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第11回 創造的な仮説を考えるためのコツ(2)新しい情報と組み合わせてみる

投稿日:2008/06/03更新日:2019/10/11

前回は、創造的な仮説を考えるためのコツとして「常識を疑う」「新しい情報と組み合わせてみる」「発想を途中で止めず、『So What?』を繰り返す」という3つのポイントを紹介し、1つめの「常識を疑う」について詳説しました。これに引き続き今回は、2つめの「新しい情報と組み合わせてみる」について解説します。

皆さんも直感的に感じられていることだと思いますが、1つの特定の事実から、他者には思いつきにくい意味合い、仮説を引き出すことは必ずしも容易ではありません。たとえば、「原油が高騰している」という事実から、「代替エネルギーのニーズが増すだろう」「代替エネルギーにかかわる資源が高騰するだろう」などの仮説を導くのは容易ですが、この程度は誰でも思いつく話であり、競争力に直ちにつながるわけではありません。では、どうすればいいのでしょうか?

実は、多くの独創は、「組み合わせ」から生まれています。それまで誰も意識しなかった組み合わせを作り、そこから「こんなことができるのではないか」という仮説を生み出すのです。たとえば、ロッテに「雪見だいふく」というアイスクリームがあります。アイスクリームも大福も、皆が知っている商品で、両方とも甘い菓子という特徴がありますが、ロッテがこの商品を生み出すまでは、これを組み合わせて商品化できるのではないかと考えた人はいませんでした(厳密には、「雪見だいふく」は突然に生まれたものではなく、前身となる商品があったのですが、商品変更の過程でユニークな組み合わせを見出したことに変わりはありません)。

あるいは、別の有名な事例に3Mの「ポスト・イット」があります。よく知られているように、「ポスト・イット」は、「接着力が弱い糊」という失敗商品と、栞という組み合わせから発想、商品化され、「剥がせる栞」として新しい市場を生み出しました。「糊」と「栞」という一見結びつかないようなものを結びつけ、「このような商品が成り立つのではないか」と考えたことが、大ヒットに結びついたのです。

こうした組み合わせの話をすると、多くの人は「なるほど」と思います。しかし、必ず次の疑問がでてくるものです。「組み合わせの価値はわかるが、組み合わせはそれこそ無限にありうる。無限の可能性の中から有用な組み合わせを見出すコツはあるのか?」ここでは、2つの方法論についてご紹介しましょう。

無作為に抽出し、結びつける

たとえばあなたが出版社の人間だったとします。新聞や雑誌の中から無作為に情報を抜き出し、あなたのビジネスに紐づけ、何か仮説が生まれないか考えてみましょう。たとえば、「海水浴」という単語が見つかりました。何かそこから仮説は生まれないでしょうか? たとえば、「海でプカプカ浮かびながら読める本の需要があるのではないか」「海の家に特化した雑誌が成り立つのではないか」「水際で日焼けをしている間にさっと読めて、しかも目に優しい冊子の需要があるのではないか」などが考えられそうです。

あるいは、「QBハウス」という単語が見つかったとします。この場合であれば、彼らのビジネスモデルに倣って、「校正やデザインのコストを極力小さくした書籍の需要があるのではないか」「10分で超低価格で読み捨てるような冊子のニーズがあるのではないか」「出版社もフランチャイズかできるのではないか」という仮説が出てくるかもしれません。あるいは彼らをパートナーと考え、「髪を切ってもらっている間に10分で読める(ブレークスルーは必要!)冊子を提供できないか」などの仮説が出てくるかもしれません。

この方法は、半ば強引に組み合わせを作る方法であり、頭の体操的な要素も大きいので、8回でご紹介したカルティベーションの方法論としても有効です。一般的には、組み合わせがユニークなものであるほど出てくる仮説もユニークになりますから、この手法を行う際には、新しい情報の入手先を、常日頃自分や会社の人間が接しないところに求めると有効でしょう。

成功事例や失敗事例と組み合わせる

ここでは事例と書きましたが、必ずしも目に見える商品である必要はなく、企業や施策、人物でもかまいません。また、現在進行形のものだけではなく、過去のものでもかまいません(歴史に学ぶことは重要です)。とにかく、成功/失敗した事柄を常日頃から意識してウォッチし、その要因を考え、ストックしておき、いざと言うときに自分のビジネスと組み合わせてみるのです。特にヒット商品や成功企業などは、情報が豊富ですし、示唆の山のようなものですから、これを積極的に活用しない手はありません。なお、ストックは頭の中だけで貯めようとすると限界がありすぐに忘れていってしまいますから、自分なりに「アイデアメモ」のようなものを作っておいてもいいでしょう。よく小説家などが「アイデア帳」を作るのと同じ感覚です。

具体例をみてみましょう。たとえば、ウォルマートと言う成功企業について考えてみます。自分の会社は小売業である必要はなく、メーカーでも金融でもかまいません。ウォルマートの成功要因にはさまざまなものがあります。一例を挙げれば、「地方のマーケットを狙い、そこでシェアと価格を実現する」「小さなマーケットを積み重ね、総量としてNo.1を実現する。徹底的に規模の経済を活かす」「パートタイマーに権限を委譲し、動機付ける。これにより、低賃金でよく働く労働力を確保する」等々。これを、自分のビジネスに応用可能かを考えていきます。銀行であれば、「ある職種の行員をパートタイム化し、人件費を劇的に変える」などの仮説が生まれるかもしれません。お気づきの方も多いと思いますが、成功企業やヒット商品を対象とする場合、いわゆる「ベンチマーク」と呼ばれる経営手法と近い作業を行なうことになります。

なお、ここでも、業界人が皆参考にするようなネタを持ってきても斬新な仮説は生まれません。ビジネスに限定せず領域を広げる(芸術や科学など)、あるいは国外(特に日本人があまり知らない地域)に事例を求めると有効でしょう。あるいは、情報は取りやすい一方で、皆が忘れがちな事例に着目するものいいでしょう。「温故知新」の精神は仮説構築にも有効なのです。

以下にいくつかの「成功(?)事例」を挙げるので、皆さんの事業と結びつけたときに、有用な仮説が出てこないか考えてみてください。

・かっぱえびせん
・女性専用車両
・キリスト教の教会

次回は、創造的な仮説を考えるためのコツの3つめ、「発想を途中で止めず、『So What? 』を繰り返す」について検討します。

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