ネットの次の手は何か?―DMM亀山氏、ヤフー宮澤氏、GCP高宮氏による大放談(1) 

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知る人ぞ知るインターネット界の巨大コングロマリット、DMM会長亀山氏と、インターネット界の「王者」ヤフーの上級執行役員宮澤氏、そしてグロービス・キャピタル・パートナーズのベンチャー・キャピタリスト高宮氏が、「ネットの次の手は何か?」について語ったセミナーの模様をお届します。(全3回)

ネットの次の手は何か?~異才たちの大放談~講演録[1]

牧野正幸氏(以下、敬称略): このセッションはインターネットがテーマということだけど、会場の85%ぐらいは亀山さんの顔を見に来たんじゃないかと思う。で、その目的は果たされてるから、もう帰ってもらって構わない(会場笑)。とは言いつつ、今日はいろいろ突っ込んで話を聞いてみたい。ただ、好き勝手に話をしていてもなんだかまとまりがなくなるから、まずは「直近だと、こんなことをやろうかと思っている」というところから聞いていこう。身近なところで、何かネットに関して「次の一手」として考えていることや、すでにはじめているもので面白い話があれば。じゃあ、宮澤さんから。

宮澤弦氏(以下、敬称略): 直近だとスマホの延長。回線の容量もどんどん増えていくし、しばらくはスマホの時代が続くと思う。特にヤフーは動画関連、例えばライブ中継やトップページの動画化といったことに力を入れていきたい。今後はワイドショー的なニーズ等もスマホに置き換えられていくと思うし、ヤフーとしてもやっていきたい。

牧野: ヤフーは王者じゃないですか、ベンチャーの一歩先を行くようなものはないの?

宮澤: あ、そこは多々反省するところがございまして(会場笑)。今はもう完全に「イノベーションのジレンマ」との戦いになってる。

牧野: なるほど(笑)。じゃあ、次は皆さんが声を聞きたがってる亀山さん。

亀山敬司氏(以下、敬称略): どうも〜亀山です(笑)。 直近だと日本のアニメーションに投資をしたり、アフリカで事業をはじめたりしている。ルワンダとかでSuicaみたいな電子マネーのビジネスをね。あと、来月4月からはじまる「DMMアカデミー」。22歳までの限定で高卒の人たちを採用して、仕込んでいくっていう学校みたいなこともはじめる。「今のうちに育てておけばとあとあと役に立つかな」という感じで(笑)。5~10年先を目指して面白いことをやらせとこうかな、と。あとはVRにもちょこちょこ手を出してます。あ、水族館もやるね。

ネットの世界で名を馳せるDMMが、いま力を入れているのは水族館 !?

牧野: 水族館?

亀山: いま企画している。3年後ぐらいかな。

牧野: それ、ネットは関係ないですよね?

 亀山: でもね、クジラだけVRでクラゲは本物とか、テキトーに(笑)。金がかかるところはVRで済ます、みたいな(会場笑)。いろいろまぜこぜにして。

牧野: 物理的に水族館をつくるの?

亀山: そう。ネットばっかりやってても人間ダメになるかなと(笑)。「やっぱり建物も立ててリアルもやらないといけない」って。節操がない会社の方向性ということで(笑)。

牧野: なるほど。ということで、まずは御二方にそれぞれ、インターネットのトップ企業として話してもらいましたが、逆に、本来VCが先行してやらなきゃいけないことがすべて亀山さんにやられちゃってるとも言える。その辺も含めて、高宮さんはどんな一手を考えてます?

ネット業界に詳しいベンチャーキャピタリストの、「次」の見立ては

高宮慎一氏(以下、敬称略): 亀山さんのあとでメチャクチャ話しづらいんですけど(会場笑)、実はDMMというのは知る人ぞ知るインターネットの巨大コングロマリット。事業の半分以上がインターネット関連ですよね。だからヤフーもうかうかしてられない。一方で、我々VCはというと、のっけから「直近」というお題と矛盾しちゃうんですが、やっぱり5~10年後を見て投資をしています。そう考えると大きなテーマがいくつか出てきます。一番近いところではポスト・デバイスとポスト・ソーシャルのシフト。ここ3~5年はガラケーからスマホへのシフトという分かりやすい変化が起きていたのですが、ここはデバイスが変わってもユーザーの根本的ニーズが変わるわけじゃありません。だからガラケーのゲームやeコマース、あるいはiモードのコミュニケーションといったものが、すべてスマホというデバイスに最適化されていきました。

