ホワイト家「お父さん」とエリマキトカゲ 

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5月22日ホワイト家「お父さん」とエリマキトカゲ

歩行者天国を散策していたカップルの女性が、ふと「あ、お父さん」とつぶやき、彼氏が「あ、ホントだ」と言った。偶然、彼女の父親と出くわしたのかと思いきや、その視線の先には……。

飼い主に連れられた1匹の白い日本犬がいた。2人だけではなく、道行く人々が口々に「お父さんだ」「かわいい」とほめそやしていた。もはや「白戸(ホワイト)家のお父さん」は日本の父親の代表になったようだ。

よくできた広告は、大流行し、一種の社会現象をおこす。特に日本においては価値観や行動の同質性が高いため、その傾向が顕著なようだ。ソフトバンクモバイルの広告は、CM総合研究所による、会社別・作品別・銘柄別のCM好感度で07年8月から三冠を7回獲得しているほどの大人気。もはや白戸家の人々、特に「お父さん」を知らない人はほとんどいない状況だ。

日本人なら誰でも知っている、一種の社会現象となったCMといえば、「エリマキトカゲ」を記憶している人も多いのではないだろうか。1984年放映なので、あまり若い方は分からないかもしれないが。

岩混じりの砂漠を、首に奇妙な傘を広げたような器官を持った爬虫類が、後ろ足で立ち上がり、がに股でドタドタと走り回っている映像は非常にインパクトが高かった。当時、その爬虫類、エリマキトカゲは一種のブームにもなり、小学生などはそのユーモラスな走る姿を模して遊んだものだった。

さて、ではエリマキトカゲのCMを覚えている方、問題です。何のCMだったでしょうか?

…「自動車」と思い出せた方。いいセンいってます。では、どのメーカーの、何の車種だったでしょうか?

…答えは三菱自動車の「ミラージュ」。ほとんどの方が覚えていなかったのではないだろうか。「何十年も経てば忘れていても無理ない」という意見もあるだろうが、実は放映当時も、商品の想起率は非常に低かったという。

生活者の購買態度変容を表わすモデルに「AIDMA」がある。生活者に商品を認知させてから、購買させるまでをAttention(認知・注意喚起)→Interest(興味獲得)→Desire(購買欲求喚起)→Memory(記憶)→Action(購買喚起)の5段階に分けて考える。最初のAから最後のAまでの段階を、広告や広報、販売促進、人的販売などによって進めていくのがポイントだ。その中で、広告はAttentionかInterestあたりまでを担うと言われている。

エリマキトカゲ、Attentionは抜群だった。しかし、映像の動物と商品が結びついていなかったのが問題だった。「史上最も有名で、効果がなかったCM」などと評する口の悪い広告関係者もいる。「面白い!」とInterestを獲得できているじゃないかと思われるかもしれないが、Interestはあくまで商品に対する興味を獲得しなくてはならないのだ。

転じて、「ホワイト家」。これは秀逸な広告だといえるだろう。この広告がソフトバンクモバイルのものであると知らない人はいないだろう。そして、「ホワイト」が同社の「ホワイトプラン」を表わしていることも多くの人が分かっているはずだ。

この広告のポイントは、そうした認知・注目のレベルを超えて、何やらオトクな料金プランがあるらしいぞと、概ね内容を理解させるところまで、きっちりと「語っている」ことだろう。

白い犬がしゃべる。とりあえの興味喚起、つまりツカミはOKだ。そしてサービスのメリットをしっかり語っている。語りを聞かせる工夫もある。「ホワイト家」というだけあって、ちゃんと家族が登場する。が、お父さんが犬なだけでなく、長男が黒人だったりとどこか不思議な構成で関心を高めている。その家族が「どのようにメリットがあるのか」をストーリー仕立てでしっかり語り、さらに「誰にとって」メリットがあるのかをシリーズものにしてシーンを変えて伝えている。該当する視聴者はそのメリットを理解すれば、「ソフトバンクに変えちゃおうかな」と、Desireまで進むかもしれない。

こうして比較すると、「エリマキトカゲ」は「一発芸の芸人」のようなもので、それに対し「お父さん」は「ストーリーテラー」として機能しているのが分かる。

エリマキトカゲから20余年が経っている。今日の広告・CMはツカミだけでは許されない。Attentionが主たる機能とはいえ、しっかりと効果を期待されているのだ。今後も「白戸家の人々とお父さん」はしっかりと演じて、語ってくれるに違いない。

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