人材の国際化が進む欧州ビジネス 

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欧州で広がる海外出身エグゼクティブの“輸入”

New York times紙は最近、欧州企業で海外出身者を採用する傾向が高まっている、との記事を掲載した。記事によれば、グローバルな視点を持った人材の登用により、恩恵を受けている企業も実際にあるという。「国際化圧力に直面した今、欧州企業が求めているのは、一筋縄ではいかない海外ビジネスのノウハウを熟知し、異文化の従業員および経営を統括する能力が備わったエグゼクティブである」。

海外出身者採用の傾向は、業務の国際化に直面している上場企業を中心に、欧州各国に広まっている。「英国では、FTSE100種総合株価指数の100社のうち34社、フランスではCAC40指数の40社のうち7社は、エグゼクティブが海外出身者であり、10年前とは大きく異なる」。

国外からの人材登用は恩恵をもたらすか

ところで、エグゼクティブレベルの人材を国外から採用することで、企業および国は本当に恩恵を受けているのであろうか。海外出身者を採用すれば、企業文化に新しい思考パターンがもたらされ、従来は予想もしなかった新顧客の開拓の原動力となる可能性も確かにあるだろう。

一方で、海外採用戦略とその成果は、先進国各国で異なる。スイス、オーストラリア、カナダでは国境の敷居は低く、就業者の20%以上は、海外出身者である。一方、韓国や日本では、海外出身者はごく僅かである。しかし、ビジネスの成果の一指標ともいえる、一人当たりGDP伸び率はスイスよりも韓国の方が高い。韓国では、一人あたりGDPは、1995年〜2005年で44%増加したが、スイスは11%にとどまった。マクロ的視点では、一口に国際化といっても成果は様々なのだ。

企業によっても成果は異なる。ウェールズ出身のハワード・ストリンガー氏は、ソニー会長就任以来、徐々に成果をあげているが、ソニーは、最盛期の姿を未だ取り戻してはいない。カルロス・ゴーン氏も、日産の復活に貢献したが、原油高の影響で米国国産車市場が低迷し、競合他社同様、日産も現在、四苦八苦している。

文化ではなく、実務能力こそがものを言う

結局のところは、海外出身者であろうとなかろうと、「売上が全てを解決する」のだ。成果をあげる責任は、国籍不問である。トヨタのように、海外で圧倒的な存在感を示しながらも、自国文化に忠実であり続けている例も多数見受けられる。そして、「新たな視点」も、具体的なアクションプランを伴っていなければ、すぐに飽きられ、成功に向けた大胆な方向転換は実現しない。つまり、重要なのは、その人がもつ文化ではなく、アイデアと、仕事を進める能力なのだ。

異文化的要素を加味するということが、成功のチャンスは高めるために必要と考えたとしても、国籍がどうであれ、海外出身者であるというだけで成果は保証されない。言語や文化以上に重要なのは、組織のミッション・ビジョンという制約の中で、ビジネス機会をとらえ、効率的に業務を遂行する能力であるからだ。

New York Times紙が取り上げた、欧州企業の海外出身エグゼクティブは、企業および国の文化の国際化への扉を確実に開いており、上手くいけば、異なるニーズを持つマーケットの顧客への対応力を高めるだろう。しかし、詰まるところ、国籍よりも雄弁なのは、損益計算書と貸借対照表が示すビジネスの成果である。(英文対訳:岩田あさみ)

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