「腹落ちした!」ってそれ本当ですか? 

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イラスト:荒木博行

グロービス経営大学院の教員としてクラスで講義をしていると、受講生から「腹落ちした!」という言葉を聞くことがあります。しかし、実際に話を聞いてみると、まだ理解がおぼつかなく、腹落ちまでは程遠い状態であることもしばしば。「腹落ち」とは何なのか、どうしたら「腹落ち」に至ることができるのか。今回はそんなテーマで考えていきましょう。

腹落ちというのは、まさに学びが「お腹まで落とし込まれた」ことを指します。食べ物のように「頭」に入ってきたものが徐々に消化されて、「お腹」にまで至るプロセスを経て、ようやく「腹落ち」という状態になるわけです。つまり、「頭で理解した」というのは、「腹落ち」に至るまでの第一歩に過ぎません。

「腹に落ちた」状態にまで至れば、アクションにまでつながりやすくなります。頭だけの理解では、体まで距離があるのですぐには動けない・・・あくまでも、ここで言う「頭」や「腹」は比喩的な表現ではありますが、いくら物事を学んでも「単なる概念的な理解」に止まっている限りでは、自分の行動変容には繋がりにくい、ということはおわかりいただけると思います。

腹落ちさせるための具体的なステップは?

では、どうしたら腹まで落とし込むことができるのでしょうか?その第一歩は、「自分なりの表現に変換する」ということにあります。つまり、授業や読書などで触れた新しい概念を、無理やりでもいいので自分の世界にある言葉に置き換えてみることです。新しい学びというのは、大抵は触れた瞬間には、自分の中にはない概念です。たとえば、マーケティングという領域を学んだことがない人にとって、「ターゲティング」とか「ポジショニング」というキーワードは、自分の中に存在していなかった言葉でしょう。そこで大事なことは、そのまま借り物の言葉を使うのではなく、自分にとって飲み込みやすい表現に変換することです。「ターゲティング」であれば、たとえば「自分が一番大切にしたい優先順位の高いお客さんを決めること」という表現の方が、慣れない横文字よりも飲み込みやすいかもしれません。

しかし、この表現のままであれば、まだ抽象度が高いため、消化しきれてはいません。そこで、さらに大事なことは、それを「自分の身の回りの具体例」で語ることです。たとえば、とある主婦が「ターゲティング」についての理解を深めるのであれば、晩御飯の献立を考える際に、「家族のうちの誰のニーズを優先的に考えるべきなのかをまず決める」、ということになるかもしれません。就職活動中の学生であれば、「どういう業界、どういう職種に就きたいか、その優先順位の高い企業をまず決める」ということになるでしょう。

このようにして、概念を一旦自分の言葉に置き換え、そして自分のイメージできる事例に変換してみることが、腹落ちに近づきます。なぜならば、そこまで来ると、「なぜターゲティングを決める必要があるのか?」「ターゲティングを決めないとどういうことになってしまうのか?」ということも、リアリティを持って理解できることにつながるからです。たとえば、就職活動の例で言えば、優先すべき企業をイメージしないままに、闇雲に活動をしていたら、結局スケジュールをこなすことに精一杯になってしまい、どの業界にも等しく刺さらない状況になってしまうことが想像されるでしょう。そこまでイメージが進むと、この「ターゲティング」の概念がようやく腹落ちに近づくことになるのです。

そして、「腹落ち」に欠かせない最後のピースは、いうまでもなく「行動してみる」ことです。では、その身の回りの事例において、「ターゲティング」を意識的に実践してみると、何が変わるのだろうか・・・?そこまでもし実践し、その結果を経験として体感できれば、「ターゲティング」という無味乾燥な横文字も、自分の中の「実践知」として取り込むことができるでしょう。そして、もしその後、マーケティングに触れる機会に恵まれれば、すぐに具体的なアクションにつなげることができるはずです。

ビジネススクールの中は、言ってしまえば横文字のオンパレードです。しかし、成長する人ほど、そういった横文字を敢えて使わずに、平たいわかりやすい言葉に、イメージのしやすい具体例を添えて話す傾向があります。

もし、自分の言葉が上滑りしているな、と思ったら、それはまだまだ腹落ちしていない証拠。借り物の言葉ではなく、自分なりの表現に置き換え、具体例を使いながら話してみるチャレンジをしてみましょう。
 

※本記事は、FM FUKUOKAの「BBIQモーニングビジネススクール」で放送された内容を、GLOBIS知見録用に再構成したものです。音声ファイルはこちら>>

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