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明智光秀の10日天下の理由とは?

投稿日:2016/09/27更新日:2019/04/09

今夏の大ヒット映画といえば「シン・ゴジラ」でしょう。その中で、何とかゴジラは食い止められると思っている政府に対し、主人公が先の大戦を例に挙げて楽観視するのは危険だと訴えるシーンがありました。過去に経験のない事態に直面しても、人間はなぜか楽観的に考える癖があるようです。

この希望的観測と根拠のない楽観は、現代のビジネスでもよく見られます。業績が右肩下がりになっていて、しかも的確な手をうってもいないのに、「まあ、そのうち業績も好転するさ」となぜか楽観的に考えてしまうというケースです。欧米では「No Hockey Stick」(注:ホッケースティックは、右肩下がりの状況が、スティックの先端のように急に右肩上がりになることの比喩)などと言って、状況が勝手に好転することはないなどと戒めたりもしますが、洋の東西を問わず、そう考える例は多いようです。

歴史上にもそうした例は数えきれない位あるのですが、今回はその事例として、明智光秀を取り上げます。よく知られるように光秀は、1582年6月2日に本能寺の変で謀反を起こし、織田信長を自殺に追い込みました。光秀謀反の理由はいまだに様々なものがあり、特定はされていません。一時の激情説もありますが、信長を討ち、羽柴(豊臣)秀吉を押さえれば本当に天下を取れると考えていた節もあります。今回は、この後者の説で先の議論を進めます。

秀吉も倒す上で大事だったのは、山崎の地で素早く陣取りすることでした。山崎は大阪と京を結ぶ重要拠点だったからです。ここに素早く味方の兵を集めれば、秀吉軍といい勝負ができる可能性は十分にありました。

しかし、光秀は比較的ゆっくりした行動を取ります。5日に信長の城である安土城に入り、8日には自分の城である大津の坂本城に戻ります。京に入ったのは9日でした。この時、公卿たちにもてなされています。

その間に、秀吉は遠征中だった中国地方から3万の大軍を引き連れて常識外れの帰還をします。世にいう「中国大返し」です。光秀が慌てて山崎に陣を敷こうとしましたが手遅れでした。味方につくはずの筒井順慶、細川忠興といった、縁戚関係にある盟友たちも日和見を決め、光秀にはつきませんでした。こうして光秀は山崎のいわゆる「天王山」で大敗を喫し、最終的には落ち武者に狩られてしまったのです。

光秀の誤算は、秀吉のあまりに素早い行動と、味方に裏切られた点にあります。しかし、味方に裏切られたという点に関して言えば、これは戦国時代では日常的なことであり、見込みが甘かったとしか言いようがありません。

それよりも問題は、秀吉の力を見くびったことでしょう。確かに破天荒な大返しではありましたが、それまでの秀吉の活躍を考えると、全く予想できないことではありません。

ある有名な経営者は、「良い経営者と言うものは、皆の前ではポジティブに振る舞いながらも、裏では最悪の事態も想定し、何かしらの準備をしておくもの」と言われています。本能寺の変後の光秀は、鬼神とも言われた信長を討ったことに油断し、その後の備えが十分ではなかったことが伺えます。

人間の抜きがたい性向に「楽観バイアス」があります。文字通り、現実以上に将来を楽観的に見てしまう思考の歪みです。このバイアスは、常にマイナスに働くわけではありませんし、場合によっては人びとを前向きにしますが、統計的に見れば概ね良くない結果をもたらすことが示唆されています。

怖いのは、楽観バイアスはマネジメントチームの間に広がると、それが増幅されて、拡大再生産していくことです。先の大戦の軍部内の楽観バイアスは、その傾向が強かったと言えるでしょう。

そうした場合に限らず、本能寺の変後の光秀のように、大きな障壁を一つ乗り越えると、この楽観バイアスが増長する傾向もあるようです。冷静に見ればまだ小さな一歩を踏み出したに過ぎなかったのに、周りがみな自分になびくように錯覚してしまうのです。

リーダーがある程度ポジティブな態度を取るのは必要です。しかし、どれだけその背景に根拠や、最悪の場合のシミュレーションがあるかが、組織の命運を分けてしまうことは意識したいものです。特に、全く想定していなかったライバルが自業界を完全に破壊してしまう可能性もある昨今、それを過小評価するのは禁物と言えるでしょう。

皆さんの組織は、根拠のない楽観に踊らされていませんか?ライバルや、潜在的な脅威を過小評価していませんか?ぜひ再確認してください。

 

今回の学びは以下のようになるでしょう。

・なまじ最初に成功した時ほど根拠のない楽観が生まれやすい
・根拠のない楽観は、それが上層部で共有されると、増幅されやすい
・最悪のシミュレーションをしっかり行うリーダーは決して多くはない

 

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