ただ、最近はゲームやコマースといった大きな領域がかなり埋まってきちゃって、「残っているのはどこだ?」ということになり、いかに狭いところでもマネタイズするかといった話になってきました。それで比較的“濃い”コミュニティで厚く課金する方向に向かっていました。たとえば最近は「SHOWROOM(ショールーム)」という、AKB48の事業モデルをネット化したような面白いサービスがあります。投票券付きCD販売のようなことをネットでやっていて、クラスのアイドルみたいな普通の女の子がオンライン動画に出演しています。で、その女の子にLIKEのような評価を付けると彼女の順位があがる一方、投票したファンの順位も上がります。そうするとバーチャル空間のなかでファンがアイドルの最前列に近づいていって、彼女たちと会話ができたりします。そういうマニアックで濃い、偏愛が強い領域でサービスが立ちあがってきました。

それともう1つがポスト・ソーシャル。最近は皆、「フェイスブック疲れ」「インスタグラム疲れ」のようなことになってきた。フェイスブックのようにオープンな空間で、今は皆が皆に対してイケてる自分をさらけ出して“ドヤる”ような感じになっちゃっています。それでいちいち肩に力が入ってしまって若い人たちは疲れている、と。

だから、逆に最近は投稿内容がすぐに消える環境やクローズドな内輪でコミュニケーションを取るような動きになってきました。そういうなかで最近上場した、いま最も若者にウケていると言われるサービスがUSのスナップチャットです。僕らのようなおじさんの感覚からすると分からないんですが、自分で設定した1~10秒のあいだに送った写真が消えるという謎のコミュニケーションサービス(会場笑)。でも、それに月間7億人のユーザーが付いて、およそ2.5兆円の時価総額で上場しています。とにかく今はそんな風に「ぶり返し」が起きています。これまで常にオープンで民主的なほうに振れていたインターネットに揺り戻しがおきていると感じます。

亀山: さっきまで控室で「今日の主役は亀山さんですよ」とか言ってたくせに、もう俺の3倍ぐらいしゃべってるよね(会場笑)。

宮澤: 「今日は亀山さんの話を聞こう」って言ってたんですけど、高宮さんのご講義を聞くことになるとは(笑)。

高宮: パンチの効いた面白いことが言えないから量でなんとかしよう、と。

亀山: 裏切り者め(笑)。

「思い出」がすべて詳細に記録され、「人格」が再現される世界が実現する !?

牧野: 事業をしているお二人はどうだろう。5~10年後にどんなトレンドを描いているのかも聞いてみたい。あるいは「次はこういうことをやってみたらどうかな」なんて考えていることがあれば。夢でもいいですけど。

亀山: 今度は長めに喋ろうかな(会場笑)。じつは最近、そういうことを考えなくなってる。今やってる新しい事業はだいたい、若いやつが持ってきたものに「まあ、いいんじゃない?」って、分かんないままOKを出してるパターンが多い。だから昨夜は久しぶりに頑張って考えました。「未来がどうなるのか?」ってのを。

たとえばアマゾンは物流センターが自前だったんだけど、今後は運搬網をさらに押さえようと考えてドローンを飛ばしたり、コンビニの世界も獲っちゃおうっていうことで無人化させようとしたりしてる。だからこれからはあっちこっちがロボットになっていく。そうなってくると、「俺たち、やることなくなるな」みたいな。

自動運転車だって同じ。今は自分の車のカメラが映像を撮ってぶつからないようにしてるけど、たぶんすべての車のデータがクラウドに集まって、そこにドローンのデータも街中の監視カメラ映像も入ってきて、ぜんぶがつながっていく。そうなると電車みたいに、もう車と車がぶつからない世界になってくる。

