核の踏み絵を踏まされるニッポンと、NPTの“死 

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北海道洞爺湖サミットは、議長国である日本が成果を強調する一方で、もはや先進8カ国のG8だけでは何も決められないという事実も明らかになった。

福田首相が大げさに言っていた「政治生命を賭けた」温暖化ガス排出削減問題。これについても長期目標が必要なことを「共有」しただけで終わってしまった(もちろん共有することが大変だったことは理解できるが、米国や中国、インドといった国との溝を埋めることができなかったのも事実である)。

インドと米国の原子力協力

このサミットをはさんで、もう1つの大問題が進行している。それはインドと米国の原子力協力だ。インドのマンモハン・シン首相は日本に飛んでくるときに、記者団に向かってIAEA(国際原子力機関)と核査察について具体的な交渉に入ると語った。これの意味するところは、核兵器保有国であるインドに対して、米国など核先進国が技術供与や燃料供給をするという「新しい事例」が生まれる可能性が出てきたということだ。

インドは核兵器保有国だ。NPT(核不拡散条約)で核兵器の保有が認められているのは世界で5カ国だけ。米英仏露中という国連安全保障理事会の常任理事国だ。そして核兵器を世界に広めないためにNPTができた(核兵器国とは、1967年1月1日以前に核兵器その他の核爆発装置を製造しかつ爆発させた国をいう)。インド、パキスタン、イスラエルはこのNPTを締約していない。そしてインドとパキスタンは核兵器保有を公然と認め、イスラエルは認めていないが核兵器をもっているとされる。

NPTを締約していない国に対しては、核技術を提供しないというのが核不拡散条約の肝心な部分である。なぜならNPTは民生用核技術の開発については国連機関であるIAEA(国際原子力機関)による査察を義務付けており、それで軍事用への転用を防ぐ仕組みになっているからだ。つまりNPTに加盟することとIAEAの査察はセットなのである。

しかしインドはNPTへの加盟は断固拒否した。インドは核兵器は自国の安全保障上欠かせないものとしており、もしNPTへ加盟して核保有を制限されるとしたら、米国との原子力協力協定は破棄され、現在のマンモハン・シン政権は崩壊するからである。

米国は、そこでNPTを締約せずともIAEAの査察だけを受け入れるよう要求。インドは民生用原子炉(全部で22基の原子炉のうちの14基)に限ってIAEAの査察を受け入れる旨を返答した。現在はこの査察についてIAEAと詰める段階である。

ブッシュ大統領はインドとの原子力協力について、インドはNPTを締約しておらず、したがって北朝鮮やイラク、イランのように条約に違反しているわけではない。これまでIAEAの査察を受けていなかったインドが、査察を部分的にでも受け入れるようになれば、一歩前進である。

しかしどう強弁しようとも、核兵器を保有し、NPTを締約してない国に核技術を供与することは、これまでの核不拡散の考え方を否定するものに他ならない。NPTはすでに瀕死の状態にあるとされるのは、このあたりの事情があるからだ。

核の踏み絵を踏まされる時期が近づく

インドにとってまだハードルがいくつかあるのだが、その1つに日本が絡んでいることだ。NSG(原子力供給国グループ)というのがそれで世界45カ国が加盟している。日本もメンバーだ。このNSGは原子力技術の輸出管理をするための組織である。インドへ核技術や燃料を供与するためには、このNSGの承認を得なければならない。採決は全会一致であるため、もし日本が反対票を投じれば、インドは核技術の供与を受けられないことになる。

核兵器廃絶を「悲願」とする日本は、核兵器保有国であるインドへの核技術供与に関してどのような姿勢を取るのか。賛成はしなくても、棄権によって反対しないというような決定をした場合、日本国内にどのような説明をするのか。核の踏み絵を踏まされる時期が、そろそろ近づいている。

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