「知らなかった」では済まない時代 ―『職場のLGBT読本』 

イチオシ!学び本
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「6月はプライド月間、6色のレインボー・フラッグを目にする機会も増える」という話にピンとくる方はどれくらいいるだろう。今回は、頭にクエスチョン・マークが浮かんだ方にぜひ読んでいただきたい一冊を取り上げる。

本書の重要性、汎用性は、「あとがき」から引用する次の二点に集約される。
・日本で初めての、「ビジネス書・人事」の棚に置かれるLGBTの本
・LGBTが働きやすい職場をつくることが、LGBTだけでなく、「みんな」にとって働きやすい職場づくりにつながる

「LGBT」とは、L=レズビアン(女性の同性愛者)、G=ゲイ(男性の同性愛者)、B=バイセクシュアル(両性愛者)、T=トランスジェンダー(性同一性障害者など、自認する性と身体の性が一致しない人)の4つの性的マイノリティの人たちを総称した言葉だ。LGBTは、全人口のおよそ5~7%存在すると言われており、私たちの社会、職場や学校などにも、当然LGBTが存在する。本書によると、日本人の名字で多い「佐藤」「鈴木」「高橋」「田中」さんを足した数(600万人)に匹敵する規模だという。

先日、私の子どもが通う小学校でも、身近なテーマとして「クラスに一人」という紹介があった。保護者向けの健康講話のなかで、学校医の先生から「LGBTの方の多くが、小学校低学年で違和感を持ち始めるそうです。LGBTの割合は全人口のおよそ5%程度ですから、20人クラスに一人はいる可能性があると思ってください。最初に察してあげられるのは家族ですから、対応に戸惑う場合には、最寄りの産婦人科医にご相談ください」というお話しだった。

そういえば、学生時代にゲイの友人がいた。闘病児向けの夏休みキャンプに同じボランティアスタッフとして参加して親しくなった。新宿二丁目のアルバイト先にも連れて行ってもらった。友人であれば、ごく自然に、たとえば利き手が違う(右利きか、左利きか)のと同じように受け入れられた。一方、自分の子どもとなるとどうだろう。自分のクラスの受講生だったら。恥ずかしながら、なんだか構えてしまいそうだ。それは、「親として、講師として、適切な対応ができなかったら」という漠然とした不安からくるものだと感じた。わたし自身、まずは知ることから始めようと思い、本書を手に取った。

本書は全6章からなる。第1章「LGBTについて理解を深めよう」では、LGBTの定義、背景、課題など基本的な情報が歴史、科学的なアプローチを含めコンパクトにまとまっている。本書を安心して紹介できる理由として、現時点での最新情報・解釈に基づくことを明記している点が挙げられる。

第2~4章では、当事者アンケートや企業事例が紹介され、LGBTを取り巻く職場環境が肉付けされていく。第6章の関係者インタビューも含め、LGBTの実態を把握するための情報が詰まっている。すでにLGBTの社会生活に対して十分なリアリティを持っている場合、第5章を先に読んでもよいだろう。

第5章「職場環境整備における10のポイント」では、「じゃあ、どうすべきか」が実務的かつ具体的にガイドされている。男女雇用機会均等法の施行規則の改正(2013年12月公布、2014年7月施行)によって、職場におけるセクシュアルハラスメントには、同性に対するものも含まれるものであることが明示されたことを根拠として、LGBTへの対応はセクハラ対策をベースに考えていくことができる流れとなっている。よって、ジェンダーバイアス(男女の役割についての固定観念)の少ない職場であれば、LGBT対応も難しくないことが分かる。

日本企業において、ダイバーシティ&インクルージョンは、「人種、国籍、性、年齢、障がい等を問わずに人材を活用すること」という意味で用いられることが多い。この多様性の一部として、「性的指向」や「性自認」も含まれるというイメージを持ちたい。多様な人がそれぞれ自分の能力を発揮して働ける職場づくりのために、今や、知らなかったでは済まされない。まずは、知ることから始めよう。

『職場のLGBT読本』
柳沢正和 (著), 村木真紀 (著), 後藤純一 (著)、実務教育出版

2,000円(税込2,160円)

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