あなたは良い「伝え手」ですか? 

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『グロービスMBAクリティカル・シンキング コミュニケーション編』から「伝え手」を紹介します。

「コミュニケーションの効果は受け手が決める」とよく言われます。受け手に望ましい行動をとってもらう上で、内容以上に重要となるのが、「伝え手」がどんな人なのかということです。同じことを言われても、「あの人に言われたなら仕方がないけど、この人に言われても聞きたくない」と思ったことありませんか。言い方を変えれば、人に望ましい方向に動いてもらうためには、自分自身のことをよく知り、相手にどのように認知されているかも正しく把握しなくてはならないということです。自分が伝えても無理と思うなら、場合によっては他人を介して伝えてもらうなどの工夫も必要になります。自分を客観的に眺め、強みや弱み、特徴をしっかり理解しておくことが、効果的なコミュニケーションには必須なのです。

(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、ダイヤモンド社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

「伝え手」に関する学びをピックアップ

伝え手について考えるポイントとして、ここでは、(1)誰が伝えるか、(2)自分自身のパワー、(3)自分自身のキャラクター、の3つの側面から説明する。

(1)    誰が伝えるか
誰が伝えるかは、コミュニケーションの効果を考えるうえで重要になる。本書ではほとんどのパートで、自分自身が伝え手になることを前提に議論を進めるが、状況によっては、あえて自分が伝えるのではなく、別の人間に伝えてもらうほうが有効な場合も多い。

たとえば、上司を説得しなくてはならないのに自分と上司の人間関係がこじれていたり、自分のキャラクターに問題があったりして、内容には同意してもらえそうでも、体裁上、上司が「よしわかった」とは言いにくい場合がある。

そうしたケースであれば、上司のさらに上司に根回しして説得してもらう、あるいは上司が尊敬していたり、世話になったりした人に同席してもらい、説得を試みるという方法が有効かもしれない。

プロ野球監督の星野仙一氏は、選手を動機づける際、本人と直接コミュニケーションをとることもあるが、選手の奥さんや両親に「自分がしっかり育てます」「期待していてください」などと伝えるという。そうした言葉が家族から本人に伝わることで、より強く動機づけされるのだ。

経営者の中にはマスコミを巧みに使い、自分の言いたいことを彼らに代弁させて従業員に伝える人もいる。自身が従業員に向かって「クリエイティブなアイデアを期待する」と言うことももちろん大切だが、マスコミが「○○社長は社員の創造性に強い自信を持っている。今後も同社の新商品に期待したい」などと書くと、従業員はさらに発奮しやすくなるのだ。

コミュニケーションというと、往々にして内容(What)やコミュニケーションの方法論(How)に目が向きがちだが、実際に多くの受け手がまず気にするのは、誰(Who)が言っているかということである。

あらゆるシーンでコミュニケーションの目的を果たせるよう、実力をつけるべく努力することは重要だが、こうした側面があることを忘れてはならない。

(2)    自分自身のパワー
パワーとは、人々に行動を促す潜在的な能力、資質のことで、具体的には以下のような要素がある。

●公式のパワー(ポジションパワー)
アサイン権限、許可、予算、報酬、情報等を握っている。典型的には、部下に対する上司のパワー。
●個人のパワー
信頼性、専門性、カリスマ、スタミナ、人間力など。
●関係性のパワー
提携できる、頼れる、互恵性がある、多様なネットワークの中心にいて精神的支援、助言、情報、資源を得られるなど。

ビジネスにおけるコミュニケーションの目的は、最終的に人を望ましい状態に導くことである場合が圧倒的に多い。それを実現するうえで、自身に備わっている、周りから認識されているパワーを知っておくことは非常に重要だ。先述した、「自分が言ってもダメだけど、彼・彼女が言えば相手も受け入れるだろう」というケースは、多くの場合、このパワーの有無に帰着する。

