コミュニケーション・コストを生み出す3つの格差 

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イラスト:荒木博行

「コミュニケーション・コスト」という言葉、聞いたことありますか?コミュニケーションをするだけならタダ、と思っている人は多いかもしれませんが、組織の中でコミュニケーションを行う場合、そこには必ず見えないコストが発生しています。そのコストが大きいか小さいか、このあたりが企業間の競争において、大事なポイントになってきます。

たとえば、リーダーとしてなんらかの戦略の方向性を提示したとしましょう。「今までは右側に向かっていたが、今後は左側に向かうぞ」というような大きな方針転換をイメージしてみてください。それに対して、組織のメンバーがどういう反応をするでしょうか。「あ、左側なんですね。わかりました」と言って、全員がその意図を理解して動ける組織がもしあったとするならば、それは極めてコミュニケーション・コストが低い組織です。

しかし、一般的にはその逆です。まず末端までその方針が届かない。届いたとしても行動が変わらない。「トップがまた何か言っているみたいね」くらいの反応です。でもそれでは戦略は機能しませんから、リーダーはいろんなことをしなくてはなりません。たとえば社員を一堂に集めてスピーチをする、組織単位でミドルリーダーに話をさせる、研修をさせる、現場確認のためのチェックリストを設ける等。ここまでしてようやくリーダーの言っていることが現場に落としこまれます。そして、この過程で発生していることは、言うまでもなく全てコストです。当然時間はかかっているし、リソースも投入されています。実際のお金も発生しているわけです。つまり、多くの組織は膨大なコミュニケーション・コストをかけているということです。

コミュニケーション・コストを下げる3つのポイントは?

では、このコストを分けるポイントはどこにあるのでしょうか。それを知るためには、組織のトップとボトムの間に存在する3つの格差に注目すべきだと考えています。

1つ目の格差は、「情報量」の格差です。つまり、トップの人と末端の人との間に情報量の格差があり過ぎると、コミュニケーション・コストの発生原因になる、ということです。当たり前ですが、普段トップの人が触れている情報と現場の人が触れている情報というのは差があります。大事なのは、その格差をお互いにどうやって埋めようとしているか、ということです。たとえば社長ブログ等で経営者があの手この手で情報発信をしている会社がありますが、それはトップが情報量の格差をなくすことに腐心していることの表れでもあるのです。トップを含めたカジュアルな懇談会や社内SNSなどの施策も、情報格差をなくすことになるでしょう。結果的に、これらの施策はすべて、いざという時のコミュニケーション・コストの削減になるわけです。

2つ目は「解釈力」の格差です。仮にトップとボトムの間にまったく情報量の格差がないとしても、同じ情報から同じ理解ができるわけではありません。極端な例を言うと、「全社の会計情報を包み隠さず全社員に公開しているので、会社の状態はちゃんと理解できているだろう」と考えているトップがいるとしたら、それはやっぱり無茶な話です。数字を見せられてもまったくピンとこない、つまり解釈がついていかない人はいます。解釈力をそろえられるかどうかは、会社としてトレーニングにどれだけ投資をしているかにかかっています。「コストがかかるから」といってその投資に二の足を踏んでいる組織は、いざという時にコミュニケーション・コストとして跳ね返ってくるでしょう。

3つ目は「価値観」の格差です。どういう顧客にどういう価値を提供したいのか。そのためにどういう働き方をしたいのか・・・。こういった組織の根っこにある正解のない問いに対して、どれだけぶれずに握れているのか、ということが最後のポイントです。もちろん、「価値観は多様であった方がいい」ということも事実です。しかしここで強調したいのは、「突き詰めればどうなりたいのか?」という根本の部分の話です。枝葉末節は違った方がいい。しかし、幹の部分に違いが大きければ、いざ「どちらに進むべきか」という時にものすごいコストがかかることになることは想像がつくでしょう。この格差を揃えるには究極的には採用の話になってきます。後から変えることは難しいので、「そもそも誰をバスに乗せるのか」ということが大きな問いになるのです。

この話をすると、よく「うちは価値観が揃っていないからダメだ」という反応をする人がいるのですが、大事なことは、「いきなり価値観の格差に逃げない」ということです。3つの格差のうち、まず情報量の格差や解釈力の格差を埋めていくことは、確実に出来ることです。地道ではありますが、情報共有やトレーニングを組織レベルで恒常的にやろうとしているのか、ということの方がよっぽど大切です。

コミュニケーション・コストというのは、見えないところで発生しているからこそ、注意を払わなくてはなりません。もし「なんだか伝わっていないな」と感じる機会が増えてきたら、これらの3つの格差に目を向けてみてはどうでしょうか。
 

※本記事は、FM FUKUOKAの「BBIQモーニングビジネススクール」で放送された内容を、GLOBIS知見録用に再構成したものです。 音声ファイルはこちら>>

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