目的と手段がときに入れ替わるのはなぜか? 

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私たちは日々の仕事のなかで、自分の目指していることが袋小路に入ってしまうことがよくあります。そんなとき、冷静に原因を分析してみると、いつしか当初の目的がどこかに消えてしまっていて、手段が目的にすり替えられ、それに振り回されていたことに気づきます。今回はそんな目的と手段の関係性についてあらためて考えます。

目的と手段の基本的な形

「目的」とは目指す事柄をいいます。そして、その事柄を実現する行為・方法・要素が「手段」となります。何かを成し遂げようとするとき、目的と手段はセットになっていて、平たく言えば、「~実現のために、~する/~がある」という形になります。たとえば、「平和を守る〈=目的〉ために、署名活動をする〈=手段〉」、「平和を守る〈=目的〉ために、法律がある〈=手段〉」といった具合です。その関係を図に示すとこうなります。

目的と手段は相対的に決まる

さて、冒頭の疑問のように私たちはときとして、何が目的で何が手段であったか混乱してしまう、気がつけば手段が目的に入れ替わっていたなどということがよく起こります。これはなぜでしょう───。それは、目的と手段は目線を置くレベルによって「相対的」に決まるからです。つまり、あるレベルでは目的であったものが、違うレベルでは手段になりえます。それを図でみてみましょう。

図2は、ある一般的な人生の流れを例として描いたものです。レベル1は、小学校低学年のときのことを思い出してください。このころは、「テストでいい点を取る」ために、「しっかり算数を習う・きちんと漢字を覚える」という目的・手段の組み合わせがあります。ところが、レベル2の高校生くらいになると状況が変わってきます。レベル1では目的だった「テストでいい点を取る」は、レベル2では手段となります。その手段の先には、「希望の大学に入り、好きな学問研究をするため」という目的が新たに生じました。さらに人生が進み、就職段階のレベル3にくると、レベル2で目的だった「希望の大学に入り、好きな学問研究をする」は、新たな目的である「専門を生かした就職をするため」の手段となります。

このように、ある1つの目的は、より大きな目的の下では手段となります。つまり、自分がどのレベルに目線を置くかによって、何が目的か、何が手段かが、相対的に決まってくるわけです。自分が常に意欲的になって、ある1つの目的を達成した後、次の新たな目的を掲げ続けるかぎり、この目的/手段の入れ替わりはどこまでも続いていくことになるでしょう。このことは逆方向にも言えることです。何を成したいかという目線が下がってしまえば、やはり目的/手段の入れ替わりが起こります。

「目標は溢れるが、目的の共有されない職場」の問題点

目的について、もう1点重要なことを考えたいと思います。「目的」と「目標」の違いは何でしょうか───?

目標とは、単に目指すべき状態(それは定量的・定性的に表される)や目指すべき具体的なもの(たとえば模範的な人物や特定の場所など)をいいます。そして、そこに意味が付加されて目的となります。意味とはそれを目指す理由であり、その行為に自分が見出している価値や動機のことです。目的と目標の関係を簡潔に表すと、

目的=目標+意味

になります。実際のところ、何か事を成すにあたって、目的の代わりに目標を置くことはできます。しかし、そのとき意味が欠如していると、実行者にとっては「目標疲れ」が生じる危険性があります。昨今の職場に疲弊感がたまっているというのは、実は、向かう先に意味を感じていないがための目標疲れであることが多いのです。

たとえば、売上げ目標が5000万円の営業担当者はその金額に向かって働く。期末になってその数値が達成できたかできなかったかで神経をすり減らします。そして次の期も新たな目標金額を与えられ働く。そしてまた期末には神経をすり減らす……。この繰り返しでは、「目標疲れ」が出て当然です。その目標である5000万円は何につながっているのか、何のための5000万円達成なのかが自分のなかで意義づけされていなければ、本当の力は出ませんし、長く働いていけません。ですから、私たちは目標に意味を加え、目的に昇華させることが大事なのです。

いずれにせよ、目的は目標と意味、この2つの要素がそろってはじめて目的と呼べるようになります。目標なき目的は、単なる理想論・絵空事となるおそれがあります。また、意味なき目的は、単なる割り当て(ノルマ)となるおそれがあります。

ここで、目的と手段について先達たちの言葉を拾っておきます。

「知識の大きな目的は、知識そのものではなく、行為である」
───トマス・ヘンリー・ハクスリー(イギリスの生物学者)

「私の哲学は技術そのものより、思想が大切だというところにある。思想を具現化するための手段として技術があり、また、よき技術のないところからは、よき思想も生まれえない。人間の幸福を技術によって具現化するという技術者の使命が私の哲学であり、誇りである」
───本田宗一郎『私の手が語る』

「最も満足すべき目的とは、ひとつの成功から次の成功へと無限に続いて、決して行き詰ることのない目的である」
───ラッセル『ラッセル幸福論』

「組織は、自らのために存在するのではない。組織は手段である。組織の目的は、人と社会に対する貢献である。あらゆる組織が、自らの目的とするものを明確にするほど力を持つ」
───ピーター・F・ドラッカー『断絶の時代』

【自問リスト】
最後に、今の自分の仕事と自組織の事業の目的/手段について振り返るとどうなるでしょうか。次の問いを自分に投げかけてみてください。

□あなたが今担当している仕事の
・目標は何ですか?
・その目標をやり遂げる意味(自分なりに見出した価値・やりがい・動機・使命)は何ですか?
□あなたの今得ている知識や技術は、何を成すためのものですか? 
□今の仕事において、目的は手段を強め、また同時に手段は目的を強めているでしょうか?
□今の仕事上の目的の先に、もうひとつ大きな目的を想像することができますか?
□仕事上の目的目線が下がって、本来手段となるべきことに手をかけるだけで満足していませんか?
□あなたの所属している組織(課や部、会社)の事業目的、存在目的は何ですか?
また、それら目的をメンバーで共有していますか?
□利益(給料)を得ることについて、あなたの組織、あなたはどのレベルの目線(下図参照)で見つめていますか?

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