なお、どうしても公式の(ポジション)パワーや専門的なスキルに目が行くことが多いが、昨今では、社外も含めたビジネスのオープン化(外部との協業による商品開発やビジネスモデル構築等)が進んだことから、個人のパワー、関係性のパワーの重要性が高まっている。

特に、信頼や人間性といった要素は重要だ。「あの人の言うことなら信用できる」「彼・彼女の言うことだから安心だ」というのは、それまでに当人が築いてきた評判や信頼によるところが大きい。

これらは一朝一夕に身に付くものではない。常日頃から、「報告・連絡・相談」をしっかり行う、言いっぱなしにせずフォローをしっかりする、気持ちのよい挨拶をする、相手の感情に配慮する(特に目下の人間への配慮を忘れない)、引き受けたことは安易にやめたりせずやりきる、約束をきちんと守る、多くの人と良好な関係を築いておくなど、スキル以外の部分でも、信頼される土壌をつくっておくことがビジネスパーソンには必須である。その意味でも、ケースに示した、部長の淡野への対応は、良いものとはいえないだろう。

(3)    自分自身のキャラクター
自分のキャラクターや、それに付随するコミュニケーション・スタイルの自己認識と、周りからどのように見られているか、のギャップを知っておくことも重要だ。

たとえば、感情的になりやすいと思われているのであれば、意識してそうならないようにしなければ説得力は落ちる。あるいは、滑舌(言葉の発音)が悪い人であれば、プレゼンテーションの前に発声の練習を何度も繰り返すなど、慎重に準備しなくてはならない。感情が表情に出やすいというのは、交渉の場面ではあまりプラスには働かないし、若さ(あるいは若く見えること)はプラスに作用することもあれば、マイナスに作用することもある。

特に対面コミュニケーションの場合、受け手は、伝えた内容以上に伝え手の外見や態度に強く影響されることが知られている。アメリカの心理学者アルバート・メラビアンは、感情や態度について矛盾したメッセージが発せられた時の人の受け止め方について研究し、そうしたコミュニケーションの影響度合いを分析した結果、話の内容などの言語情報(Verbal)が7%、口調などの聴覚情報(Vocal)が38%、見た目などの視覚情報(Visual)が55%であったと報告している(メラビアンの法則)。

自分自身が相手にどう見えているのかは、つい忘れがちだが、強く意識すべきポイントといえよう。

(本項担当執筆者:グロービス出版局長 嶋田毅、HRデザインスタジオ代表 生方正也)
 

『グロービスMBAクリティカル・シンキング コミュニケーション編』
グロービス経営大学院  (著)
2800円(税込3024円)

 

東京大学理学部卒、同大学院理学系研究科修士課程修了。戦略系コンサルティングファーム、外資系メーカーを経てグロービスに入社。累計150万部を超えるベストセラー「グロービスMBAシリーズ」の著者、プロデューサーも務める。著書に『ビジネス仮説力の磨き方』『グロービスMBAビジネス・ライティング』『グロービスMBAキーワード
図解 基本フレームワーク50』(以上ダイヤモンド社)、『[実況]ロジカルシンキング教室』『[実況』アカウンティング教室』『競争優位としての経営理念』(以上PHP研究所)、『利益志向』『「MBA 100の基本』(以上東洋経済新報社)、『ロジカルシンキングの落とし穴』『バイアス』『KSFとは』(以上グロービス電子出版)、共著書に『グロービスMBAマネジメント・ブック』『グロービスMBAマネジメント・ブックⅡ』『MBA定量分析と意思決定』『グロービスMBA事業開発マネジメント』『グロービスMBAビジネスプラン』『ストーリーで学ぶマーケティング戦略の基本』(以上ダイヤモンド社)など。その他にも多数の共著書、共訳書がある。
グロービス経営大学院や企業研修において経営戦略、マーケティング、ビジネスプラン、管理会計、自社課題(アクションラーニング)などの講師を務める。グロービスのナレッジライブラリ「GLOBIS知見録」に定期的にコラムを連載するとともに、さまざまなテーマで講演なども行っている。

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