分析力を高めるコツは定番ツールを理解してオリジナル分析をすること 

ビジネスパーソンと分析力
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グロービスMBAキーワード 図解 基本ビジネス分析ツール50』の刊行を記念し、コンサルティングファームで数多くの分析を行ってきた、グロービス経営大学院の教員(山口英彦、君島朋子、溜田信)に、分析を行うときの注意点や便利な分析ツールなどを聞いてみました。第1回は山口英彦さんです。(聞き手: 嶋田毅)

――まず分析はビジネスパーソンにとってどのような意味がありますか?

山口: 私にとって分析は、相手を動かすツールという意味合いが強いです。分析にも大きく2種類あると思います。

1つは、「たぶんこうだろう」と皆が思っていることを確認するような分析です。これはこれで重要です。ただ、それだけでは付加価値が付かない。もう1つ重要なのは、皆が「たぶんこうだろう」と思っていることを覆すような分析です。たとえば、皆が儲かっていると思っていた製品が実は儲かっていなかったといった分析です。これができると、相手に対してかなりインパクトを与えることができます。多くの人は、前者にこだわり過ぎて空回りしている印象が強いですね。会社の常識を再確認するだけではあまり意味はありません。

――皆の思い込みを覆すような分析をするのは難しいですよね。

山口: もちろんそうです。ただ、それは例えばプレゼン資料が仮に30枚あるとして、すべてそうである必要はない。現実的に、すべてを新しい発見で埋めることはできませんから。30枚のスライドがあれば、そのうち2枚か3枚、新しい発見があると、人々の行動を大きく変えられる可能性は高まります。

――『グロービスMBAキーワード 図解 基本ビジネス分析ツール50』の中で、特に思い入れのある分析ツールというとどれでしょうか?

山口: どれか1つというと難しいですが、プロジェクトに合わせていくつかを組み合わせるという感じですね。たとえば営業改革のプロジェクトなどをよくやりましたが、そのケースであれば、No.29のファネル分析、No.13のKBF分析、No.4の重要度/緊急度マトリクスの分析などはだいたいやりますね。

たとえばファネル分析は営業やマーケティングの効果を見たりプロセス改善をする上で定番の分析手法です。対前年度比や競合との比較を行ったりすることで、どこに問題があり、テコ入れすべきかという示唆を得ることができます。「このプロセス」が弱いな、などという感じです。

KBF分析はまさにクライアントに「Wow!」と言ってもらえることが多い分析ですね。クライアントが思っているKBF(Key Buying Factors)と、その顧客にヒアリングして特定したKBFは実際には異なっていることが多い。自分たちが無駄な訴求をしていた、顧客は別のものを求めているという事実は、かなりインパクトを持ちます。


重要度/緊急度マトリクスも、実際にこれで分析をしてみると、多くの営業担当者が重要な業務、例えば顧客分析や提案書作成などに時間を使えていないことがわかります。どうしても目の前のルーティーンワークに時間を使っているんですね。それを白日のもとにさらすことで、本来のあるべき動き方に近づかなくてはという思いを持ってもらうことができます。オーソドックスな分析手法ですが、効果は高いものがあります。

――分析力を高めるコツはどのようなものでしょうか?

山口: まずは仮説思考ですね。特に意外性を出すにはやはり最初の仮説が重要です。そうした筋の良い仮説を見つける貪欲さが重要と思います。中には、数字を眺めているだけでもそのような仮説を出せる天才的な人がいますが、それは例外です。自分の場合も、やはり現場の感触を知ることで、「たぶんこうだろうな」「これは違うんじゃないか」という肌感覚を持つことを重視しています。

さらに言えば、多くの人の場合、検証すべき仮説が緩いのが問題かなと思います。仮説が検証された時に、どういうグラフや絵が描けるのかをイメージしておくことが大事なのですが、それがなかなかできない。人を動かす上で、どういう形で見せたら人に動いてもらえるかをイメージすることが大事だと思います。そのイメージがあれば、ムダな作業もかなり減ります。

――他にアドバイスはありますか?

山口: この本で挙げられたような定番の分析ツールをたくさん知っておくことですね。それがあると、いろいろな場面で物事をイメージしやすくなります。「引き出し」が増えることは非常に有効ですね。組合せの数も増えますし、いろいろな場面に対応しやすくなる。これは仮説検証の場面だけではなく、仮説を作る時に時にも有効です。

ただ、定番の分析ツールだけではなかなか効果が出せない場合がある。そうした時は、そのプロジェクトならではのオリジナルの分析ツールを考えることも必要です。とはいえ、それは急に降って湧いてくるわけではない。まずはしっかり基本となる分析ツールを知っているからこそ、オリジナルな分析もできるのです。

――まずは基礎を押さえた上でのオリジナリティということですね。

山口: そうです。何事もそうですが、やはり基礎があるからこそ、応用ができたり、新しいことを思いついたりすることができるという点は強調したいと思います。

 

『グロービスMBAキーワード 図解 基本ビジネス分析ツール50』
グロービス 著/嶋田毅 執筆
ダイヤモンド社
1,500(税込1,620円)

 

東京大学理学部卒、同大学院理学系研究科修士課程修了。戦略系コンサルティングファーム、外資系メーカーを経てグロービスに入社。累計150万部を超えるベストセラー「グロービスMBAシリーズ」の著者、プロデューサーも務める。著書に『ビジネス仮説力の磨き方』『グロービスMBAビジネス・ライティング』『グロービスMBAキーワード
図解 基本フレームワーク50』(以上ダイヤモンド社)、『[実況]ロジカルシンキング教室』『[実況』アカウンティング教室』『競争優位としての経営理念』(以上PHP研究所)、『利益志向』(東洋経済新報社)、『ロジカルシンキングの落とし穴』『バイアス』『KSFとは』(以上グロービス電子出版)、共著書に『グロービスMBAマネジメント・ブック』『グロービスMBAマネジメント・ブックⅡ』『MBA定量分析と意思決定』『グロービスMBA事業開発マネジメント』『グロービスMBAビジネスプラン』『ストーリーで学ぶマーケティング戦略の基本』(以上ダイヤモンド社)など。その他にも多数の共著書、共訳書がある。
グロービス経営大学院や企業研修において経営戦略、マーケティング、ビジネスプラン、管理会計、自社課題(アクションラーニング)などの講師を務める。グロービスのナレッジライブラリ「GLOBIS知見録」に定期的にコラムを連載するとともに、さまざまなテーマで講演なども行っている。

東京大学経済学部卒業、ロンドン・ビジネススクール経営学修士(MBA、Dean's List表彰)。 東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)、ボストンコンサルティンググループを経て独立し、多数のベンチャー企業のインキュベーションを手がける。その後グロービスに加わり、7年間に渡ってマネジング・ディレクターとして同社の経営に参画した後、2014年よりシニア・ファカルティ・ディレクターに就任。
現在は主にサービス、流通、金融、メディア、エネルギー、消費財といった大手企業クライアントに対し、戦略立案や新規事業開発、営業・マーケティング強化の支援や指導を行う。また豊富なコンサルティング経験をもとに、経営戦略分野(新規事業開発、サービス経営、BtoB戦略など)の実務研究や社会人向け教育にも従事。各方面で日本のサービス業の競争力強化に向けた提言活動を行っている。
主著に『法人営業 利益の法則』(ダイヤモンド社)、『サービスを制するものはビジネスを制する』(東洋経済新報社)、『日本の営業2011』(共著、ダイヤモンド社)、『MITスローン・スクール 戦略論』(共訳、東洋経済新報社)。

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