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業種の特殊性: ビジネスモデルやベンチマークすべき企業を知る

投稿日:2016/09/17更新日:2021/11/24

『グロービスMBAアカウンティング』から「業種の特殊性」を紹介します。

財務諸表の数値は、単に個別企業の「健康状態」を示すだけではなく、そもそもその企業がどのような業界に属しているか、あるいはどのようなビジネスモデルをとっているかを知るヒントにもなります。ポイントは、ある特定の指標や数字にのみ注目するのではなく、全体をバランス良く見ることです。たとえば、設備投資額が大きく、借入れ比率も高く、かつ毎年の売上高が安定しているなら、公的性格を持つ設備産業(例:ガス会社)ではないかと推定できるなどです。こうした常識を持っておくと、その業種の一般的な傾向と比較することで、その企業の現状をより正確に把握することもできるのです。

(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、ダイヤモンド社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

業種の特殊性

下記の財務情報はある有名企業のものである。それがどの企業のものなのかを、その理由とともに述べなさい。

1. ゴールドクレスト(マンション販売)
2. イトーヨカー堂(スーパー)
3. 武田薬品工業(医薬品の製造販売)
4. トレンドマイクロ(コンピュータウイルス対策製品の開発・販売等)
5. オリエンタルランド(テーマパーク、複合型商業施設の運営等)
6. リコー(オフィス周辺機器の製造販売・サポート等)

この企業の財務諸表は日本基準で作成されたものである。特徴としては、以下の点が挙げられる。

・売上高総利益率が圧倒的に高い
売上高総利益率が81.4%と圧倒的に高く、原価があまりかかっていない。

・販管費が多い
マーケティングや研究開発にコストがかかっていることと、売上原価の低さを合わせて考えると、従業員の多くが本社部門、販売部門、研究開発部門などに集中しており、人件費の多くが販管費として扱われているものと推測される。

・流動資産が圧倒的に多く、自己資本比率も比較的高い
自己資本比率が54.5%と比較的高く、資金的に十分な余裕がある。

・有形固定資産、たな卸資産がほとんどない
有形固定資産が2.1%と少なく、設備投資をほとんど行っていない。また、たな卸資産も0.4%であり、原材料もほとんどいらず、生産コストがかからない業種と考えられる。そのため、流動比率や当座比率が高く、安全性が高い企業となっている。

・総資産回転率が低い
これは業種に固有の特徴、もしくは純資産が多く、資産としては現金預金、有価証券、投資その他の資産が多いことから考えて、純粋にキャッシュは豊富だが本業に関わる有効な投資先が少ない、もしくは増資あるいは過去からの利益で調達した資金を資金運用と関係会社への投融資に回して積極的な財務戦略を行ったために、本業のために使われている資産が少ない結果と考えられる。

以上、有形固定資産が少なく、総資産回転率が圧倒的に低いこと、たな卸資産がほとんどないことから考えて、あまり設備投資の必要がなく、外部からの原材料などの購入も少なく、製品を一度開発すると、その再生産にはほとんどコストのかからないような業態であることが推測できる。ROEとROAという総合的な収益性を表す指標がきわめて高く、また安全性の比率も圧倒的に高くて財務的な安定性を表していることから、この会社は優良企業であると言える。

この会社は、あまり原価がかかっておらす、大規模な生産設備も不要ということから、一度製品が確立されると、そのコピーを安く大量に販売できるような業態と考えられる。以上から、この会社はソフトウエア会社であるトレンドマイクロと推測できる。

(本項担当執筆者: グロービス経営大学院教員 青山剛)

次回は、『グロービスMBAアカウンティング』から「立場による『良い会社』の違い」を紹介します。
 

 

『グロービスMBAアカウンティング【改訂3版】』 
グロービス経営大学院 編著
ダイヤモンド社
2,800円(税込3,024円)

 

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