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【日経コラム】自分の頭で正しく考える

投稿日:2017/03/29更新日:2019/04/09

「物事の本質をとらえるコツは何だと思う」。子どもたちにこう問いかけてみた。夕食時にテーマを決めて話をする堀家恒例の「学びトーク」が始まった。少し難しい質問なので、先人の知恵を紹介しながら説明することにした。

「陽明学者の安岡正篤氏によると、本質をとらえる方法論は3つある。1つ目が枝葉末節ではなく大枠を俯瞰(ふかん)すること、2つ目が一面的でなく多面的にみること、3つ目が短期的ではなく長期的にみることだよ」

次に違う質問をしてみた。「近代科学の父と言われるデカルトが『我思う、ゆえに我あり』と言ったけど、これはどういう意味だと思う」。子どもたちにいくつか答えを出させたうえで、説明し始めた。

「デカルトが疑い続けて到達した結論は、『自分が考えている。だから自らは存在する』ということなんだよ。デカルトは、その考えている自分を立脚点にして、自分が確認した事実と、真理と認めた法則性からのみ論理展開をすることに決めたんだよ。生物が神の創造物とみなしていた宗教的思想や天動説が支配する時代に、デカルトが合理的な考え方を推し進めて学問の基礎を築くことができたのはこのためだよ」

こう話したところで、僕は中学校時代にスイミングクラブに所属していたころを思い出した。なぜだか知らないけど、個人所有のビート板に「常識をぶち破れ!」と書いていたのだ。プールでバタ足をする時に顔を上げると、その文字が目に飛び込んでくる。だからかもしれないが、疑う事が習慣化している。デカルトと同様に事実と認めたものと、真理と確認した法則性のみで自らの論理を展開するようにしている。

「では、そもそも考えるって、どうすればよいと思う」と抽象的な質問をぶつけてみた。考えることは重要だが、どう考えたらよいのかと問われるとなかなか説明しにくいものなのだ。

「実は考え方を学ぶことは可能なんだよ。ちょうど、正しい走り方を学ぶと速く走れるように、考える方法論を学ぶと論理的で適切な考え方ができるようになるものだよ。その考える手法は『クリティカルシンキング』という科目でグロービスでも教えているんだよ。(米国の有力コンサルティング会社の)マッキンゼー初の女性コンサルタントであるバーバラ・ミント氏が考え出した『ピラミッド・プリンシプル』という手法がその一つだよ」

「ピラミッドの頂点には、結論がある。その結論を複数の理由で支える。それぞれの理由はさらに複数の事実を根拠にしている。このようにピラミッド構造を基に論理展開すると、思考を整理しやすいんだよ」

事例があるとわかりやすいから、豊洲市場移転問題を例にとって説明することにした。「移転の可否の結論を導くために考えるべきポイントの1つ目は安全性、具体的には築地と豊洲の土壌汚染や建築物の安全性の比較だ。2つ目が経済性。築地の跡地利用による収益や豊洲の費用コストなどだ。3つ目は環状2号線を含めた都市計画があげられるよね」

「『豊洲の土壌汚染が問題だ』と言って短絡的に移転を延期するのではなく、築地の建築物の老朽化や土壌汚染との比較に加えて、経済性や都市計画などを総合的に考える必要があるんだよ。知事がどう言ったか、メディアがどう報道したかは関係なく、自らの頭で考えることが重要なんだよ」。子供たちは、具体的事例のおかげで、理解が進んでいるようだった。

「本質を見極めるには、俯瞰的、多面的、長期的に物事をとらえ、人の考えに流されずに常に疑い、事実をもとに正しい方法で自分の頭で考え続けることが重要なんだよ」

そして、次の言葉で学びトークを締めくくった。「パパは君たちに自らの頭で考えて行動する人間に育ってほしいと思っているよ」

※この記事は日経産業新聞で2017年3月24日に掲載されたものです。
日本経済新聞社の許諾の元、転載しています。

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