あなたの妻はなぜ衝動買いをするのか? 

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これ欲しい!――そんな刹那の感情に突き動かされる衝動買い。人はなぜ衝動買いをするのか? マーケティング・コンサルタントの郷好文氏が、衝動買いの心理を図解する(このコラムは、アイティメディア「Business Media 誠」に2008年7月17日に掲載された内容をGLOBIS.JPの読者向けに再掲載したものです)。

衝動買いには“音”がある。「これが出会いだ!」と“ガ~ン”と鳴り響く音。「おっとここにあったじゃない!」という“コツン”と突き当たる音。「これ欲しい!」と心がおどり“ツンツン”とスキップする音。フロアで陳列台と自分だけにスポットライトが当たり、周りは“シーン”と静けさに包まれる。そんな“衝動音”を一身に受けとめブツクサつぶやく。買おうか買うまいか。やがてししおどしが“カ~ン”と鳴り響くように、衝動買いに突き落とされる。

衝動を告げる心の音はさまざまだが、衝動買いはおおよそTPOで整理ができる。

衝動買いのTPO
Time:時間帯、曜日、季節、行事など
Place:お出かけ店(ハレ)、近所のお店(ケ)など
Occasion:日常購買、ウインドウショップ、クリアランスなど

衝動買いの多い時間帯イメージは夕刻か夜、平日より休日、冬より春。もちろん何周年記念や自分記念日でもそれは起きる。都心の百貨店でもあるし、近所のお店でもむくむく頭をもたげる。3個100円のお得品をつい手に取ることもあるし、計算しつくされたウインドウの陳列に恋して“落ち着け自分”と心でつぶやくこともある。年に数度のクリアランスは衝動の爆発が許される場だろう。
衝動買いはそこかしこにあるが、衝動買いと言えばオンナの牙城だ。

衝動買いは恋するのと似ている

リサーチ会社のハー・ストーリィがまとめた「女性の衝動買いについて<2008>」によれば、過去半年に衝動買いをした女性は6割にのぼる。

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もっとも最近で、思わず購入してしまった商品(出典:ハー・ストーリィ)

購入品は食品(お菓子やチョコほか)、生活雑貨(食器、サーモマグ、調理器具ほか)、服飾雑貨(靴、バッグ、サンダルほか)、衣服(スカート、ジャケットほか)、化粧品・トイレタリー(日焼け止め、洗顔料ほか)などが主なもの。衝動買いの理由は「かわいい、素敵、一目ぼれ」をキーワードに挙げた人が24%、「ニーズ充足」が17%、「機能・効果への期待」が14%と、“ぐっときた”と“冷静な目線”が交錯している。

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衝動買いをした理由(出典:ハー・ストーリィ)

注目は「広告・話題・他者評価」が8%に留まること。「使用後の気持ちはどうでしたか?」との質問に対し、「ネタになる」はわずか2%。衝動買いは“踊らされての買う”のではなく、ネタのために買うのでもなく、「心から湧き出てくる衝動に身を任せたの!」というのが主婦の衝動意識である(回答者属性は既婚者86.6%)。

夫が帰宅すると、妻は玄関口でこう告げる。「ねえ今日、あるものを衝動買いしちゃったの!」。夫、一瞬身構え「いったい・・・何をだい?」。妻、ほほえながら「ふるふるシェイカーのオレンジ味!」

この調査によると衝動買いの平均額は3000円。近頃は夫の小遣いもこぢんまりしているが、主婦の衝動金額もカワイイもの。このくらいの衝動なら、夫もブルブル震えなくて済む。

衝動買いあれこれ

衝動買いには、目を見張ったり、フフンと笑えたり、じりじりするものもある。

犬や猫とは出会いだ。ペットは高価な衝動買いの代表例。我が同僚Cherryさん、1匹目の猫は計画的に購買した。2匹目のときは計画と衝動が混じって「この子にしよう!」と決断。そして3匹目はまさに衝動だった。

ある日、1匹目の猫のエサのためにペットショップに立ち寄った。何げにケージに目をやると、猫と目が合った。「あ! この子!」と、ひと目ぼれだ。売約済みになればもう2度と会えないので、ケージの前で手付金が渡された。衝動買いされた猫は今、衝動的に舌を出している、のかもしれない。

同僚YUKAさんは旅先の上海で、ウインドウの前で衝動に包まれた。ウインドウの中の“馬車”はさんぜんと輝いていた。「これは出会いだわ!」と言いながら、しっかり値切って買った。

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筆者は思わず「これいい!」と叫んだが、多くの人は絶句したこのバッグ。このバッグを持つ彼女と共に上海路を歩けば、自転車の群れが道を開けてくれる(そんなことはないか)。

しかし先日、近所のスーパーで見かけた衝動購買には絶句した。30代の夫婦で子供1人の3人、カゴはテンコ盛りだ。時間がかかるなと思いつつ、後ろに並んだ。カゴの全品目は「48XX円」だったが、支払う代わりに一度買ったモノを「これいらない、あれいらない」と戻し始めた。アイスを戻し、冷蔵ピザを戻し、シャウエッセンを戻し・・・。手持ちは3XXX円で、その金額になるまで取り消した。

1品や2品なら分かるけど、ざっと1000円分以上。まるで往年のTV番組『目方でドーン!』(奥さんの目方で買い物競争をする番組)のようだ。彼らは“衝動詰め”の確信犯なのだろうか?

衝動買いを図解しよう

バーキン(100万円以上するエルメスのバッグ)を衝動買いできる人は幸せだろうか? 「いくらお金があってもね」と貧乏人ほど言うけれど、金持ちでも貧乏人でも、衝動買いの基本は時間とお金だ。

そこで衝動買いを購買額と衝動処理時間で表現しよう(下の図)。縦軸は「いくらの衝動買いができるか」という消費可能額を表し、上はバーキンで下は100円ショップ。横軸は「衝動買いの意思決定処理時間」を表し、右は瞬間購買、左は“意思決定まで無限”に時間がかかるということ。猫の衝動のお値段は10数万円、バッグの衝動は千何百元、購買詰め衝動は48XX円、猫とバッグの衝動処理時間は数秒、衝動詰めは20分くらいだろう。

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衝動を表すにはこの2軸に加えて3次元の軸が必要である。それは「これこそ一期一会だわ」を深さとするタテ軸である。衝動とは“それにほれること”、つまり“一期一会深度”が関わっているからだ。

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一期一会を深めるヒント

さてここで立場を変えて、衝動買い“させる”売り手の視点で見てみよう。この“逆円錐”を長くする一期一会を深めるには、どうしたら良いだろうか?

陳列量を抑える(レア感を出す)、陳列の鮮度を高める(場所を変える)、POPの文句を変える(ウケるスローガンは人それぞれ)などは基本だが、出会い作りにはやはり重要。ネットショップならランダムなシャッフル、写真を変える、説明文を変える、カラーを変えるのもいい。

商品を見つめるお客さまの衝動にフタをしてはならない。フタとは“売らんかなの店員”のひとことである。「お似合いですよ」はまだしも「今買わないとなくなります」という脅し文句は、むしろ衝動のフタを閉じさせる。強引に買わせてもあとで後悔させ、その店には2度と近寄らなくなる。

衝動買いのトランス状態にあるお客さまは、放っておけばいいのだ。ニッコリ微笑んでいるだけでいい。勝手に衝動に落ちてくれる。衝動の持続こそが消費の快楽、顧客満足なのだから。

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