谷家衛@お金のデザインと坂本恒之@スマイルワークスは、なぜFinTechを選んだのか? 

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ソフトウエア産業化の波

金融業界のソフトウエア産業化の波が急激に押し寄せている。その本質は何なのか。お金のデザイン(東京・港)の谷家衛氏(52)は外資系金融機関でトレーダーとしてアジア最年少のマネジングディレクターに就任した実績を持ちながら、オンライン証券、オンライン銀行など様々な形で金融業のIT(情報技術)化に関与してきた。オンライン生命保険の旗手であるライフネット生命保険の立ち上げを企画した人物でもある。

2013年8月に同社を設立、ユーザーが9つの質問に答えるだけで選好性を判別し、ロボアドバイザーにより、誰もが、いつでも、少額から、簡単に、最新の金融工学を用いたグローバル資産運用を可能にするサービスを提供している。

谷家氏は「日本には世界1位の対外純資産、世界2位の個人金融資産(1700兆円)があるにもかかわらず、そのうちの約50%が預貯金で、そのほとんどが円預金。人口減少・低成長の日本国内から、人口が増える世界全体に分散投資・運用していくことこそが日本の最大の成長戦略である。今まで、日本の一般消費者にはその方法がなかった」と指摘する。

スマイルワークスの例

法人向けサービスでも大きな変化が起きている。スマイルワークス(東京・千代田)は、03年7月、坂本恒之氏(49)によって設立された。統合的なERM(エンタープライズ・リソース・マメジメント)システムのクラウドサービスであるクリアワークスを中小企業向けに月額9000円で提供している。

「従来、大企業はERMに対して数億円規模のシステム投資を行ってきたが、中小企業は会計や給与など、機能単体の安価なパッケージを別々に使って、業務連携は手作業で行っているのが実態だった。日本では99.7%が中小企業であり、彼らが効果的にクラウド活用を取り入れることこそが、日本全体の生産性向上に貢献できる。将来的には各種行政手続きや申告・申請など社外との連携を実現できるプラットフォームを目指す」。坂本氏はこう話す。

一方で、金融業界の多くは、既存市場を代替するサービスであり、新たな世界観の実現に向けては課題も少なくない。「規制業種におけるイノベーションのスピード、既存金融機関が存在する中でのお客様との信頼獲得、金融とテクノロジーの人材の融合が重要な課題。多様性のある、優秀な人材が、自分の個性を存分に発揮できるすぐれた企業文化を創ることこそが、全ての課題の解決の近道」と谷家氏はいう。

金融サービス デジタルへの領域

また、「マイナンバーなどの電子行政を機に民間レベルでもデータフォーマットの標準化が進むことが重要。通帳明細データも会計データも標準フォーマットがあるにもかかわらず、日本では採用されていない」(坂本氏)との指摘もある。

元来、金融サービスはデジタルな領域である上に、その複雑性ゆえの情報の非対称性が起きやすいという意味では、インターネットの持つ効能との親和性が高い。(1)クラウドの普及やデバイスの進化によって低価格での提供とデータの蓄積が可能になった(2)人工知能などを用いたデータ解析によって、高付加価値な個別対応力を加速度的に高めることができる――今、機が熟していることを示している。あとは、いかに多様で優秀な人材を集め、スピード感を持ってユーザーから適切な認知を獲得できるかどうかが、参入するベンチャー企業の成否を分けるのではなかろうか。

(2015年11月5日付日経産業新聞の記事「VB経営AtoZ」を再掲載したものです)

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