AIが牛耳る世界で人間に残された「やるべきこと」とは?―DMM亀山氏、ヤフー宮澤氏、GCP高宮氏による大放談(3) 

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最終回となる今回は、DMM会長亀山氏と、ベンチャー・キャピタリスト高宮氏が、一連の”大放言”の責任をとるべく(!?)会場からの様々なツッコミに答えます(最終回/全3回)

ネットの次の手は何か? ~異才たちの大放談~講演録[3]

牧野正幸氏(以下、敬称略): 実際、アマゾンなんかは今もどんどん先に進んでる。だから「日本はこんなんでいいの? 負けてていいの? またここも負けちゃうの?」と。そこで、まずは高宮さんのほうから「負けねえぞ」っていうお話を聞きたい。以前、「シリコンバレーにもぜんぜん負けない」なんてお話ししているのを何かのインタビューで読んだけれども。

高宮慎一氏(以下、敬称略): そうですね。C向けで効率化が進むと、コモディティを安く大量に売っていくという部分ではアマゾンみたいなグローバルNo.1がぜんぶ取っちゃうような世界になると思います。ただ、一方で裏側にあるサプライチェーン側の変化を考えてみると、すべてオンデマンド化するというのがあります。たとえば今はクラウドサーバーがオンデマンド化して、AWSでサーバーをすべて変動費化できるようになりました。だから大学生がちょっとアプリをつくって100万ユーザーを獲得できるなんていう世界になってきています。これ、物理的なロジスティックやサプライチェーンの世界でも同じことが起こりつつあるのかなと思っています。

「アマゾン化」により、流動化と効率化とマッチングが限りなく進んでいく

たとえばUberが配車のシステムを応用してデリバリーのサービスをはじめたのは、オンデマンド化したものを違う領域に応用しているっていう話になります。アメリカでは先週も、アマゾンが提供してるような倉庫のロジと物流を変動費化して小さいところに提供するというビジネスをはじめたベンチャーがメディアに出ていました。そうなると参入障壁もどんどん下がって、ニッチなサービスがやりやすくなっていきます。それによって、コモディティ品じゃない付加価値のあるものや、モノ売りじゃない「経験売り」や「サービス売り」みたいなものが残るようになっていくんだと思います。そんな風に、どんどん個別のニーズに最適化したうえでハイタッチなものを売っていくという方法はあると思います。C向けのサービスに関しては、日本の特徴としてオタクな面があるというか、それぞれニッチなところに分散化している傾向がある。そういう爛熟した文化のなかで、個別の小さなコミュニティに提供されるようなサービスは多いと思います。亀山さんのところのインターネット事業で新しく社長になった片桐孝憲さんの「Pixiv(ピクシブ)」はその象徴じゃないですかね。

亀山敬司氏(以下、敬称略): そうだね。その意味で言うと、「そういうのは若いやつらにしかつくれない」っていうのが俺の考え方。はっきり言って、もう40~50代がインターネットをやっててもダメなのよ。今の段階でほとんど負けてる。俺たちはアマゾンのプラットフォームでモノを売りながら、アマゾンと戦いわないような形を模索しているわけ。つまりアマゾンやアップルとの真っ向勝負を避けて仕事をしてる。

だから今の日本は完全に負けてる。むしろ中国のほうが頭がいい。アメリカのサービスを遮断して国内の会社を育ててから、今ごろになって自由貿易って言ってるわけよ。そんな風にして育つまで鎖国してから自由にやっていくなら、まだ土俵に上がることもできた。でも、今の日本だと「クラウドはアマゾンと、検索はグーグルと」なんていう感じで組むしかない。アップルに3割ハネられながら「パズドラ」売るぐらいしかないわけよ。根本で負けてるから、今もほとんどの議論が「アマゾンのプラットフォームでこうやって稼ぎます」「グーグルでこうやって検索順位を上げます」なんて話ばっかりになる。でも、それをやってるうちは日本発のサービスが世界に誇れるようなものになるのも難しいと思う。

