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評価の目的: 人間は評価を気にする生き物

投稿日:2016/05/07更新日:2021/10/25

『グロービスMBA組織と人材マネジメント』の第4章から「評価の目的」を紹介します。

評価は、人事システムの中でも鍵となるサブシステムです。「人間は評価を気にする生き物」という言い慣わしがありますが、どんな従業員も、程度の差こそあれ、周りからの評価を気にして行動するものです。これを適切に行えれば、従業員のモチベーションも上がり、適切なスタッフィングや選抜なども可能となりますが、不適切だと、極めて組織の生産性を下げることになりがちです。難しいのは、評価者側もまた人間であり、100%完璧な評価は難しいということです。しかし、難しいなりにそれを公正かつ適切に行おうという姿勢があれば、ある程度は納得感が生まれ、極端なトラブルは減ります。最悪なのは、何を評価するかも伝わっておらず、しかも評価者のスキルにバラつきがある場合です。これでは適切な評価はできず、従業員の不満が大きく溜まる組織になってしまう可能性が高いのです。

(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、ダイヤモンド社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

評価の目的

一般に組織で評価を行う場合、その目的は、(1)_昇給、賞与、(2)_昇進・昇格、(3)_能力開発、(4)_後継者発見の4点である。

(1) 昇給、賞与
まず、定期的な昇給のための評価である。それと関連して賞与を決定するための基準となる。ただし、日本の企業の多くは定期昇給を採用しているし、賞与も事前に決定されていることが多いため、人事評価によって極端に変動することは少ない。もっとも、年俸制を採用している場合はその限りではない。評価が次年度の収入を大きく左右することになる。

(2) 昇進・昇格
経済的報酬が昇給や賞与であるのに対し、昇進・昇格は社会的報酬と呼べるものである。もちろん昇給と昇進・昇格は多くの場合連動する。つまり、昇進すれば、給与も上がるのが一般的である。昇進させる、あるいは昇格させるということは当人の職務範囲が広がることを意味する。専門的能力が向上したかどうかを評価する場合もあるし、マネジメント能力が向上したかどうかを評価する場合もある。

(3) 能力開発
能力開発については第5節で詳述するが、身につけさせたい能力は何かを決定するうえで評価は重要な情報を提供する。あるいは、不足している能力を発見するという意味もある。

(4) 後継者発見
これは将来の経営幹部を見出すことを目的としている。この場合の評価は選抜の意味を持つ。潜在性を評価するわけだが、評価自体が目的ではなく、選抜された人材を育成することが課題となる。

3つの評価軸

ところで、本章の冒頭のケースで紹介した武田薬品工業もそうであるように、日本の多くの企業組織は人事システムのサブシステムである評価システムについては試行錯誤を繰り返してきた。一般に日本の企業組織は3つの軸、すなわち�@実績、�A能力、�B態度や情意で仕事の成果を評価している。

(1)_実績(成果)
まず、最も客観的な基準に基づく評価システムは、実績を数値で評価することである。営業職であれば販売高、研究職であれば開発件数や特許数で評価するのだ。数字でカウントできるため評価者の主観が入る余地は小さい。武田薬品工業においても仕事の実績で評価されるシステムを持っている。

(2)_能力
次に、職務を遂行するための能力を評価するという軸もある。個人が持っている仕事の成果を出すための能力、たとえば分析力、判断力、企画力あるいは統率力などを持っているかどうかを評価するのだ。これらの能力は数値で測定できるものもあるが、多くは評価者の判断に委ねられるという点で実績評価よりは客観性が不足する場合もある。

(3)_態度や情意
さらに、態度や情意に焦点を当てる評価もある。仕事に対する態度、協調性、積極性などを評価するものである。情意考課と呼ばれることがあるが、情意をどのように測定するか、評価するかは簡単ではないし、評価の結果がどの程度客観性を持つものか、そして仕事の成果に結びつくのかということが疑問視される場合もある。

たとえば武田薬品工業では情意を評価することはないようだ。しかし、協働システムのメンバーとして行動する以上、協調的態度は不可欠であるといえよう。評価が難しいということと評価をしないということは分けて考えたほうがよい。

(本項担当執筆者: グロービス経営大学院教授 佐藤剛)

次回は、『グロービスMBA組織と人材マネジメント』から「報酬決定要因」を紹介します。

https://globis.jp/article/4320

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