグロービスに入社。累計150万部を超えるベストセラー「グロービスMBAシリーズ」の著者、プロデューサーも務める。著書に『グロービスMBAビジネス・ライティング』『グロービスMBAキーワード 図解 基本ビジネス思考法45』『グロービスMBAキーワード 図解 基本フレームワーク50』『ビジネス仮説力の磨き方』(以上ダイヤモンド社)、『MBA 100の基本』(東洋経済新報社)、『[実況]ロジカルシンキング教室』『[実況』アカウンティング教室』『競争優位としての経営理念』(以上PHP研究所)、『ロジカルシンキングの落とし穴』『バイアス』『KSFとは』(以上グロービス電子出版)、共著書に『グロービスMBAマネジメント・ブック』『グロービスMBAマネジメント・ブックⅡ』『MBA定量分析と意思決定』『グロービスMBAビジネスプラン』『ストーリーで学ぶマーケティング戦略の基本』(以上ダイヤモンド社)など。その他にも多数の単著、共著書、共訳書がある。
グロービス経営大学院や企業研修において経営戦略、マーケティング、事業革新、管理会計、自社課題(アクションラーニング)などの講師を務める。グロービスのナレッジライブラリ「GLOBIS知見録」に定期的にコラムを連載するとともに、さまざまなテーマで講演なども行っている。

東京大学経済学部卒業、ロンドン・ビジネススクール経営学修士(MBA、Dean's List表彰)。
東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)、ボストンコンサルティンググループ等を経てグロービスへ。7年間に渡ってマネジング・ディレクターとして同社の経営に参画した後、2014年に独立。
現在は企業のイノベーション・パートナーEXABIOの代表として、主にサービス、流通、金融、メディア、エネルギー、消費財といった業界のクライアントに対し、成長戦略立案や新規事業開発、営業・マーケティング強化などを支援。加えて、大手企業グループやベンチャー企業、自治体のアドバイザーを務めながら、自らエンジェル投資家として多数のスタートアップ育成に取り組んでいる。
主著に『法人営業 利益の法則』(ダイヤモンド社)、『サービスを制するものはビジネスを制する』(東洋経済新報社)、共著・共訳に『日本の営業2011』、『MBAマネジメント・ブックⅡ』(以上はダイヤモンド社)、『MITスローン・スクール 戦略論』(東洋経済新報社)などがある。

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