分析で大切なのは関係性を突き詰めること 

ビジネスパーソンと分析力
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グロービスMBAキーワード 図解 基本ビジネス分析ツール50』の刊行を記念して、コンサルティングファームで数多くの分析を行ってきたグロービス経営大学院の教員に、分析を行うときの注意点や便利な分析ツールを聞くシリーズ。最終回は溜田信さんです。(聞き手: 嶋田毅)

――分析はビジネスパーソンにとってどのような意味を持ちますか?

溜田: 分析力をどう定義するかにもよりますが、まずは、分解、分類するということが分析のベースです。たとえば、これは成功するパターン、これは失敗するパターンということが分かれば、それを活用して経営資源を然るべき分野に投入することができます。そうすると成功する確率が上がる。私は、極論すれば分析とは経営そのものだと思います。

――『グロービスMBAキーワード 図解 基本ビジネス分析ツール50』の中で取り上げた分析ツールで、ご自身で用いられて、実際に役に立つと思われるツールはどれですか?

溜田: 分析のもう1つの定番パターンとして関係性を見るということがあるわけですが、No.9の回帰分析はやはり役に立ちますね。ビジネスというのは、最終的には売上げを上げるとかシェアを上げるとか、結果を出す必要があります。いろいろな施策をうったときに、結果との関連性の強いものが何かが分かるというのが、回帰分析の意義です。たとえばセールスパーソンの数を増やしたことと、広告をうったことと、商品の色を変えたことのどちらがより売上げ増に効いたのかなどが分かるわけです。その意味で、回帰分析や、その一歩手前の相関分析などは本当によく行います。

 

――関係性を見ることが大事だと。

溜田: 回帰分析に限らず、2軸でものを見て、2つの因子、変数の関係を見るということは本当によく行います。その際、コツとして最初から回帰線を引くということはしないですね。まずは実際の生データを見て、その変数同士の関係を押さえます。回帰線を引いたりするのは人に説明するために見せる時ですね。

――他に意識されていることはありますか?

溜田: 最近はビッグデータの時代で、コンピュータがいろいろな計算をしてくれます。そして、あたかも2つの因子の間に因果があるような答えを出してくるのですが、本当にその因子の間に因果関係があるのかを考え抜くということをとても重要視しています。

コンピュータが、この要素とこの要素は関連性が高くて、相関が高いという結果を出すことはこれからますます増えてくるでしょう。しかし、それを人間として理解できるかということが非常に大事です。自分が責任や納得感を持って行動を起こせるかということに深くつながってくるからです。

―― 一般の方が分析力を上げる上で何を意識されるとよいでしょうか?

溜田: まず、いろいろな切り方、切り口を持つことですね。可能であれば、今までなかった切り方で分解したり、新しい切り口で関係性を見てみたりする。あるいは、そもそもの比較対象を変えてそれまで皆が考えなかった意味合いを出すといった意識を持つことが大事だと思います。

また、日々の思考トレーニングとしては、自分とは関係ない分野、知らない世界のものにも目を向けると分析力は上がりますね。抽象度を高めて自分の業界に当てはめるということです。初学者の人であれば、世の中に起きていることを分析してみるといいと思います。たとえば、自社の業界とは関係ない、ある商品が売れている理由などを考えてみる。そうしておくと、いざ自分の業界で分析する際にも役に立ちます。

――いわゆる定番の分析ツールやフレームワークを知っておくことはどのような効果がありますか?たとえば戦略立案であれば市場環境分析やリソース分析といった定番フレームワークなど。

溜田: 定番の分析ツールを知っていることのメリットとして、悩みが減るということがありますね。毎回ゼロベースで考えるのは非効率ですから。定番のツールを押さえた上で、プラスで独自の視点や視座、切り方や切り口、自分の前提を持つと非常に有効ですし、他者には出せない意味合いを引き出すことも可能です。

――いついかなる時にも有効なツールはないがゆえに、その限界などもしっかり押さえておくことは大事ですね。加えて、独自の付加価値を付けられるか考えることが大事だと。

溜田: 人間は、思い込みが強い動物です。いったん、ある分析でうまくいったら、どうしてもそれに固執してしまう。限界や、そのツールが生きる文脈を知ること、また、前回よりもさらに上を目指すことが非常に大切です。

――なるほど。ただ、それは人間の思考パターンへの挑戦でもありますね。

溜田: そうです。人間は過去の思考パターンに固執します。定番の分析ツールの効用は理解しながらも、その限界を知り、新しいチャレンジをすることが非常に重要だと思います。
 

『グロービスMBAキーワード 図解 基本ビジネス分析ツール50』
グロービス 著/嶋田毅 執筆
ダイヤモンド社
1,500(税込1,620円)

 

東京大学工学部応用物理学科卒業後、日本アイ・ビー・エムに入社。銀行オンラインシステム担当のシステムズエンジニア&営業マネージャを経験。その後、外資系SIベンダー、マイクロソフトにおけるソリューションビジネスの経験を経て、戦略系コンサルティングファームA.T.カーニーに入社。メーカーの事業戦略・SIベンダーの営業戦略・組織改革、金融機関のIT戦略等、IT知識を持つ戦略コンサルティングプロジェクトに従事した経験を持つ。グロービスにおいては、マーケティングならびに思考系の講師を担当している。

東京大学理学部卒、同大学院理学系研究科修士課程修了。戦略系コンサルティングファーム、外資系メーカーを経てグロービスに入社。累計150万部を超えるベストセラー「グロービスMBAシリーズ」の著者、プロデューサーも務める。著書に『ビジネス仮説力の磨き方』『グロービスMBAビジネス・ライティング』『グロービスMBAキーワード
図解 基本フレームワーク50』(以上ダイヤモンド社)、『[実況]ロジカルシンキング教室』『[実況』アカウンティング教室』『競争優位としての経営理念』(以上PHP研究所)、『利益志向』(東洋経済新報社)、『ロジカルシンキングの落とし穴』『バイアス』『KSFとは』(以上グロービス電子出版)、共著書に『グロービスMBAマネジメント・ブック』『グロービスMBAマネジメント・ブックⅡ』『MBA定量分析と意思決定』『グロービスMBA事業開発マネジメント』『グロービスMBAビジネスプラン』『ストーリーで学ぶマーケティング戦略の基本』(以上ダイヤモンド社)など。その他にも多数の共著書、共訳書がある。
グロービス経営大学院や企業研修において経営戦略、マーケティング、ビジネスプラン、管理会計、自社課題(アクションラーニング)などの講師を務める。グロービスのナレッジライブラリ「GLOBIS知見録」に定期的にコラムを連載するとともに、さまざまなテーマで講演なども行っている。

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