【2017元旦VC鼎談】日本で最も影響力のある投資家3人が見通す「融×結×転」の1年 

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明けましておめでとうございます。GLOBIS知見録「読む」2017元旦企画は、Forbes Japan誌「日本で最も影響力のある投資家ランキング ベスト10」にランクインした仮屋薗聡一(1位)、今野穣(5位)、東明宏(7位)の3氏(いずれも、グロービス・キャピタル・パートナーズ)が占うこの1年。(企画・司会・構成は、水野博泰=GLOBIS知見録「読む」編集長)

司会: 2017年のベンチャー投資の動向について、皆さんの読みは?

東 明宏

東: 欧米に続いて、日本でも本格的にリアルの世界とネットの世界の融合が進んでいくと思います。もちろん、これまでも「ネット活用」は進んできたのですが、製造業や建設・インフラ、農業等の一次産業など、まだ手つかずの巨大産業がありました。これがいよいよ本格的に、急速に、動き出す年になるんじゃないでしょうか。IoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)、VR(仮想現実)、AR(拡張現実)といった技術が実用/実装段階に入ってきて、巨大産業にも目に見えるインパクトを与え、日本でも急速に普及が進んでいく。リアルとネットが互いにに染み出し、溶け込み、境界が益々見えなくなってくる。

 

今野 穣

今野: 2016年は政治的にも経済的にも本当に不確実性が高まりました。そして、世界的には市中にお金が余っていて、リターンを確保し、拡大再生産を持続していくために、ベンチャー、イノベーション、プライベートエクイティといった領域にお金がどんどん流入しています。これに浮かれて、起業家やファンドマネージャが適切に応対しなかったら「終わりの始まり」が来てしまうかもしれない。ポジティブな側面の一方で、我々ベンチャーキャピタリストとしても背筋をピッと伸ばさなければならないという側面の両方があるように感じています。手前味噌になりますが、グロービス・キャピタル・パートナーズのように過去20年で何度かの経済の浮沈を体験し、失敗も味わってきた者が模範になることが求められていると思う。

投資テーマの観点から言うと、リーマンショックから立ち直った2013~14年に投資を実行したスマートフォン周りのアプリケーション関連が、そろそろ白黒ついてくる。それは良い結果も悪い結果も含めて。イノベーションの加速という観点では、大手企業とベンチャーの提携案件が増えるでしょうね。技術の観点では、IoT、AI、VRというものが事業・サービスに活かされるステージに入ってくれば良いなとは思いますが、これは2017年中にいくかどうか微妙なところ。逆に言うと、2016年は事業化のステージではなかったということです。

仮屋薗 聡一

仮屋薗: 「社会実装」の年だと思っています。2016年に「第4次産業革命」が政府、主要官公庁、民間で議論されましたが、2017年には規制緩和とか特区などによって本格的な見える化、つまり社会実装が進むでしょう。大企業もベンチャーも様々なプロジェクトにこぞって参加し、どんどんカタチになっていく。既得権益とベンチャーの対立とか、いろいろな問題も明らかになってくるでしょう。

米英独あたりは、日本よりも早く社会実装を進めているので、急いでキャッチアップすべき。うまくソフトランディングさせるというよりは、ハードランディングも覚悟して社会を進化させるような思い切った選択も必要になると思います。コンフリクト(衝突、対立)が健全に討議され、リスクはあったとしても将来の産業を作っていく方向に進むことを期待しています。ベンチャーキャピタリストとしては、そうした社会的合意形成から新たな可能性が生まれてくるのだと考えています。

司会: 2017年は米国でトランプ政権が発足します。英国のブレグジットの影響や、中国、ロシアの動きも含めて地政学的な均衡の揺らぎが気になります。ベンチャーキャピタリストとしての着眼点は?

