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具体的な業績管理のシステム: 評価は公平に

投稿日:2016/10/29更新日:2021/11/24

『グロービスMBAアカウンティング』から「具体的な業績管理のシステム」を紹介します。

従業員のモチベーションを高め、組織の生産性を上げる上で、適切な評価を行い、報いることは必須条件と言えます。管理会計で特に重視されるのは部門の業績評価ですが、実はこれは簡単ではありません。特に部門間で取引があったり、共有資源を利用している場合には、その取引の価格を適切に決めたり(社内振替価格)、共有資源の利用度を明確にする必要性が出てきます。これを100%正確に行うことは現実問題として不可能です。とは言え、ある程度皆が納得のいく形にしないと、組織の間に不公平感が生じ、協力マインドが薄れたり、長い目で見たときの生産性をそいでしまいます。100%の正確性は無理とは言え、組織の大多数が「これならまあ公平だよね」と思える条件をしっかり実現していく必要があるのです。

(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、ダイヤモンド社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

具体的な業績管理のシステム

効果的な業績評価を行うためには、しっかりとした管理会計のシステムを導入し、責任単位ごとに、収益、費用などのフロー項目(損益計算書項目)と、債権や在庫などのストック項目(貸借対照表項目)を割り当てていくことが必要である。また、使用している資産や資金の量に応じた社内金利や社内資本金を各部門に割り当てる方法も考えられる。

その理由としては、(1) ROEやROAの数値が高い会社が総合力のある会社と考えるのであれば、当然、各事業部においても損益計算書項目だけでなく、貸借対照表項目についても注意を払うようにさせるべきである、(2) 債権、在庫といった事業部の活動が直接影響を及ぼす貸借対照表の項目については、各事業部に権限と責任を持たせるほうが改善されやすい、(3) 貸借対照表項目を各事業部に割り当て、独立した1つの企業に近づけることによって、独立したグループとしての意識が強調され、業績管理も明確になる、などが考えられる。

このように、業績管理をより徹底するためには、各責任単位の売上高、原価を厳格に決定する損益計算ルールを明確化することに加え、責任単位別貸借対照表の作成ルールをも設定することが望ましい。

以下、業績管理システムに関連するトピックについて解説する。

社内金利制度

社内金利制度とは、事業部の業績評価を公正に行うために各事業部の資金の使用量に応じて金利を負担させる制度である。資金の使用量としては、事業部の総資産から借入金を除く流動負債を差し引いたものを利用する場合が多い。

適用する利率としては、

(1) 財務部の実効金利に合わせて決める
(2) 市中金利の動きに合わせて決める

などの方法があるが、(1)は財務部の運用の巧拙が事業部の業績に反映されてしまうためあまり好ましくなく、(2)を採用するのが一般的である。

社内振替価格

社内振替価格(Transfer Pricing)とは、社内の事業部門間の製品やサービスの取引価格のことである。これを移転価格、あるいは社内取引価格と言うこともある。

適切な業績評価を行うためには、事業部をそれぞれ独立会社と見なし、製造部門から販売部門への製品の移動についても取引価格を設定し、各部門をプロフィットセンターとして利益を計算していくことが望ましい。取引価格は各部門の利益に大きなインパクトを与え、必然的に業績評価や各部門の戦略策定にも大きな影響を及ぼすことになるので、その決定は慎重に行う必要がある。

具体的には、社内振替価格は、原価と市場価格の間で適当な価格に設定するのが一般的である。製造部門から販売部門への社内振替価格が原価に近く設定されれば販売部門が有利となり、販売部門の努力次第で利益が決まるようになる。一方、社内振替価格が市場価格に近く設定されれば製造部門のほうが利益を出しやすくなり、販売部門は自社内部から購入するメリットを感じなくなる。しかし、製造部門で一定の利益を獲得したうえで社内振替価格をベースに販売部門が努力をするようになるため、会社全体としてはより高い利益を獲得する可能性が出てくる。

事業部門間の取引については、社内だからという理由で、どんなに価格が高かろうが、あるいは品質が悪かろうが、無条件に取引を行うことは避けなくてはならない。取引価格についても事業部間の直接交渉に任せ、交渉がまとまらない場合には他社に販売したり、他社から仕入れたりすることができる制度を採用し、それぞれが独立した企業のように活動していくことが望ましい。

しかし一方では、社内間での取引価格設定の交渉がパイの奪い合いになれば、徒労感やむなしさを伴うことになる。事業部間の競争を促す半面、事業部の利益のため会社全体の利益が犠牲にされることも十分予想される。また、製造部門が市場ではなく営業からの情報のみで意思決定を行うようになる危険性もあるため、コミュニケーションを良くすることが必要である。

本社共通費

本社共通費とは、全社の費用の中で、ある特定のグループが使用したことが明確に特定できない費用(たとえば本社社屋の修理費)のことである。このような本社共通費については、これを配賦しない方法と配賦する方法の2つが考えられる。

配賦しない方法を採用するのは、直接的な関連が特定できない費用を何らかの基準で配賦すると、かえって業績評価を混乱させるおそれがあるからである。一方、配賦する方法を用いるのは、そうすることによって各事業部が最低限クリアすべきハードルを設定できるからである。

具体的な配賦方法としては、各部門が受けたサービスの程度によって配賦する方法と、各事業部の規模に応じて配賦する方法がある。前者の例としては、購買費用を注文件数によって配賦する方法が考えられ、後者の例としては、売上高、人員数、人件費、総経費などを基準として配賦する方法が考えられる。ただし、費用を細かく分けてそれぞれ別の基準で配賦するのは手間がかかるため、状況に応じて判断する必要がある。一般的には、まず各事業部との関連を極力見つけて配賦し、共通費の総額を減らしたうえで、残りを各事業部に配賦していくことが望ましい。

社内資本金制度

社内資本金制度とは、会社の資本金を各事業部に配賦する制度のことである。これは各事業部に貸借対照表も配賦することによって、損益だけでなく、投入した資本、あるいは資産に対する利益率も重視させることを目的としたものである。配賦された資本金をもとに、ROEなどで各事業部の業績評価を行うことも考えられるため、配賦される資本金は多いほどよいというわけではない。また、利益が出れば、内部留保として事業部の資本の額を増やすことも考えられる。

(本項担当執筆者: 西山茂)

次回は、『グロービスMBAアカウンティング』から「BSCとは何か」を紹介します。

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グロービス経営大学院 編著
ダイヤモンド社
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