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支援体制: 新事業の成功を左右する「適度な距離感」

投稿日:2017/01/28更新日:2021/12/28

『グロービスMBAビジネスプラン』から「支援体制」を紹介します。

特に大企業の多角化においては、本社からの支援の度合いが新事業の成功を大きく左右することがあります。支援は少なすぎても問題ですが、過剰過ぎても好ましくありません。前者については、経営資源やノウハウが新事業に活用できないとすれば、シナジーが効かず、競合になかなか勝てないでしょう。それでは、その事業を当該企業の中で行う意味がありません。

一方で、過度の介入も往々にして新規事業の自由度を奪ってしまう危険性があります。新事業は時として、新しい意思決定プロセスや評価基準、さらには価値観を必要とするものですが、既存事業の考え方に馴染んだ経営陣が、既存事業の考え方をそのまま新事業に当てはめ、不適切なアドバイスや意思決定を行うことも多々あります。例えば、利益は後から回収する利益モデルなのに、早期の黒字化を求めてしまう、などです。

「適度な距離感」は、言うは易し行うは難しですが、そうした体制やノウハウを持っている企業とそうでない企業では、新事業の成功確率に大きな差が出てしまうことは意識すべきでしょう。

(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、ダイヤモンド社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

支援体制

新事業を成功させるには、マネジメントチームそのものだけではなく、新事業を支援するための社内体制もきわめて重要である。支援体制の前提として、新事業の形態と位置付けを決定しなければならない。大きく分けて、事業部門内の1部署、社内の独立した事業部門、別会社がある。なお、別会社にする場合は、子会社か、他社との合弁が考えられる。

これらは、予想される事業規模、既存事業との関連性の強さ/弱さ、自社の経営資源などで決まる。一般的には、事業規模が大きいほど、既存事業との関連性が弱いほど、より独立性の高い形態に向いている。最初は既存の事業部門の1部署から始め、成長に合わせて、独立した事業部門、子会社と、より独自性の高い形態に段階的に変えていく方法もある。

また、重要な経営資源を外部から提供してもらう場合は、その相手先と合弁にしなくてはならない場合もある。重要な経営資源には、販売チャネル、不可欠な技術やノウハウなどがある。事業リスクの負担を軽減するために他社に資本を提供してもらうこともある。

ところで、企業内の新事業において支援体制がなぜ重要なのだろうか。社内新事業は、資金その他の経営資源の提供を受けられるという点では、ベンチャー企業に比べて有利である。半面、ベンチャー企業と違って、社内の既存事業との調整を図らなければならない。資金や人材など、新事業の当面の資源の調達は、既存事業に依存することが多い。既存事業にとって、新事業は経営資源を奪うライバルでもある。既存事業部門には独自の目的や目標があり、自部門の経営資源は自部門のために使いたいのは当然のことである。利害が対立しかねないときに「新事業は全社的に重要であるから、セクショナリズムに陥ってはいけない」いったタテマエを振りかざして批判しても、事業は進まない。既存事業との利害を調整し、協力を得るために動かなくてはならない。

とはいえ、社内での調整のためにマネジメントチームが忙殺されるようでは、肝心の新事業そのものに注力できない。本社側が社内調整を支援し、新事業のマネジメントチームが本来やるべきことに注力できるよう、また動きやすいように環境を整える必要がある。

支援体制のカギを握るのは、新事業を支援する担当部門・担当者、担当役員である。新事業を支援する部門が、特定の事業部門か、全社的な企画部門かによって、企業全体における新事業の位置付けが変わる。企業全体の戦略上、重要性や優先順位が高いのであれば、全社的な企画部門が担当するほうが適している。特定の事業部門が担当すると、その部門のための事業とみなされる。

新事業の担当役員は、事業の重要性を社内に浸透させ、全社的な調整をする役目を負う。意思決定のスピードも、担当役員に左右される。したがって、影響力の大きい役員を担当者にすることが望ましい。新事業の意義をよく理解し、行動してくれる人であれば最適である。

追加投資など事業の重要な節目では、新事業のマネジメントチーム自身が役員や既存事業部門を説得しなければならない場合もある。しかし、説得の責任がすべてマネジメントチーム側にあるのでは負担が大きすぎるし、意思決定が遅れ、事業の展開スピードが遅くなるため、チャンスを逃してしまう危険性がある。また、マネジメントチームだけが動き回ると、マネジメントチーム自身の利害のためだと受け取られてしまう。全社的な課題であることを理解させるためにも、本社を説得する際には、本社側の支援担当部門・担当者、担当役員が責任を持って全社をリードしなければならない。

新事業のマネジメントチーム、事業を支援するための本社側の社内体制ともに新事業が軌道に乗るまでは、できる限り変更はしないほうがよい(明らかに失敗であって、変更すれば良い結果が出ることが明白な場合は別である)。体制を変更すると、業務への慣れ、信頼関係の構築に時間がかかり、ロスが生じるからだ。定期的なローテーションによる社内異動のように、新事業と関係のない理由による変更は好ましくない。新事業にかける熱意が疑われてしまうからである。

(本項担当執筆者: グロービス出版局長 嶋田毅)

次回は、『グロービスMBAクリティカル・シンキング コミュニケーション編』から「コミュニケーションの構成要素と目的」を紹介します。

https://globis.jp/article/5159

『[新版]グロービスMBAビジネスプラン 』 
グロービス経営大学院 編著
ダイヤモンド社
2,800円(税込3,024円)

 

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