仮屋薗: 中国のイノベーション投資ですね。2016年は米国と共に6兆円を超えると言われています。国家・民間を挙げて成長・イノベーションを目指した巨額投資がなされている。日本は2000億円程度なので30倍くらいのとんでもない規模感です。中国では、国内のみならずお金は世界に向かっている。日本に向いてもおかしくないのですが、日本の方が受け入れていないという印象が強い。

テクノロジーに関しては、中国も世界も日本の方に目が向きつつある。投資マネーもそうだし、人材もそう。世界からどんどん受け入れて、外の力を使ってレバレッジをかけて、オープンなイノベーションの流れを作りたい。鎖国状態、ガラパゴス状態から抜け出るチャンスです。これまで言ってきたような「日本発世界」ではなくて、世界から日本にお金も人材も来てもらうという逆の動き。日本で仕事をしたいという優秀な人や企業に対しては思い切った優遇政策をとるべき。イノベーション先進国は既に取り組み済み。これは日本が起こすべき変化のカギになると思います。

今野: 2つ明らかなことがあります。1つは、日本は政治的に最も安定しているので外資を呼び込むパワーが相対的に高まっているということ。もう1つは、「グローカリゼーション」という視点が大切になってくること。海外現地市場にしっかり根付いて、雇用を生んで、経済に貢献することが企業としての安定につながる。インとアウトをうまく操縦できれば、日本の世界における地位は上がっていくと思います。

東: トランプ大統領の誕生によって、Apple、Amazon、Facebook、Googleといった米西海岸企業の事業がどのような影響を受けるのか、とても気になっています。トランプ氏からはAppleを攻撃するような発言もありました。どんなプレッシャー、影響があるのか。動きによっては日本の企業にも少なからず影響があるのではないかと思います。また、米国だけでなく、全世界的に巨大化したネット企業に対し、国や政府がどう関与していくか、逆にネット企業はどのように対峙するか、トランプ大統領誕生を機に世界世論がどのように動いていくかも注目しています。

司会: 世界の経済にとってプラスでしょうか、マイナスでしょうか?

今野: なかなか難しいですが、短期的にはポジティブだと思いますね。アベノミクスと近しいことをやろうとしているように見えるので、短期的には米国経済にポジティブ、その影響が他の国にも及ぶでしょう。

ただし、経済政策以外の部分、例えば中国やロシアとの関係といった地政学的リスクの増大によって腰折れしてしまう可能性はあります。時間軸の短期・中期と、経済政策以外のリスクがからむので、ポジションを1つに絞るのは難しい。

仮屋薗: 僕は、経済にはポジティブに働くと思いたい。というのは、トランプさん自身が事業家であり、ネイチャーとして経済合理性で考える人のはずなので、経済にネガティブに働くようなことはしないと思うんですね。大統領選で言ってきたことと、実行する施策は、必ずしも一致しないんじゃないかなと思っています。米国国内経済の活性化、雇用拡大には手を打ちながらも、よく見ると彼を支持したブルーカラーやマス(大衆)の雇用創出・賃金増強だけでなくグローバルな産業成長にも配慮された政策バランスになるんじゃないのかなと。

東: 一言だけ。政権移行チームに参加したピーター・ティール氏(PayPalの共同創業者、投資家)に注目しています。彼がどのような仕掛けをしてくるのか。イノベーション・セクターにはポジティブではないかと見ています。

司会: 皆さんの担当分野に引きつけると、2017年はどんな年になりそうですか?

東: 冒頭に話したように、ネット化が遅れていたセクターでは新技術による変革が起こる可能性があるので注目していきます。

変化球かもしれないのは、ベンチャー単独での取り組みよりも、大企業や大学等を巻き込んだ取り組みがじわじわ広がっていくこと。例えば、AIベンチャーのプリファード・ネットワークスにトヨタ自動車が10億円出資するといった象徴的な事例がありましたが、そうした動きが足元着実に広がってきています。私は最近、ルートレックネットワークスという農業ベンチャーへの投資を実行しましたが、UTEC(東大エッジキャピタル)さん、テックアクセルベンチャーズ(オムロン、リコー、SMBCを中心としたVC)さん、オイシックス(食材宅配大手)さんとの共同投資となりました。一次産業でも新しいエコシステムを作り、大きくしていけたらいいですね。

今野: 僕は2つかな。1つは、CtoC」「シェアリングエコノミー」みたいなところをテーマにしていくということ。所有を前提にした、設備投資や所有を前提にした生産活動が、今後はメインストリームではなくなってくると思う。サプライチェーンにC(消費者)が入ってきて、空いているアセットを利活用していくようなサービスみたいなのが大事になってくるのかな。

もう1つは、「オープンイノベーション」。今さら感があるかもしれませんが、大企業のイノベーションに資するような事業ネタを生み出していくことが大事だと思っています。これからの技術ベースの事業って、おそらく若いスタートアップだけではだめで、大企業のアセットがないと到底ものにならない領域が増えてくる。その間の距離を近づけていくような、もしくは逆算して大企業のニーズを投資テーマにするような発想が大事になってくるという認識です。

