ライザップと富士急ハイランドに学ぶモチベーションを刺激するプロモーション 

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消費者の態度変容モデル「AIDMA」は、多くの方がご存知だろう。その歴史は古く、1920年代にサミュエル・ローランド・ホールが著書で提唱した。一般的なマーケティングの教科書的には、Attention(注意)→Interest(関心)→Desire(欲求)→Memory(記憶)→Action(行動)という内容で記されているが、M=MemoryをMotive(動機付け)としている場合もある。Memoryはターゲットの記憶に残るような働きかけをすることを意味し、Motiveの場合はもう一歩踏み込んで記憶に残しつつ、次のAction(購買行動)に繋がるような動機付けの仕掛けを行うことを意味している。最近、そのM=Motiveを態度変容モデルのかなり前の段階に置いてプロモーション設計をしている例が散見される。そのうち2つを取り上げてみよう。

新郎新婦でライザップ!

ウェディングプロデュース大手のテイクアンドキヴ・ニーズがRIZAPと業務提携し、挙式を控える新郎新婦向けの新商品を発売したという。メインは年々増加する「衣装にこだわる新郎」向けの「衣装を着こなすためのボディーメイクサービス」だが、新婦と二人で通うことも可能と言う。

人生の晴れ舞台に二人揃って「大変身」して登場するという姿を想像すれば、やる気も沸き起こるはずだ。契約してトレーニングが始まれば、苦しくても片方だけが脱落することは許されない。「二人で頑張って続けよう!」とモチベーションも継続する。苦しさに二人で耐え抜けば、披露宴で出席者から驚きと賛辞の嵐が待っているという期待も大きなモチベーションになるだろう。コストを徹底セーブするジミ婚派ならともかく、ただでさえ色々とお金がかかっている結婚時期、二人一緒にキレイになれるなら!と多少の追加コストぐらいは気にならなくなっているはずだ。素晴らしいターゲティングと商品設計だと言えよう。

富士急ハイランド「テンテコマイ」もモチベーション喚起型の態度変容設計?

ディズニーリゾート、USJの絶対的2強状態のテーマパーク(遊園地含む)業界において、富士急ハイランドは独創的な絶叫マシンでコアなファンを抱えてニッチャーとしての揺るぎないポジションを確立している。その同社が5年間の沈黙を破って新たに投入した絶叫マシンが、「テンテコマイ」だ。従来の富士急ハイランド絶叫マシンは、最高速度や落下確度などその他の絶叫要素でいくつものギネス記録を獲得している。しかし、それらはあくまで、荒ぶるマシンに乗り込んで耐え抜く「受動的」なアトラクションだ。

それに対し、今回の「テンテコマイ」は、かつてない「能動的」なアトラクションである。朝日新聞デジタルの記事 によると、「地上約32mの高さを最高時速40キロで旋回。座席の左右にあるレバーを操作することで、両翼が上下に傾いてライドが振り子のように動き、その振れ幅が大きくなると横回転を始める」という。同記事では自らも体験したという富士急の社長が、「乗られた方が、頭が真下になる恐怖感に打ち勝って、やる気を出せるかどうか。自由に回転できるようになれたら、様々な楽しみ方ができて、奥が深い」とコメントしている。

このコメントは上手い。丁寧な言い方ではあるが、実質的には絶叫マシンマニアに対する「挑戦」である。「楽しめるかどうかはお前が恐怖に打ち勝てるか次第だ。やってみろ!」と。「自ら操る絶叫マシン」という今までにないコンセプトと、この挑戦を煽るコメントによってメディアがこぞって取材。「難しい」「うまく操れない」とコメントを連発したり、記事にしたりした。それを見たり読んだりして「それなら俺が征服してやろう!」と富士急ハイランドに向かった人も多かったようだ。つまり、メディアも消費者も従来にないアトラクション(=製品:Product)でうまく注目させられ、加えて挑戦的なPR(=広報:Promotion)でモチベートされたのだ。

モチベーションの継続とリピート、そして達成感の享受

「テンテコマイ」は本当に操縦が難しいようで、だからこそ、うまくできるまで何度も乗る。そして自由に操れるようになるとその楽しさからさらに何度もリピートするようだ。つまり、ここが「テンテコマイ」のアトラクション(製品)としての真骨頂だ。ただ乗るだけの受動的な絶叫マシンはすぐ飽きる。よほどの絶叫マシン好きでなければ富士急ハイランドに何度もリピートして乗ったりしないが、「テンテコマイ」はリピート狙いのアトラクションなのだ。

そして、上手く操れるようになると達成感を味わう。だが、その達成感を一人で享受しているだけではつまらない。人に伝えて「スゲー」と賛辞されたいと思う。マズローの欲求5段階説における「承認欲求」である。そのため、自分の搭乗体験をSNSやYouTubeなどの動画サイトに投稿して拡散を図る。それを見た人が、「面白そう!自分もやってみよう!」と思って、体験(購入=Action)するのは、態度変容モデルのAISAS(Attention・Interest・Search=検索・Action・Share=購買体験の拡散)でも説明できる。

テンテコマイとライザップに見る態度変容モデル

テンテコマイの場合、ニュースに接した段階ですぐに「やる気=Motivation」に火が付くような広報によって、メディアでの紹介のされ方もうまくコントロールできている。また、メディアを見た消費者もモチベーションが一気に上がり、すぐに体験。成果が出るまで悔しさやゴールイメージを描いてリピート搭乗し、成功して達成感を味わう。それをその過程と共にWebでシェアする。

この流れは最初に紹介したライザップの場合も同じだろう。顧客は晴れの日の様子をシェアする時には、あえて「二人でライザップで頑張っちゃいました!」とコメントをするのではないだろうか。なぜならば、新婚の二人にはライザップでの苦しいトレーニングの果てに辿り着いた達成感があり、その結果だけを披露するのではなく、苦労した過程も「大変だったでしょう!」「頑張ったね!」と賛辞されたいはずだ。承認欲求の充足である。

ちょっと長くなるが、下記のような流れになっているのだろう。
A(Attention:注目する)→M(Motivation:すぐにやる気に火がつく)→A(Action:購入または契約・体験する)→M&R(Motivation:やる気の継続 & Repeat:再契約・再購入、またはその継続)→A(Achievement:達成感の享受)→S(Share:SNS等での拡散)

消費は「モノからコトへ」と言われるようになって久しい。その「コト」に踏み切らせるにはモチベーションが必要だ。その一つとして活用できるのが、「Webを通じた他人からの賛辞(いいね!)による承認欲求の充足」である。このモデルが適用できるサービスや、このモデルで上手く消費者を乗せていく広報や広告・販促の組み合わせなどもあるはずだ。ぜひ、読者のみなさんのビジネスで活用できないか、一度お考えいただきたい。
 

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