オンラインのプログラミング教育、成功のポイントは「強制力」 

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知の創造勉強会 Edu-Techの最新事例[2]

今野: ここからは「TechAcademy」というサービスを提供しているキラメックスの村田社長にお話を伺いたい(村田氏登壇:会場拍手)。より具体的な泥臭い事例をご紹介したほうが学びになると考え、急遽お招きした。村田さんとの出会いは2010年だったか。今日は詳しく触れないけれども、実は村田さんはグルーポンのようなフラッシュマーケティングのサービスを日本で最初に始めた方だ。それで一時期はすごく伸びていた。ただ、グルーポンやポンパレモールが激しい競争を仕掛けてきた環境のなか、事業を一気に大転換した。それで2013年、以前とまったく関係のない(笑)、プログラミング教育に足を踏み入れたという経緯がある。そうしたら1年半ぐらいで事業が黒字化して生徒数も大きく伸びてきた。それで去年の秋、ユナイテッドさんから買収提案があってグループ会社になったという流れだ。そんな村田さんに、まず「TechAcademy」のお話をしていただいたのち、ディスカッションしたいと思う。

村田雅行氏(以下、敬称略) 今日はご参考になるかどうか分からないけれども、私のほうから少しだけ、自己紹介と現在の事業についてお話をさせていただきたい。私自身は京都出身で、2006年、新卒で楽天に入社した。で、楽天でお世話になっていた2年間では、まず開発部門に配属され、サーバーのエンジニアとしてサーバー構築や運用を担当したのち、システム・インテグレーションに従事していった。

そして、楽天を退社したあとの2009年、キラメックスを立ちあげた。当時は独学で勉強しながら開発からデザインまで1人で行って、2010年、先ほどご紹介いただいたフラッシュマーケティングのサービスをリリースしている。その頃は同分野がすごく盛りあがっていて、似たようなサイトが200ほど出てきたという異常な状況だった。それで我々もグロービスさんのお世話になって2億円ほど資金調達をさせていただき、応援していただいたという流れになる。ただ、それでもこのマーケットではなかなか勝てないということで事業転換を行って、2012年11月、「TechAcademy」をローンチした。

当初はリアルのスクールだった。恵比寿にあったオフィスのレイアウトを変えて、20名ほどが勉強できるようなスペースにしたうえで「初めてのプログラミング講座」というコースを開講した。非エンジニアの方にプログラミングを教えるといったスクールだ。以来、何度か形を変えながら今までやってきたけれども、今はオンラインのみでリアルは一切やっていない。で、現在は受講者数が累計で7000人ほどとなり、研修等で利用する企業の数もおよそ100社に達している。それでユナイテッドさんから買収のお話をいただいて、今年2月、グループに参加したという形になる。

続いて当社のミッションについてお話ししたい。今、ITの業界ではエンジニアの数がまったく足りていない。これはアメリカでも同じ。アメリカでは2020年時点でおよそ140万人のエンジニアが必要となるにも関わらず、実際には40万人ほどしかおらず、100万人ほど足りなくなるとの予測もある。世界的にも足りていない。プログラミング教育の仕組みがないのでエンジニアが増える仕組みになっておらず、その数が枯渇している。我々はそれを解決するために、社会人向けのプログラミング教育を今は提供している次第だ。

事業としては、個人向けのブートキャンプ事業と、法人向けの企業研修事業の2つを行っている。で、前者では「オンラインブートキャンプ」という当社のメインサービスがある。これは、初心者でも8週間でオリジナルのサービスを開発・リリースできるようになるというものだ。まさにプログラミング版「ライザップ」のような感じ。オンラインだけで、かつ短期間で集中して結果にコミットする点が特徴と言える。それで現在は「Webアプリケーション」「Webデザイン」「Word Press」「iPhoneアプリ」という4コースを提供していて、今後も増える予定だ。

どのように勉強するかというと、基本的にはオンラインでカリキュラムを提供する。それで、日本中、または海外から参加されている日本人の受講生の方々に、カリキュラムに沿ってオンラインで自習していただく。提供されたテキストを見ながら勉強して、自分でプログラムを作っていくという流れだ。ただ、それだけでは難しいから、各種ツールも用いてしっかりサポートしていくのが我々の特徴と言える。

まず、「チャットサポート」というものがある。8週間のあいだ、毎日15~23時までの8時間、現役エンジニアがオンラインに貼り付いて、質問を受けたらすぐに答えを返していく。たとえばなんらかのコードを書いたうえで、10時29分にチャット上で「これでいいですか?」と質問をする。すると10時38分に、修正箇所があれば「ここを直してください」ということですぐに返事があったりする。プログラミング学習で大変なのは、分からなくなって詰まってしまうとテンションまで下がって厭になってしまう点だ。だから、「難しい」「分からない」といった状態をすぐ解決することが成長のミソだと考えていて、そのサポートを強化している。

また、「メンタリング」というサポートもある。自分専属のパーソナルメンターが付いて、師匠のような感じでいろいろと教えてくれる。これは8週間のあいだ、1回30分で週2回、ビデオチャット形式で行っていく。内容はなんでもいい。「ここが分からないんですけど」ということでコードを見せながら質問するのもいいし、「こんなサービスつくりたいんですけど、どういう仕様にしたらいいですか?」と質問するのもいい。重要なのは、そこでメンタリングを週2回行うので、「それまでに学習の進捗がないとヤバイ」という気持ちになる点だ。そんな風にして、ある程度の“柔らかい強制力”を設定することでしっかりと勉強させていく。

