本当に環境に優しいの?バイオエタノール神話 

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穀物の値上がりが激しい。すでに日本にも波及して、さまざまな加工食品が値上げされている。2006年7月以降で見ると、小麦や大豆、トウモロコシの価格はほぼ倍になった。

倍になった理由はいくつかある。一つはオーストラリアの干ばつで、小麦の生産が大打撃を受けている。そしてもっと重要なのは、2007年1月にブッシュ大統領が発表したガソリン節約のためにバイオエタノールの生産を増やすという方針を発表したことだ。

これによってバイオエタノールの原料としてトウモロコシに対する需要が高まり、トウモロコシの相場が上がった。米国の農家はトウモロコシの作付けを増やす一方で、大豆の作付けを減らした。この結果、大豆が値上がりすることになったのだ。

しかしバイオエタノールは本当に環境にやさしいグリーンな燃料なのか。
米タイム誌(2007年4月7日号)がこの問題をカバーストーリーとして取り上げている。

この記事の中に、いくつか面白いことが指摘されている。一つは「バイオ燃料のうちサトウキビから作るエタノールだけが、作るために消費されるエネルギーよりも多くのエネルギーを作り出すことができる。ほかのバイオ燃料は、作るために排出される炭酸ガスを計算に入れると、差し引き炭酸ガス排出量のほうが多い」のだという。

ブラジル熱帯雨林の伐採を促進

さらに米タイム誌は、「米国農家の動きとブラジル熱帯雨林の伐採」の関係を指摘している。

「現在、収穫されたトウモロコシの5分の1が100以上もあるバイオエタノール工場に運び込まれている。このためトウモロコシ相場は史上最高値を付けた。そして収入増を当て込んで、大豆農家がトウモロコシへ切り替える動きが加速され、結果的に大豆の相場が上がる。大豆の需要は、米国以外のところに大豆を求めるようになり、その結果、ブラジルの農家は牧場にしていたところで大豆の作付けを行う。追い出された家畜を育てるために、アマゾンの熱帯雨林が切り開かれ、炭酸ガスを放出する」

もっと衝撃的なことも指摘されている。

「大豆とトウモロコシの生産では米国が世界をリードしているが、その両方を全部燃料にしたとしても、現在使われているガソリンを約20%しか減らすことにならない」(米タイム誌)

英エコノミスト誌の最新号(2008年4月19日号)は食料危機を特集している。その中で、「現在、約10億人の人々がいわゆる貧困ライン(1日1ドル以下で生活している人々)の下にいる。しかし食料の価格が20%上昇すれば、せっかく生活水準を上昇させてきた人々のうち約1億人がまた貧困ライン以下の生活に戻ることを余儀なくされる」と同誌は指摘している。

各国で米や小麦の輸出規制

こうなってくると、自国で穀物を生産している国は、穀物相場の高騰から国民を守るために輸出規制を行うことになる。とりわけその動きはコメをめぐって顕著に出ている。カンボジアがコメの輸出を2カ月禁止、インドは長粒種以外のコメの輸出を禁止した。インドネシアも輸出を規制する方針と伝えられたほか、エジプトは小麦の値上がりで消費者のコメに対する需要が増えたことから、4月から10月までコメの輸出を禁止した。さらにアルゼンチンは、小麦の輸出手続きの停止期間を延長し、ウクライナは4月に小麦の出荷を停止した。カザフスタンも小麦の輸出を9月1日まで停止している。

人間とクルマが「食糧を奪い合うという構図になる」という指摘はつとになされていたが、こうも早くその効果が現れるとは想像できなかった。日本のように食糧自給率40%という国は、果たしてこれからどうなっていくのか、不安になるのは筆者だけではあるまい。

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