ハーバードよりもBリーグ開幕戦 

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9月下旬に米ハーバード大学経営大学院で開かれていた卒業25周年同窓会を、僕は直前にキャンセルした。理由は、日本のバスケットボール男子の新リーグ、Bリーグの3つの開幕戦を観戦・応援するためだ。

ハーバードの同窓会は5年ごとに開催される。僕は5周年から20周年まで4回開かれた同窓会を欠かしたことがなかった。3泊4日ほどの日程で、ボストンに集う仲間と会えるし、教授陣による研究結果の発表も聞ける。仲間に会えて学びが豊富で、本当に有意義だからだ。

だが今回は「もっと重要なことがあるのではないか」と考え始めた。僕がオーナーとなった茨城ロボッツが、アウェーでリーグ開幕戦を迎えるのだ。チームの初陣を、現地で応援したいという気持ちが高まってきたからだ。その2日前に開催されるBリーグ全体の開幕戦も、歴史的瞬間として見届けたかった。悩んだ末にハーバードよりもBリーグ開幕戦を選んだ。

Bリーグの開幕戦はアルバルク東京対琉球ゴールデンキングス。Bリーグに統合する前の2リーグ、実業団主体のNBLと完全プロのTKbjリーグとの頂上決戦だ。発光ダイオード(LED)を敷き詰めたコートは鮮やかだった。観客1人1人に配ったリストバンドは音楽に合わせて色が変わり、会場に一体感が広がった。

試合が始まった。目の前で巨大な選手がぶつかり合う。野球よりも全力疾走の場面は圧倒的に多く、サッカーより得点機会が多いので常に盛り上がる。ハーフタイムにはショーがあり、テクニカルタイムアウトの度にチアリーダーが優雅に踊る。1万人近い観客が盛り上がった。

2日後に我が茨城ロボッツが青森ワッツとBリーグ初戦を迎えた。場所は、青森県五所川原市。津軽三味線の特徴的な応援リズムが響き渡っていた。ロボッツの応援は10人いるかいないかの完全なアウェー状態だったが、初戦を見事勝利で飾ることができた。翌日は残念ながら敗れ、1勝1敗となった。

翌週10月1日は岩手ビッグブルズとの水戸でのホーム開幕戦だ。ホーム会場には超満員の2000人以上が集まり、チームカラーの青に染まった。ホームの熱い応援が後押ししたのか、幸い勝利で飾ることができた。

試合終了後、僕はコートに降り立ち、整列する選手たちの前に立ち、観客に向かって2つのことをお願いした。1つがアリーナに何回も足を運んでほしいということ。もう1つはSNS(交流サイト)を活用して今日の感動を拡散してほしいということだ。コートの真ん中で熱を込めて訴えた。開幕の感動を継続し、定着できるかが勝負だ。シーズンは始まったばかりだ。

翌日も勝ち、2連勝と幸先のよいスタートになった。連勝したのは実に2年ぶり。昨年最下位のチームとしては画期的な結果だった。

「同窓会を休む」と伝えた友達から「皆が寂しがるから、休む理由を教えて」と聞かれた。「ふるさとのプロバスケットボールチームのオーナーになったから、最初の開幕戦を見守りたいんだ」と伝えた。

プロバスケットボールチームのオーナーと言えば、米マイクロソフトの前最高経営責任者(CEO)、スティーブ・バルマー氏を思い出す。彼がCEOを退任した後に選んだ職業が、プロバスケットボールチームのオーナーだ。2014年に米プロバスケットボール協会(NBA)のロサンゼルス・クリッパーズを史上最高の20億ドルで買った。米国人にとってバスケットボールチームのオーナーほど栄誉なことはないのだ。

欠席の理由を聞いた友人は「それはグッドだね」と返信してくれた。NBAとBリーグとでは現時点では天と地ほどの差があるかもしれない。だが、オーナーの熱意は変わらない。ハーバードの友達も欠席理由を理解してくれたと思う。Go Go Robots!


※この記事は日経産業新聞で2016年10月7日に掲載されたものです。
日本経済新聞社の許諾の元、転載しています。

京都大学工学部卒、ハーバード大学経営大学院修士課程修了(MBA)。住友商事株式会社を経て、1992年株式会社グロービス設立。1996年グロービス・キャピタル、1999年 エイパックス・グロービス・パートナーズ(現グロービス・キャピタル・パートナーズ)設立。2006年4月、グロービス経営大学院を開学。学長に就任する。若手起業家が集うYEO(Young Entrepreneur's Organization 現EO)日本初代会長、YEOアジア初代代表、世界経済フォーラム(WEF)が選んだNew Asian Leaders日本代表、米国ハーバード大学経営大学院アルムナイ・ボード(卒業生理事)等を歴任。現在、経済同友会幹事等を務める。2008年に日本版ダボス会議である「G1サミット」を創設。2011年3月大震災後に、復興支援プロジェクトKIBOWを立ち上げ、翌年一般財団法人KIBOWを組成し、理事長を務める。2013年6月より公益財団法人日本棋院理事。いばらき大使、水戸大使。著書に、『創造と変革の志士たちへ』(PHP研究所)、『吾人(ごじん)の任務』 (東洋経済新報社)、『人生の座標軸』(講談社)等がある。

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