「コードレビュー」というのもある。プログラミングではしっかり成果物をつくっていく必要があるので、当然、そのコードの良し悪しが大変重要だ。そこで現役エンジニアの方がコードのレビューをして返してくれるという仕組みも提供している。そうしたサポートとともに、オンラインでも成長させることができるような仕組みを提供しているところだ。

このほか、今野さんからもご紹介があった通り、「DemoDay」というリアルのイベントも開催している。今年からは四半期に1回、自身の成果物を発表する場として受講生であれば誰でも参加できる。ここでは現役エンジニアの方々やCTOを始めとした会社経営層の方々に審査員をお願いしている。そうした著名な方に自身のサービスを見てもらえるということで、学習者の方々にとっては大変有意義な場になっている。こうしたゴール設定をすることも、しっかり勉強してもらうためには大切だ。勉強するための動機付けにしようということでやっている。

こうしたプログラミング教育によって、初心者の方でも本当に8週間でオリジナルのサービスをつくることができるようになる。それで、過去にはたとえば糖質ダイエットの管理サービスを構築してリリースした方もいらっしゃる。皆さん、自分のアイディアを形にしているところだ。恐らく本会場でエンジニアの方はあまりいらっしゃらないと思うけれども、ご興味があればぜひトライしてみていただけたらと思う。私からは以上です(会場拍手)。

「やらなければいけない」感覚の醸成が肝だった

今野: では、続いて私のほうからいくつか質問したのち、会場からも質問を募っていこう。ちなみに本サービスはおいくらになるのだろう。

村田: 社会人向けが15万9000円で、学生向けが8万9000円になる。

今野: リアルな教室でプログラミング教育をスタートさせたところから現在の形に至るまで、主にどんなご苦労があっただろうか。それをどのように克服していったかといったお話を含めて伺ってみたい。

村田: まず、とっかかりとしてリアルのスクールを始めたのは、実際にそうした勉強会を開催している方を見て、「リアルでは受講生が集まるんだな」という感触を持ったから。だから、まずはお客さんがしっかり来るところから始めようということでリアルな講座を始めた。これはこれで分かりやすかった。実際に来て、それで勉強する形なので。ただ、それをオンラインに変換していくのはすごく難しかったし、やっぱり試行錯誤を重ねている。いろいろな形を試しては失敗して、また試しては失敗するというその時期が一番大変だった。

今野: そこでどういった点が一番のブレークスルーになったのだろう。

村田: 「オンラインブートキャンプ」を始めて発見したことがある。以前は学習・成長していただくために重要なのは、カリキュラムの質や内容だと思っていた。だから「良いカリキュラムをつくろう」とか、「動画で分かりやすくしよう」といった方向でやっていたわけだ。でも、ある時点で、成長に必要なのはそこじゃないと気が付いた。じゃあ、何が必要なのかというと、強制力。「やらなければいけない」という感覚が成長には一番重要だと気付いた。そこが大きなポイントだ。だからこそ、たとえば「オンラインブートキャンプ」も8週間の期間を設けているし、週2回はメンタリングという形で先生とコミュニケーションを取る状況をつくっている。あるいは「15万9000円を払ってしまったから、やらなくちゃいけない」といった状況をつくることがポイントになる。

今野: 最初は「初めてのプログラミングだから無料にして、プレミアムサービスでお金を取っていこう」というアプローチだった。でも、実際にはその真逆で「有料にしたうえで成果にコミットして、しっかり学ばせる」という方向に振ったほうが良かった、と。

村田: そう。学習の機会さえあればいいというものじゃないんだと気が付いた。

今野: 今はグロービスもEラーニング化というか、テクノロジーを使って新しい形をつくろうとしている。そこでアドバイス…、というのもおかしいけれど(笑)、「こういうことに気をつけたほうがいい」といったお話が何かあればぜひ教えていただきたい。

村田: 私から何か参考になるようなお話ができるとは思わないけれども、やっぱり強制力の部分は鍵だと思う。で、その意味ではグロービスさんも期間が決まっているし、ある程度の価格で、かつオンラインで出席しなければいけない形だと思うので、その辺はクリアだと思う。あとは、やはり社会人教育という面で言うと…、具体的には詳しく存じあげないけれども、たとえばグロービスさんであれば「MBAを取得する」「転職する」といったゴールが見えやすくなっていればいいと思う。それで、たとえば地方の方でも「オンラインで頑張ればこういう風に活躍できるんだ」といったことが見えるようになればいいのかな、と。

今野: 「TechAcademy」は今のところ初心者の段階にフォーカスしていると思うけれども、出口のところで今後の構想は何かあったりするのだろうか。

村田: 現状では、自分のアイディアを形にしてオリジナルのサービスをつくることがゴールになっている。「こういうものをつくりたいな」を「つくることができた」にしよう、と。ただ、そういうゴール設定をしている方はそれほど多くないし、やっぱり「いい会社に就職・転職したい」「給料を増やしたい」というあたりが大きなマーケットだと思う。だから、そこにサービスを提供するため、今後は「しっかりとキャリアアップできます」といった見せ方をしていったり、就職としっかりつなげていくといったことを今後はやっていきたい。


※本記事は、グロービス社内で行われた勉強会の内容を書き起こしたものです(全3回)
 

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