やはり影響力は想像以上? ちらりと“牙”を見せたプーチン首相 

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5月に首相に就任して以来、2カ月半の間、何となく鳴りを潜めていたように見えるロシアのプーチン前大統領。後任のメドベージェフ大統領は、プーチン路線を継承しながらも、前任者よりはリベラルな立場を強調していたこともあり、世界各国もひょっとしたらロシアはこれで民主主義国へ戻るかもしれないと思ったかもしれない。

しかしプーチン首相の牙は健在だったようだ。7月24日、プーチン首相は、ニージニーノブゴロドで開かれた金属産業界の会議の席上、「メチェルという会社は、海外には原料コークスを安く売って、政府に納めるべき税金を逃れている」という主旨の発言をした。

メチェルは鉱山と金属の大手で、ニューヨーク証券取引所にも上場している。これを受けてメチェルの株価は急落。約150億ドルの時価総額のうち瞬く間に50億ドルを失ったという。翌日にはロシア株式市場にも波及し、株価全体も5%程度下落した。

ロシアの問題を浮き彫りにした今回の「事件」

大企業に関して首相が税金逃れを指摘するというのもやや異常だが、その発言に反応して株式市場が大幅に下落するのも、ロシアならではの話である。投資家の脳裏をよぎったのは石油大手ユーコスのケースだった。ユーコスは税金問題で当局の追及を受け、結局は、政府系のロスノフチがユーコスの業務を譲り受けている。つまり天然ガスと同じように、石油に関しても国営石油会社による独占的体制にしてしまったのだ。

今のところ専門家は、「メチェルを国営化することはない」と予想している。海外法人に安く原料コークス(石炭を蒸し焼きにして得られる固体燃料)を卸し、それを海外で高く売って、利益を海外にプールしているように見えるやり方を改めること、そして1億ドル相当(約107億円)の罰金を支払えば済むだろうと見ている。

たしかにメチェルについて国有化しようという意思はメドベージェフ政権にはないのかもしれない。それでも今回の「事件」は、ロシアにはいくつかの問題があることを如実に示したということができるだろう。

1つは、プーチン首相の発言がそれだけの影響力を持つということである。7月24日の発言について、メドベージェフ大統領やその側近たちは何も知らされていなかったという。そしてプーチン発言は、ロシアの株式市場を混乱に陥れた。

さらにプーチン首相がロシアに対する外国資本の投資環境を整えることに何の興味もないことが明らかになった。英エコノミスト誌は、石油会社BPに対するロシアのひどい扱い方と絡めてこう書いた。

「BPとロシアの合弁会社であるTNK-BPのCEO、ロバート・ダドリー氏は、ロシアを離れた。ビザの期限が切れ、ロシア側の株主がダドリー氏の辞任を望んだからである。この問題にロシア政府が介入したわけではないが、同時にBPの投資権益を保護する動きもまったくなかった」

ロシアにとって外資が必要だという切実感は薄い。それは原油が高くなって、ロシアの外貨準備も増えているからである。しかし状況は確実に悪くなっている。

貿易収支が悪化しているロシア

経済成長率は鈍化しつつあり、かつインフレ率はふたケタに達している。そして収益源である石油の産出量は減っている。一方で、ロシアの輸入は急カーブを描いて増えているため、貿易収支も悪化している。まだ経常収支では黒字を保っているが、もし原油市況がさらに落ちればその黒字も急激に減少することは間違いない。

英エコノミスト誌は記事をこう締めくくっている。「ロシアの投資環境を心配しなければいけないのは外国の投資家だけではない。ロシア人自身も心配しなければならないのである」
プーチン首相は、果たしてこういった意見に耳を貸すのだろうか。
(写真:USDepartmentofDefense)

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