そういう世界のなかで、どっちかっていうと人間のほうがバグを起こす。操作を誤ったり具合が悪くなったりして、事故を起こす存在になる。人間のほうが社会の合理化を妨げる状態に陥る。それでモノのほうが主導権を握るような状態になると、1つの生命体みたいにね。車同士も何もかも全てがくっついたような世界の中で、「そこに人間がどう入り込んでいくのか?」なんていう、少し怖いイメージになる。

さらに想像してみると、次は(目元を指して)この辺にカメラを付けて、自分が見てきた映像記録までクラウドに溜まるような世界になっていく。じゃあ、その先はどうなってくのか?たとえば、「何年何月何日何時何分、自分が10歳のときって何を見てたっけ?」なんてことも分かるようになる。本来、人の記憶ってすごくおぼろげなわけ。自分の主観も入ってるから、当時付き合ってたのが「すごく可愛い子だ」ってことで良い思い出になってたりする。でも、検索して当時の映像を再生してみると「意外とたいしたことない」ってことになるわけよ(会場笑)。

そういう世界になると人間の人格はどうなるのか?そもそも人格っていうのは過去の記憶からつくられていく部分があると思うんだけど、それが振り返ってみると、自分の見たものがそのまま映像になっていたりする。そんな主観のない映像を観れることが人格を変えるかもしれない。

そして、たとえば俺のそういう過去映像を他の誰かが見続けたとしたら、それが彼らの記憶にもなっちゃったりして。あるいはそれをAIに見せると、そういう人格のAIが出来上がっちゃう。まあ、なんというか、そういうまとまりのない話でした(笑)。

 牧野: 僕も亀山さんと歳が近いからよく分かる。最近は何か思い出そうとするなら、記憶を辿ったりグーグル検索したりするより、チャットやSNSで自分が発信したもののなかから検索したりする。そのほうが正確に情報を集めることができるし、記憶も甦るから。そういう使い方をよくしているし、今のお話、面白いと思いました。宮澤さんのほうはどうだろう。何か「ネットの王」らしいお話があれば。

スマートフォンの究極の形は、大きめのiPhoneの二つ折り !?

宮澤: さっき控室で亀山さんと話していたんだけれども、スマホが出てきて今年で10年になる。iPhoneが出たのは2007年で、ガラケーが出てきたのは1999年。ガラケーのプロダクト・ライフサイクルが10年ぐらいで、そのあとスマホが出てきた。そう考えると「今年あたりは節目の年だね」なんて。ただ、スマホはオープンなOSを積んでいたりするし、進化はまだ続きそう。下手したら15~20年のライフサイクルかもしれない。

「じゃあ、その次はどうなるかね」という話もしたんだけれども、文字入力を前提としたスマホのようなデバイスに代わって、音声入力を中心としたデバイスが新たに出てくると思う。しかも、「Amazon Echo」みたいな家に1台というものじゃなくて、肌身離さず持っているようなデバイス。ただ、「それってアップルウォッチじゃん」となる。ただ、「やっぱり出力側のディスプレイが大きいほうが良いよね」なんて話になっていた。

だから入力はどんどん簡素にしていきたいけど出力のほうは、人間の目で見る以上は、ある程度大きいほうがいい。それで、「じゃあiPhoneが2つ折りになるべきなんじゃない?」という結論になった(笑)。「大き目のiPhoneが2つ折りになったら最高だね」って。

亀山: 「Google Glass」も結局うまくいかなかったもんね。

牧野: それ、ネットのトップ2人がする話じゃないじゃん。俺でも思いつく。

宮澤: そう(笑)。でも、「ジョブズが今も存命だったら、たぶん2つ折りのiPhoneをつくってたよね」みたいな話で盛りあがってました。

亀山: 実際、パカっと開けたらスマホのサイズになるっていうのが一番現実的さ。それは可能だと思うんだよね。開いたら1枚のディスプレイに見えるっていうのは。今のような折りたたみじゃなくて、上も下も画面。これ、うまく実現したら俺の手柄だからね(笑)。

宮澤: そうですね(笑)。折りたたみの真ん中の線をどう消すかが大事という。まあ、いずれにしても今は文字入力を前提としたサービスが中心で、それが音声入力中心になったとき、インターネットのサービス全体がどう変わっていくか。