牧野: さっきお話をしてたアフリカにも各国は参入してきてるわけですよね。

亀山:アフリカは中国がいくらか入ってるぐらい。まだ無風状態のところがある。アマゾンもまだ出てないし。今どういう感じかっていうと、ざっくり言えば銀行は少ないわインフラは整ってないわ、インターネットもそれほど普及していない。だからタイムマシンみたいな話じゃないけど、日本の技術を持っていけばいくらでもやりようはあると思う。たとえば今は銀行口座が少ないから、「マネーもクレジットカードというよりSuicaみたいなものに預金して使うほうがいい」とか、「物流もヤマト運輸や佐川急便みたいな会社がないから、Uberみたいに一般の人たちを使って配送する」とか、とにかく今から独自の進化を遂げようとしてるから、そこに日本の知恵を持っていけば、アフリカではまだまだやれるかなって、俺は思う。

牧野: じゃあ、ここから質疑応答に入りたい。

データドリブンの世界での事業はどうなりそうか

会場: 「データドリブン」ということについて。たしかにプラットフォームレイヤーではスマホがまだ強く、そこはいわゆる「ビッグ5」が抑えてると思う。ただ、本当に重要なのは“その下”で起きてることですよね。ビッグデータが埋蔵されていった20年を経て、今はそれを利活用する技術としてディープラーニングが生まれ、それが進化してAIになろうとしている。そちらの変化のほうがはるかに大きなインパクトを伴ってる。なので、それについて「構造的にこう考えてる」とか、直感でもいいけれど、「そこでこういう事業をしたい」というお話を伺いたい。

高宮: そこが結構悩ましい。今はあちこちで「AIだ」と言われているけれど、AI事業っていうものはないと僕は考えています。AIを使ったメディア事業やファッション事業はある-つまりAIはあくまでもツールです。最終的には「Intel Inside®」みたいに「AI Inside」になってどこにでも入るわけで、AI自体はコモディティになると思います。だから最終的にはそこでデータの油田を握った人が勝つんだと思います。ただ、そう考えると今データを持っている巨人がさらに多くのデータを持って強くなっちゃう構造かもしれません。そこでベンチャー側にデータが貯まる構造をどうつくっていくかという部分で、かなり悩んでいます。今はそれを打破する打ち手は個人的にも見えていないし、日本がそこでどう戦うのかというのも大きな課題になると思います。

「レガシー(古き遺産)」を新しいテクノロジーで活用していくことの可能性は?

会場: 工業化時代に山ほどつくっちゃったもので今は使われてない資産を活用するというサービスも、今後は増えると思う。UberやAirbnbだけではなくて、そこら辺にある電線でも、この部屋でも、データを使ってユーティリゼーションを高めていくということが、恐らくは先に巨大な価値を生みますよね。そういうところに行こうという話は出てくるんですか?

高宮: その通りで、そこは世の中のキャパシティの最適化とか、固定資産の変動費化といったお話だと思います。ただ、それは短期的に立ち上がりやすい一方、それをGDPのようなマクロ視点で見たとき、ボリュームが増えるかというと、実はシュリンクという話があります。あと、最後はコスト競争になっちゃって結構つらい。Uberも大変なボリュームの資金調達を行って、今は壮大なチキンレース的戦い方をしているわけです。でも、今はサンフランシスコでさえ競争が激しくなっていて、一旦黒が出たのにまた赤になったり、インドでも競合同士がドライバーに対する逆ざやで争って、“超”赤字になっていたりします。だからビジネスモデルとしては結構しんどいと思います。そう考えるとサプライサイドを変動費化することに使う一方で、最後はやっぱり全体を統合したプレイヤーが勝つように思います。

亀山: 少し違う話になるけど、今はたとえばタクシー会社が「Uberみたいな形の会社にしよう」とか考えて、和洋折衷みたいにしていく動きもある。組織として雇用を抱えてるわけだし、その雇用を守るために「いろいろと混ぜてみよう」って考えてるんだろうと思う。でも、それってかなり「水と油」で、合わない部分が大きい。たとえば既存の営業部門長の下にIT人材をいくら入れても、いつになってもITの会社にはならないと思う。

だから、それならまったく別の組織にするほうがいい。タクシー会社ならUberみたいな別会社を立ち上げたりして。で、そのあと新しい会社が伸びて既存のタクシー会社が落ちていったら、そこで雇用をいくらか引き受けるとか。そういう考え方のほうがうまくいくと思う。もともとの組織や設備を利用しようと思っても、どうしても企業文化に無理が出て来ちゃう気がするかな。

データ、AI、機械が牛耳る世界で、人間に残された「やるべきこと」とは?