仮屋薗: 僕は最初に話した海外マネー・海外人材の積極活用が1つ。それから、大企業の「クローズドイノベーション」から「オープンイノベーション」への本格的な転換。今本当の意味でオープンにやっているところは1割にも満たない。この2つをテコに新しい取り組みがうまく社会実装していけると良いですね。投資の分野としては、トリッキーな言い方ですが、車、家、ヘルスケアといった重点領域以外の第4次産業革命。例えば、土木、建設、建築、インフラ系、あるいは農業など。

3年前、「6 テック」という重点領域をセレクトしました。Edu Tech」「Health Tech」「Fin Tech」「Auto Tech」「Car Tech」「Home Tech」「Frontier Techです。実は、それ以外のところにも良いネタがたくさんあるんです。ITとか情報産業に閉じた話ではなくて、言い方が変かもしれませんが「経団連レベルの大企業が変わっていく」ということに意味があると思うんですよね。イノベーションの焦点がそこに戻ってくるし、戻すべきだと思っています。

司会: 2017年の焦点はKeidanren Techということですね(笑)。では、皆さん、2017年を一文字で表現していただけますか。

東: 私は「融」です。2つ意味があります。1つ目が、日本においても、ネットが新技術を通じて、これまで染み出してなかった巨大産業、製造業、建設・インフラ、農業等にも確実に染み出していきますよ、と。もう1つは、大企業、大学、ベンチャー等がしっかり融合してエコシステムが広がっていくと。進んでいくはずですし、欧米に比べ、遅れており、待ったなしで進めていかなくてはと思っています。

今野: 僕は「結」です。いくつかの結果・成果が出る年になるだろうというのが1つと、大学と大企業と起業家みたいな、今までは別々に捉えられていたセグメント、人たちを結んでいくという役割がベンチャーキャピタルにあると思っているのがもう1つです。

仮屋薗: 「起承転結」の「転」です。いろいろと溜まったり、議論されたりしてきたものが一気に展開する年という意味の「転」です。古い概念と新しいアプローチがぶつかり合って、願わくば、リスクがあったとしても新しいものを生み出す方向に転がっていってほしいなという思いです。

司会: 全てに動きがありますね。2017年は「動く年」だと総括できるかもしれません。ありがとうございました。

慶応義塾大学法学部卒、米国ピッツバーグ経営大学院修士課程修了(MBA)。株式会社三和総合研究所でのコンサルティング、グロービスのベンチャーキャピタル事業設立を経て、現在に至る。グロービス・キャピタル・パートナーズでは世界各国の機関投資家より約500億円の資金を預かり、日本における有望ベンチャー企業へ、成長のために必要となる「ヒト(人材)」「カネ(資金)」「チエ(経営ノウハウ)」の総合的な支援を行っている。著書に、『機関投資家のためのプライベートエクイティ』(きんざい)、『ケースで学ぶ起業戦略』(日経BP社)、『MBAビジネスプラン』(ダイヤモンド社)、『ベンチャーキャピタリストが語る起業家への提言』(税務研究会)がある。

2006年7月グロービス・キャピタル・パートナーズ入社。2012年7月同社パートナー就任。2013年1月より、同社ジェネラルパートナーおよび最高執行責任者(COO)就任。主な投資担当先にライフネット生命保険、ブイキューブ、みんなのウェディング、アカツキ、Quipper、SAVAWAY、キラメックス、スマートニュース、リノベる、Vasily、ファストメディア、Akippaなどがある。同社入社以前は、経営コンサルティング会社(アーサーアンダーセン、現PwC)にて、プロジェクトマネジャーを歴任。東京大学法学部卒。

株式会社セプテーニ・ホールディングスにてネット広告営業、営業企画、新規事業開発業務に従事。子会社役員を経た後、グリー株式会社にて経営企画、各種アライアンス業務、プラットフォーム事業立ち上げからマネジメントを経て、2012年10月グロービス・キャピタル・パートナーズ入社、現在に至る。早稲田大学第一文学部卒。投資担当先:エブリー、クリーマ、リノべる、イタンジ、ホープ、アソビュー、ランサーズ等

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