“いつか来た道”への不安が広がる。それは「不況下でのインフレ」 

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日本がデフレからなかなか脱却できないでいる間に、世界ではインフレ懸念が強まっている。英エコノミスト誌の最新号のカバーワードは、“Inflation'sbackbutnotwhereyouthink”である。

日本では、いまだにデフレから脱却したとは言い切れない中で、小麦の値上げに伴う食料品の値上がり、ガソリンや軽油の値上がりに伴う輸送費の上昇、ジェット燃料の値上がりに伴う航空運賃の値上げが相次いでいる。この1〜3月の成長率は、輸出に支えられて予想外に強い数字となったが、これからの景気は下振れリスクが大きい。これまで金利引き上げを目標としてきた日銀も、景気が下降するリスクを認めるようになった。

しかし世界とりわけ新興国のインフレ率はすさまじいほどの勢いで上昇している。アルゼンチンは23%、ロシアが14%、中国、インド、インドネシア、サウジアラビアなどはこの1年間のインフレ率がだいたい8〜10%に達している。エコノミスト誌によれば、世界の人口の3分の2がふた桁(けた)インフレに苦しんでいるのだという。

先進国でインフレ期待が高まる

発展途上国が厳しいインフレに苦しんでいる一方で、先進国は望ましいインフレ率よりはかなり高いとはいえ、危機感を強めるほどではない。少なくとも今のところは。米国では4%弱、ユーロ圏でも3.3%ぐらいだ。しかし問題はこれによって、「インフレ期待が高まっていることだ」と同誌は懸念している。ただ先進国では、賃金がそれほど高くなっていないため、賃金と物価のスパイラル上昇という1970年代に先進国が経験したようなインフレにすぐになるということではなさそうだ。

しかし発展途上国では、ずいぶん絵柄が異なるようだ。賃金が上昇(例えばロシアでは30%近い)して、エネルギーと食品を除くいわゆるコア・インフレ率も加速しつつある。しかも余剰生産能力がないため、「インフレを抑制するような生産増加は期待できないのだ」と指摘している。

インフレは、カネとモノとのバランスが崩れて起こる。通貨が多すぎれば、通貨価値が下がり、その通貨で表されるモノの価格が上昇する。1970年代、現在の先進国はインフレ率が高まってきたとき、あまりにも金融をゆるめた状態だった。物価がさらに上昇し、それを追いかける形で賃金が上昇し、物価と賃金がスパイラル的にお互いを押し上げるというインフレ構造に陥ったのである。

中国製品による「デフレ圧力」は限界!?

そして現在、米国の金利は下げ止まったとはいえ、FFレートで2%と非常に低い水準にある(ちなみに日本の政策金利は0.5%だ)。そして米国の金利が低いと、自国通貨の対ドル相場を上昇させたくない国は、必然的に金利を低く抑えようとする。その結果、経済の状況から言えば本来は金利を引き上げるべきところで、金利が低く抑えられ、インフレが野に放たれることになるという。

これまで世界がインフレに悩まされてこなかったのは、カネ余りの一方で、中国から安い製品がどんどん輸出されることで、先進国のインフレ圧力が削がれてきたからだ。しかしその中国も、高いインフレに悩まされている。しかも通貨は対ドルで徐々に切り上がっているから、輸出価格を引き上げざるをえなくなる。つまり中国製品による「デフレ圧力」がもはや効かなくなっているのである。

カネ余り現象が続く一方で、中国のデフレ圧力が消えていくとすれば、先進国はこれからまさにインフレ圧力にさらされるということだ。不況下のインフレといういつか来た道が、どうやらわれわれの目の前に広がっている。

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