第10回 『マッキンゼーをつくった男 マービン・バウワー』ほか 

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絵本作家ジャン・ジオノの名作で、「生」への根源的な問いが読み手の脳裏をよぎる短編物語と、戦略コンサルティングファーム「マッキンゼー・アンド・カンパニー」の根幹を作ったマービン・バウアー氏の実像に迫る1冊を紹介する。1万冊読破を目標に掲げる田久保善彦による「タクボ文庫」第10回。

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先日、新国立美術館で開催されていた、「没後50年 横山大観―新たなる伝説へ」に行ってきました。新国立美術館の建物は、昨年亡くなってしまわれた黒川紀章氏の作品で、ガラス張りの美しい曲線が特徴的です。ちなみに、「新」という斬新なロゴマークをデザインしたのは、数々のCMやCDジャケットで知られるアートディレクター、佐藤可士和氏です。

土、日出勤が何回か重なったので、代休をとり、ウィークデイに会場前から並んでみたのですが、ものすごい混みようでした。東京で開催される美術展はどれもものすごい状態ですね。天皇、皇后両陛下も、この展覧会をご覧になられたようです。

展覧会の中身はといえば、前回の葛飾北斎展同様、「素晴らしい」の一言に尽きるものでした。チケットに書かれたコピーどおり「代表作ずらり」といった感じで、私は、鹿の書かれた「秋色」という屏風絵の前でしばらくたたずんでしまいました。また、「生々流転」という約40メートルにわたる作品には本当に驚かされました。これは、万物が移り変わって変化し続けることを水墨画で描いたものですが、横山大観という芸術家の世界観が強烈に詰め込まれた作品でした。

素晴らしいものを見ると、精神状態もよくなりますね^^

では、今回も2冊の本をご紹介します。

『木を植えた人』 ジャン・ジオノ・著 原みち子・訳 こぐま社・刊 1989年

この本を、私は大学時代の友人から紹介されました。読む度に色々なことを感じさせてくれる貴重な本です。簡単且つ難解とでも言いましょうか。

昨年の秋に担当していたグロービス経営大学院のクラスの皆さんに、この本を紹介しました。このクラスでは、「本の紹介をして欲しい」というリクエストが多く、色々な解釈を共有する雰囲気になっていたので、「今回はどんな読後感が出てくるのか」と、楽しみにしていました。

しばらくすると、予想通り^^

松下さんという方が、味わい深い読後感をクラスのメーリングリスト(グロービス経営大学院ではクラス運営に必要な情報交換を、クラスごとに設けられたメーリングリストを使って行います)に書いてくださったので、今回はその感想文をご紹介したいと思います。

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これは、シンプルで短くて、簡単に読める本です。
あらすじもたぶん2,3行で言い尽くせてしまう内容です。
この本って、もしかしたら「難しいことは考えずに、ただ書かれていることを受け止めていく」というのが、適切な読み方なのかも知れませんが、悲しいかな、僕は逆でした。
読み終えて、改めて感じたのは「これどう読もう」ということでした。

翻訳者の原みち子さんが「あとがき」で、この本が、「激しい、英雄的に見える行為を描いているのではないことは無論ですが、『あなたもできることをできるときにすこしずつしましょう』といっているのでもありません」と語っています。
まさに、その通りだと思いました。つまり、この本は、全く簡単な本ではありません。
かといって、難解な本でもない。あえていえば、この本を難解にするのも、簡単にするのも、読む人次第、といった感じでしょうか。

で、僕は、どう読もうとしたかですが、きれいにも、簡単にも、読めませんでした。
語弊を恐れずに言えば、この本は、非常に「宗教的」な感じがしました。
(けっして胡散臭いという意味ではありませんよ)

原さんは、あとがきで、「逆説的にきこえますが、人と共有することのできない深奥に語りかけるその存在を通じてのみ、私たちは一人で静かに立ちつつ他の人々と真につながり、ジオノが『人間に与えられている力は大したものだ』という、その力を発揮することができるのです」と書いています。全く同感です(この「あとがき」にも、僕は非常に感銘を受けました)。
それに比べて、この本の帯にある「天声人語」で書かれた「(この本により)忘れていたものを思い出す」という評は、僕はあまり好きではありません。僕らは、「忘れていた」のではなく、原さん(=ジオノ)の言っている「人と共有することのできない深奥に語りかけるその存在を通じ」るために、長い長い道のりを歩んでいる(しかも、もがきながら)のではないかと思うのです。難しく読み過ぎでしょうかね?

と、ここまで書くのに、読んだ時間の倍以上かかりました。

この本、みなさんもせっかくなので、手に入れてみてください。早ければ、30分で読めます。そして、その後じっくりと噛み締めてみてはいかがでしょうか?
きっと、良い体験になると思いますよ。

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『マッキンゼーをつくった男 マービン・バウワー』 エリザベス・イーダスハイム・著 村井章子・訳 ダイヤモンド社・刊 

世界NO.1の戦略コンサルティングファームであるマッキンゼー・アンド・カンパニーの根幹をつくったといわれる、マービン・バウワー氏に関する本です。ご自身が語ったことや行ったことだけでなく、彼を知る多くの人々がバウワー氏のエピソードを語るという部分がふんだんに含まれており、非常に説得力がある1冊になっています。この本に書かれていることがマッキンゼーの根幹を作っているのだとしたら・・・。

コンサルティングというコンセプトを作り上げた人物伝として、極めて優れたリーダーや経営者のモデルとして、経営倫理、リーダーシップを学ぶ1冊として、などなど色々な読み方が出来ると思います。そして、様々なことを教えてくれる本だと思います。

ジョン・H・マッカーサー(元ハーバード・ビジネス・スクール学院長)
マービンが先駆者だったのは、経営コンサルティングというコンセプトではない。人間の基本的な価値観をビジネスの世界に持ち込んだこと、これが新しかったのだ。企業経営者が荒波を乗り切る羅針盤とすべきものは価値観であり倫理観であると信じ、これを浸透させることにつくした。

ヘンリー・ストレージ
マービンの行為を思い出すたびに私は感動してしまう。パートナーはファームの株式を5%以上保有してはならないという決まりを、彼は自らつくった。その結果、自分の保有株をばかばかしいほどの安値で手放すことになった。よくは知らないが、たぶんマービンは株式の50%から60%を持っていたと思う。あんなことをやってのける人間がほかにいるとは思えない。信じられるかい「私はファームの存続を願っている。よってパートナーは5%以上の株式を保有してはならない、したがって私は自分の持っている株を簿価で譲ることにする」と平然と言ったんだ。

ジェフリー・ソーネンフェンド
偉大な経営者、マービン・バウワー、トーマス・J・ワトソン、アルバート・ゴードンは感謝し満足して会社を去り、自ら築いた組織を後継世代に快くバトンタッチしている。どの人も会社に強い愛着を持っていたが、肩書きにはこだわっていない。残された組織は大きくなり堅実な業績を収めている。彼らの姿勢は国王や将軍にもまさる。

レオ・F・マリン(デルタ航空会長兼CEO)
哲学者ラルフ・ワルド・エマソンは「偉大な組織には一人の人間の思想が反映されている」と言った。これはまさにマッキンゼーとマービン・バウワーに当てはまる。

ルイス・ガースナー(IBM会長)
ビジネスに関してマービンから教わったことは、行動規範の大切さだ。しっかりと規範を浸透させることは、規則で縛るよりずっと効果がある。

マービン・バウワー自身の言葉は、あえて、引用しません。是非本を手にとってください。

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