不満なら全額返金 サービス保証で講義充実 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

「グロービスの成功要因は何ですか?」と聞かれたら、必ず「サービス保証を導入したことです」と答えている。サービス保証とは、サービスに不満があれば、全額返金する制度のことだ。グロービスの場合には、受講者が出席回数など修了要件を満たした上で「内容に不満だ」と表明すれば、受講料1科目分の12万円強を全額返す制度のことを指す。

20年以上も前にグロービスをたった1人で立ち上げたときのことだ。グロービス経営大学院の前身となるスクールで僕は、なかなか教育の現場から離れられなかった。心配が絶えなかったからだ。

「ちゃんと講義が時間通り始まっているだろうか」「講師は受講生に満足いく教育ができているだろうか」「講義後、受講生はどういう表情を浮かべているか」

心配だから、ずっと現場にはりついていた。疲労は蓄積し、時間もとられた。すべての科目でアンケートを実施して、教育サービスの品質をチェックした。だが、アンケートに答えない人もいるし、途中で離脱する人もいた。そこで導入したのがサービス保証制度だった。

実際に導入してみると、いろいろなことがガラッと変わった。まず、僕が現場にいかなくてもよくなった。不満があったら顧客が教えてくれるからだ。講師も含めてスタッフ全員が受講生の声を聞き、質の高い教育を提供すべく、明確に意識し、行動し始めた。

僕が何も言わなくても講義の質は上がり、教材に問題があれば自然に改善されるようになった。サービス保証の導入により、教育の質へのコミットメントが上がり、常に改善・向上させる仕組みがビルトインされたのだ。

グロービス経営大学院の競争相手は、慶応義塾大学や一橋大学などだ。歴史と強力なブランドがあり、各界で活躍する卒業生のネットワークも幅広い。とてつもなく、手ごわい存在だ。それらの名門校に対抗するため、「学びの質では絶対に負けない」という強い意識を持って創業期より経営してきた。サービス保証は僕らの経営努力の象徴とも言えるものだ。

だが、サービス提供者としては、「保証など怖くてとてもできない」と思うのが自然だろう。事実、企業向け研修にこのサービス保証を導入しようと提案した時には、経営チーム全員が反対していた。悪用する人がいるかもしれないし、スクールの12万円強どころではなく、数百万、場合によっては3000万円超もの収入が吹き飛ぶ。彼らの懸念ももっともだ。

そこで、ハーバード・ビジネス・レビューの「サービス保証の力」という記事を読んでもらうことにした。全員に読んでもらい1週間後に迎えた会議では、全員が導入に理解を示してくれた。

彼らの心を動かした記事を読み解くと次のようになる。サービス保証に対する不安の原因となる「制度を悪用する人」は、実はほんのわずかしかいない。99.9%は善人だ。それなのに0.1%の悪人の存在を気にし過ぎると、99.9%の善人を疑うことと同じになる。大事なのは、顧客を疑うのでなく信じることだ。

次の点も重要だ。サービス保証には様々なメリットがある。最たるものはサービス提供側の気構えが大きく変わることだ。また、サービス保証することは、「自分たちはサービスの質に自信がある」と対外的に示すことになり、周囲からの評判が結果的に高まることになる。

こうしてグロービスは法人研修にサービス保証を導入した。現時点ではeラーニングを含めグロービスが提供するほぼ全ての教育サービスが保証されている。グロービスのお客の皆さまにお願いです。不満があったらぜひとも教えてください。喜んでサービス代金をお返ししますので。

※この記事は日経産業新聞で2016年10月28日に掲載されたものです。
日本経済新聞社の許諾の元、転載しています。

名言

PAGE
TOP