会場: IoTについて。先ほどのお話だと「ヒューマンtoデバイスの部分で少し時間がかかるかもね」というお話が支配的だったし、それはその通りだと思う。ただ、IoTの本質はマシーンtoマシーン。マシーン同士のつながりによって取得できるデータが莫大になる。それは今までのインターネットにあまりなかった状態で、どちらかというとそこに本質的な価値があるんだと思う。その辺についても、構造的または直感的に「自分ならそのなかでこういう事業をやりたい」といったお話があれば。亀山さんからは「人が疎外されるかもね」といった話があったけれども。

亀山:合理性を求めるなら、AIが大量のデータで動かしたほうが効率的だし、当然、人は仕事から疎外される方向になると思う。ただ、そこで「人は何をすればいいんだ?」って話になったとき、今度は「お金を払ってでも仕事がしたいです」となるかもしれない。やることがなくなると、今度は揺り返しが来るんだと思う。合理性を求めず非合理なことをやりたいと考えるようになって、「何かやりたいね」って言い出す。

たぶんその頃はベーシックインカムでいくらかの収入をもらって、失業中でもある程度の収入を得ている状態かもしれない。だからその人たち向きに、「農業やりましょう」なんていうことをサービスとして提供していくとか。そういうのはビジネスとしてありかなと思う。結局、社会が合理化される一方、「非合理なものを求めるのも人なのかな」って。まあ、俺はインターネットの人間っていうわけでもないし、そっちに行ってもいいのかなって思う。「みんなで『DMMドット老人』で楽しみましょう!」みたいな(会場笑)。「年寄り同士でワイワイやろうぜ」なんていう感じもありかな、と。

牧野:  ということで、以上です。どうもお疲れさまでした(会場拍手)。

 

※この記事は、2017年3月19日に北海道ルスツリゾートで開催されたG1サミット2017のセミナー「ネットの次の一手は何か?~異才たちの大放談~ 」を元に編集しました

19歳で露天商に師事し、様々な地域でアクセサリー販売を手掛ける。その後、24歳の時に家族が経営する飲食店を手伝って欲しいと請われ石川に帰郷。雀荘やバーなどの経営を経て、1980年代後半レンタルビデオ店を開業。その後、卸売を通さないDVDの販売ルートの確保や、販売時点情報管理(POS)の開発/無料配布により事業を拡大。インターネット黎明期であった1998年には他社に先駆けてネット配信事業(現DMM.com)を開始し、動画配信、通販、レンタル、オンラインゲーム、英会話、FX、ソーラーパネル、3Dプリンターと多岐にわたり事業を手がけ現在に至る。

グロービス・キャピタル・パートナーズでコンシューマ・インターネットの投資を担当。戦略コンサルティング会社アーサー・D・リトルに て、プロジェクト・リーダーとしてITサービス企業に対する事業戦略、新規事業戦略、イノベーション戦略立案を主導。東京大学経済学部卒(卒論特選論文受賞)、ハーバード大学経営大学院MBA(二年次優秀賞)。

1982年生まれ、2004年東京大学卒業直後に株式会社シリウステクノロジーズを創業、代表取締役に就任。2010年8月、ヤフーにより買収後はYDN(インタレストマッチプロジェクト)のプロジェクトリーダー、2014年4月より執行役員(最年少)、検索サービスカンパニー長に就任。2015年4月より検索に加え、トップページやニュースなどを含めたサービスを管掌するメディアカンパニー長就任を経て、2016年4月より現職。北海道札幌市出身。

モデレーター

1963年、神戸市生まれ。大手建設会社、ITコンサルタントを経て、1996年に同社を設立。業界の常識を覆すイノベーションを起こし続け、日本初の大手企業向けERPパッケージソフト「COMPANY」は、市場シェアNo.1として不動の地位を築く。イノベーションの源泉となる“優秀な人材”=「クリティカルワーカー」に着目し、新卒向けの「問題解決能力発掘インターンシップ」など、画期的な採用プログラムを展開。また、独自の人事施策により、個人の成長を最大化する働き方を可能にするなど、「働きがいのある会社ランキング」( GreatPlace to Work Institute)では6年連続ベスト4入りを果たしている。著書に『「働きがい」なんて求めるな。』(日経BP社)等

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