牧野: 実際、「Amazon Echo」を使ってたら検索広告が成り立たないもんね。 ということで、高宮さん。今の2人の話を総括…、できないけどしてみてください。ポスト・デバイスやポスト・ソーシャルというのは、具体的にはどうだろう。今見ているモデルのなかで、「5~10年後はこのあたりがイケてるんじゃないか」といったお話があれば。

今後5~10年のビッグ・イシューは、マン・マシン・インターフェース

高宮: 先ほどお話ししたのは割と直近のトピックで、すでに見えている投資テーマという感じでした。一方で今のマン・マシン・インターフェースが変わるという話は、本当に今後5~10年のネクスト・ビッグ・シングだと思います。お二人がおっしゃる通り、今は入力方法がテクノロジーに追いついていません。人間側がボトルネックになっているわけで、絶対に何かしら新しいインターフェースが出てくると思います。僕も個人的には音声が来ると考えています。

たとえばインプットに関して言うと、現在のキーボードというのは、もともとはタイプライターから来ていて、あれがなぜQWERTY配列かというと、実は昔の技術ではタイプライターのアームがあまり速く動き過ぎると文字が重なってしまっていたから、意図的にスピードが出ないようにしたという話があります。人がそれに慣れてしまったから今はそれが最適であるように思い込んでる、なんていう話があります。

同じような話はアウトプットにもあると思います。スマホで言うと「ポケットに入ってるデバイスを取り出して見る」という行為をゼロベースでよく考えてみると、めちゃくちゃ面倒じゃないですか? それなら、たとえばコンタクトレンズにデバイスを内蔵して空間すべてがディスプレイになるような形を考えたら、狭いというボトルネックも解消します。そういうものが来るんじゃないかと思います。

 

※この記事は、2017年3月19日に北海道ルスツリゾートで開催されたG1サミット2017のセミナー「ネットの次の一手は何か?~異才たちの大放談~ 」を元に編集しました

※第2話は4/21、第3話は4/22に掲載予定です

19歳で露天商に師事し、様々な地域でアクセサリー販売を手掛ける。その後、24歳の時に家族が経営する飲食店を手伝って欲しいと請われ石川に帰郷。雀荘やバーなどの経営を経て、1980年代後半レンタルビデオ店を開業。その後、卸売を通さないDVDの販売ルートの確保や、販売時点情報管理(POS)の開発/無料配布により事業を拡大。インターネット黎明期であった1998年には他社に先駆けてネット配信事業(現DMM.com)を開始し、動画配信、通販、レンタル、オンラインゲーム、英会話、FX、ソーラーパネル、3Dプリンターと多岐にわたり事業を手がけ現在に至る。

グロービス・キャピタル・パートナーズでコンシューマ・インターネットの投資を担当。戦略コンサルティング会社アーサー・D・リトルに て、プロジェクト・リーダーとしてITサービス企業に対する事業戦略、新規事業戦略、イノベーション戦略立案を主導。東京大学経済学部卒(卒論特選論文受賞)、ハーバード大学経営大学院MBA(二年次優秀賞)。

1982年生まれ、2004年東京大学卒業直後に株式会社シリウステクノロジーズを創業、代表取締役に就任。2010年8月、ヤフーにより買収後はYDN(インタレストマッチプロジェクト)のプロジェクトリーダー、2014年4月より執行役員(最年少)、検索サービスカンパニー長に就任。2015年4月より検索に加え、トップページやニュースなどを含めたサービスを管掌するメディアカンパニー長就任を経て、2016年4月より現職。北海道札幌市出身。

モデレーター

1963年、神戸市生まれ。大手建設会社、ITコンサルタントを経て、1996年に同社を設立。業界の常識を覆すイノベーションを起こし続け、日本初の大手企業向けERPパッケージソフト「COMPANY」は、市場シェアNo.1として不動の地位を築く。イノベーションの源泉となる“優秀な人材”=「クリティカルワーカー」に着目し、新卒向けの「問題解決能力発掘インターンシップ」など、画期的な採用プログラムを展開。また、独自の人事施策により、個人の成長を最大化する働き方を可能にするなど、「働きがいのある会社ランキング」( GreatPlace to Work Institute)では6年連続ベスト4入りを果たしている。著書に『「働きがい」なんて求めるな。』(日経BP社)等

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