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第9回 『福原義春の講演―変化の時代と人間の力―』ほか

投稿日:2008/03/06更新日:2019/04/09

伝統は革新の積み重ねがあって初めて生まれる――。資生堂名誉会長、福原義春氏のメッセージを味わう講演録集のほか、システム思考の要諦を分かりやすく解説した一冊などを紹介。1万冊読破を目標に掲げる田久保善彦による「タクボ文庫」第9回。

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江戸東京博物館で開催されていた特別展「北斎-ヨーロッパを魅了した江戸の絵師-」を見に行ってきました。評論家の中には、歴史上最高の芸術家として北斎の名前を挙げる人もいると聞きましたが、圧倒的な才能と、作品量はまさに驚愕。

個人的には、『北斎漫画』といわれる、3900余の膨大な図版を収めたスケッチ画集が強烈に印象に残りました。「天才」というのは、こういうことをなしえる人のことを言うのか・・・と、しばらくその展示場所から動けなくなってしまいました。その後、北斎漫画を集めた本を購入したのは言うまでもありません(^^)。

前書きですが、北斎に関するオススメ入門書、『もっと知りたい葛飾北斎―生涯と作品』(永田生慈・監修 東京美術・刊)から、すばらしい言葉を。

私は6歳から物の形を写生する癖があり

50歳の頃から数々の図面を本格的に発表してきたが

70歳以前に描いたものは、実に取るに足らないものばかりであった

73歳で鳥獣虫魚や草木の何たるかを、いくらは悟ることができた

ゆえに(精進し続ければ)80歳でますます向上し

90歳になれば、その奥意を極めて

100歳までに妙技の域を超えるのではないか

110歳となれば一点一格が生きているようになることだろう

願わくば、長寿を司る神よ、私の言葉が偽りでないことを見ていてください

ちなみに、有名な赤富士などの浮世絵版画は北斎が70代の時の作品です。

『福原義春の講演―変化の時代と人間の力―』 福原義春・著 慶応義塾大学出版会・刊 2001年

資生堂の名誉会長でいらっしゃる福原義春氏の講演録をご紹介します。福原氏の書かれたものは多数読みましたが、心に残るフレーズが最も多かったのがこの本です。福原氏が様々なシーンで語られた講演録を集めたものとなっているため、リーダーシップ論から美しく年を重ねるヒントまで、内容は多岐にわたっています。全ての話を貫いているのは、副題にもある、「人間の力」ということになります。

人間の力(人間力)という言葉を最近よく耳にしますし、私自身も人間力を高めたいと思って生きています。直接、間接に考えさせられるフレーズが詰まっています。色々なことを“感じながら”読んでいただきたい1冊です。

いつものように、素晴らしいフレーズをご紹介します。

藤原先生は、ほんのちょっと考えられて、こういわれたのです。「現実と理想に距離があるのは当たり前です。理想に支えられた現実と、理想なき現実のあいだにはどれだけ大きな差があるかわからない」

もう一つ、バリ島には愛とか美という言葉がないといいます。愛とはいってみれば、“人をおもいやる気持ち”ですし、美とは“感動すること”という概念で言い表されると思うのですが、愛も美も社会とか、人を含む環境のなかに取り込まれていて、人に説明する概念そのものがないし、したがって言葉にする必要がないものだと思います。

経営というのは、人間のことも哲学のことも、経済の問題も法律の問題も、すべて統合したところにあるのです。

ネパール人のシェルパが登山の途中で急に立ち止まって「ここらでひと休みしよう」というのだそうです。限られた日程で先を急ぐ登山家たちのパーティは何をいっているのだと焦るわけですが、シェルパがいうには「私たちがあまんり早く登るから、魂がついてこられない。魂がやってくるまで待とう」と、そういって梃子でも動こうとしないというのです。

「伝統」というものは決してそれまでのやり方を守ることではなく、革新の積み重ねがあって初めて生まれるものであって、それらのつながったものが伝統であるということです。

『入門!システム思考』 枝廣淳子、内藤耕・著 講談社現代新書・刊

私がグロービス経営大学院で講師を担当している「クリティカル・シンキング?」、「クリティカル・シンキング?」という科目の中で、物事の因果関係を考えるというセッションがあります。そのコンセプトを非常にわかりやすく解説した本が今回ご紹介する1冊です。

ちなみに今回この本に出会ったきっかけは、昨年の10月期に大阪で「ビジネス定量分析」という科目を担当していた時に、感心するほどよく本を読まれる1人の学生の方が、この本の感想をクラスのメーリングリストにあげられたことでした。

システム思考は、独立した事象に目を奪われずに、各要素間の相互依存性、相互関連性に着目し、全体像とその動きをとらえる思考方法です。つまり、「原因→結果(原因)→結果・・・」という因果の全体像を把握しようという試みで、クリティカル・シンキングのクラスでも問題分析の手法として取り上げています。

システム思考またはシステムズシンキングの本は、難しい本が多く、とっつきにくいのが多いのですが、この本は本当にわかりやすく重要なことが書かれています。なぜ、システム思考が必要で、何が良いのかと。

ここで問題になるのが、ちょっとしたことでも何かやろうとすれば、問題に対する視点の数が非常に多いということである。そして一つの問題に対し、ある視点からとった正しいであろう行動の帰結と、他の視点からとった行動の帰結は異なっている。

日ごろ抱えている問題は、多くの場合、一つひとつの個別の状況や現象といった要素の中にあるのではなく、要素と要素の間や、様々な要素の組み合わせの中にあるのである。

システム思考の重要な特徴は、できごとを単独でとらえるのではなく、時間の経過に伴うパターンとしてとらえることにある。

こんな話に興味のある方は是非手に取ってみてください。それから、著者から読者への最後のメッセージもとても印象的です^^

システム思考七か条

1. 人や状況を責めない、自分を責めない

2. 出来事でなく、パターンを見る

3. 「このままのパターン」と「望ましいパターン」のギャップを見る

4. パターンを引き起こしている構造(ループ)を見る

5. 目の前だけではなく、全体像とつながりを見る

6. 働きかけられるポイントをいくつも考える

7. システムの力を利用する

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