まだまだ修行不足、“女を知る”は難しい 

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「マーケティングとは女性を研究すること」――これは筆者のモットーであり、口ぐせでもある。人口統計上、男女の比率は半々だが、消費のカギを握るのは女性だ。一見して“男”の買い物でも、その影には“女”あり。男女別市場規模なるデータはおいそれと手には入らないが、衣食住健美いずれのジャンルにおいても女性が消費を牛耳っているのは間違いない。

男女の消費性向の違いは何か? ひとことで言えば、男は名詞で消費し(ニーズ=機能、効率、便利)、女は形容詞で消費する(ウォンツ=楽しい、おいしい、美しい)。名詞は角があるのでつかみやすいが、形容詞は丸っこいのでスルリと逃げる。だから女性消費の研究は難しいのだ。

マーケティングを学ぶということは、“女をくどけるようになる”ことでもある。かくいう筆者の戦果は聞かないでほしい。ボロが出てしまう。

身体は女子で、心は男子なる人

そんな筆者のモットーに揺さぶりをかけたのは、同僚のMayuさんだった。仮名で登場していただくのに風体を説明するのは反則だが、彼女はとても“女っぽい”人である。笑顔はかわいらしく、化粧品はゲランを愛用し、エステに通いネイルもばっちり。傘1本にも女性らしい色づかいとデザインのものを選ぶ。“寄せて上げる”必要がない豊かな胸もある。さらにある愛玩系動物が大好きで、バッグやマグカップまで、その動物キャラクターでいっぱいなのだ。

そんな彼女だから、男の多いオフィスに現れてはオンナの香りを炸裂させて、中年管理職をトリコにする。まさに女子全開である。だが彼女、オモテの女っぽさとは裏腹に、心には“男”が棲んでいるのだ。頭脳明晰で意見はしっかりしており、プロジェクトは冷静沈着に動かし、女子とは群れず、独りで行動もするし、メンバーが納得するまで話し合う。また「何か食べて帰ろうか、おごったるよ!」と面倒見もいい。女子なる外見と男子なる思考とのギャップは大きい。

そんな彼女と食事をしていると、あるハキハキした若手女子社員の話になった。「郷さん、○○さんて知ってる?」「いや。どんな人なの?」「彼女、ホントに体育会系なのよ。朝礼でもすっごく大きな声を出してあいさつするし、まるで女じゃない。私と同じ UNTITLED(アンタイトル)のジャケットを着ていても、彼女が思うアンタイトルと、私の思うアンタイトルは、まったく違う服なのよ」

“まったく同じ服なのに違う”とは、どういうことだろうか? 「同じアンタイトルのジャケットを、ある人は“女性らしさ”で着る。でもある人は女性らしさよりも“しっかりした女性”をアピールしたくて着る。そんな感じ?」と聞いたらMayuさんはうなずいた。

「でも、商品をどう思うかは消費者の自由じゃないの?」と聞くと、Mayuさんは「問題はね、見た目が女で、心が女という女性もいれば、見た目は女だけど、心は男という女性もいるってことなの。同じ洋服を買うとき、180度違う目的で買うのよ」と指摘する。

同じ購買でも180度違う? 筆者は何かに「ドカーン」と打たれた感じがして、ヨロヨロと胸の手帳を取り出し、マトリクスを描いた。

心と見た目のマトリクス

タテ軸は、見た目が女っぽいか男っぽいかという“見た目軸”。ヨコ軸は“心が男”か“心が女”かを表す。同じ商品を購入するのでも、Mayuさんは見た目は女子、心は男なので、マトリクスの左上にポジショニングできる。一方、見た目が男子、心も男の場合を“A女”とすると、左下にポジショニングできる。

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「こういうことかな?」とMayuさんに聞くと、「ええ。でもひょっとするとA女はこっちかもしれないわ」とA女を右にずらした。

A女は見た目では男を演じているが、実は内側には女子の心を持っている。フェミニンな自分を隠したままに育ち、成人した今それをアンタイトルというブランド購買で表現したい。Mayuさんはその逆で、内側の男子を外側の女子でカムフラージュするのだろうか。

思いあたるフシはある。見た目はファッショナブルなのに『ゴッドファーザー』を映画史上の最高傑作という女性もいる。黒やグレーのスーツが似合いクールにキメているのに、『群ようこ』を読みふける女性もいる。携帯電話をスワロフスキーでゴージャスに飾るからと言って「カワユイなあ」と思っても、実はくわえタバコで自転車に乗る女性かもしれない。男性諸君、だまされないように気をつけよう。

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大量消費時代のマーケティングは時代遅れ

年齢や性別、購買履歴や所得などの要素から「クラスター分析」を行い「ターゲティング」をして「ポジショニング」(差別化)をするのがマーケティング。そのキモである“クラスター分析”によって、似た人を「集合」にして販促をかける。だがその集合作りの成果は、必ずしもはかばかしくない。消費の過去から未来を占うのはたいがい外れてきた。それで「消費者は生き物ですから」という言い訳をしてきた。

予想が外れるのは、消費がモノ消費から感性消費に変化する中で、マーケティングが従来のマスの大量消費型の思考から脱出できていないからだ。感性消費はモノではなく心、ホンネで消費するのだ。だからこそ消費者のホンネに近づく売り方やメッセージが必要である。“心の性別”という要素は一例だが、それだけでも感性型消費分析の一歩になる。

そこで、ふと思いだすのが「PUFFY」、アミとユミの女性デュオ。彼女たちが全米でスターになった漫画『Hi Hi PUFFY AMI YUMI』は、実在するロックスターPUFFYをアニメ化し、世界各都市をツアーする話である。ピンクのヘアとワンピースのアミ(大貫亜美さん)は、楽天家でロマンチスト、カワイイもの好き。マトリクス図では右上になる。

一方ユミ(吉村由美さん)はドクロTシャツでパンク丸出し。ハードロッカーのようにチョーカー(首に巻き付けるネックレス)やブレスレットを身に付けて、皮肉屋さんの性格という設定。マトリクスでは左下。

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好対照の2人、アミはカワイイ、ユミはクール。さてPUFFYの女性ファンは、どちらを好きか? そんな質問でも心の性別を読み込める。

男性の読者諸君には「このマスのどの女性を好きになるか?」という質問を投げかけたい。筆者は見事にあるマスに片寄っていた。いつも同じターゲティングなのだ。だからいつも同じ轍を踏んできたのか・・・。

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