ものごとはオモテとウラから眺めよう 

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2月26日ものごとはオモテとウラから眺めよう

「グラスに入っているワインを見て“ああ、もう半分しか残っていない”と嘆くのが悲観主義者。“おお、まだ半分も残っている”と喜ぶのが楽観主義者である」。イギリスの劇作家、ジョージ・バーナード・ショー(GeorgeBernardShaw:1856〜1950)の言葉だ。同じものごとでも、オモテから見るかウラから見るかで大きく解釈は異なる。そして、その両面を見ることによって正しい解釈に至ることができるのだ。

ものごとをオモテとウラから見る。最近気になる事象を、主義主張ではなく、思考実験として分析してみる。

日経新聞の月曜朝刊に掲載される「クイックサーベイ」の結果が今週は面白かった。「司法試験合格者数を2010年に3000人にする計画に賛成?反対?」という設問。回答結果は賛成51%、反対49%でほぼ真っ二つ。賛成理由のトップは「弁護士不足の地域の解消につながる」。反対理由で群を抜いてのトップは、「質の悪い弁護士が増える」。記事中でも面白いと指摘されているが、賛成理由の3位は「競争原理で質が向上する」なのだ。

同じ事象を捉えて、「質が向上する」と期待する人もいれば、「質が悪くなる」と懸念する人もいる。どちらが楽観的で、どちらが悲観的、どちらがオモテでどちらがウラということは言うつもりはないが、これは明らかに、回答者によって見ている側面が大きく違う典型ではないだろうか。

もう一歩進めてみてみると、日経新聞は2月9日付け朝刊に、「『弁護士は多すぎ』は本当か」という社説を発表している。ネット上にバックナンバーが既にないのだが、「多すぎ」という論は主に弁護士自身が競争激化でオイシイ仕事にあぶれることからであり、国選弁護士などの必要性はまだまだ高い。オイシクない仕事を選びたくないという気持ちの現れではないかと指摘する主旨だった。事実、先のサーベイでの賛成理由4位は「容疑段階で国選弁護人のつく範囲が広がることなどから弁護士の大幅増員がまだ必要」というものだ。しかし、実際の所はその仕事を選択するか否かは、弁護士の先生たちの気持ち次第であり、先生がオイシイ仕事が過当競争にならないがための反対をしているというのが実体だとしたらどうもイタダケナイ話だ。

もののオモテとウラということで、この問題を、さらに別の側面から見てみよう。弁護士の立場から考えてみるのだ。オイシイ仕事だけではなく、オイシクない仕事も進んで受けろというのは正論ではあるかもしれないけれど、受ける立場から考えれば少々辛くはないだろうか。

彼ら弁護士は、士族とも呼ばれる人々なので、「志(こころざし)」を問われても仕方ないのかもしれないが、志だけに依存するのは制度として瑕疵(かし)はないだろうか。国選弁護がオイシクなく、モチベーションが高まらないのでは弁護される方はたまらない。また、腕のいい人、実績のある人を付けてもらえるようでもあるべきではないか。だとすれば、それなりの報酬を払えばいいという考え方もできる。

「そんな、また税金を使うのか?」という指摘もあろう。そこはもう一つ、日経新聞が過去に「春秋」欄でうまい指摘をしていたのが思い出される。これも既にバックナンバーはネットで読めないが、道路特定財源についてだ。「地方にはまだまだ道路が足りない。道路の整備や架橋も、無医村から患者を急送するときなどには欠かせない。」という論に対して、その「道路や橋の金を診療所や医師の確保に使うという発想はないのか」という指摘だ。これもオモテとウラからものごとを見た例だろう。そして、道路と国選弁護人の二つを繋げてみてみれば、特別会計という、いわゆる“税の埋蔵金”が浮かび上がってくる。ここを報酬の手立ても考えられるのではないだろうか。

オモテとウラを考えるということは、実はマーケティング的にも極めて重要なポイントなのだ。例えば、環境分析の定番的フレームワークである”SWOT分析”。自社を取り巻く内外の環境を、外部環境の「機会(Opportunity)」と「脅威(Threat)」、内部環境の「強み(Strength)」と「弱み(Weakness)」に分けて分析していく手法だ。つまり、内外の環境をポジティブ・ネガティブに分けてみていくわけだ。

一見簡単そうに見えて、実は難しいのが、ポジ・ネガの分け方だ。一つの事象を見て、これはポジティブなのか、ネガティブなのか迷うことがある。迷った末にどちらかに、入れ込む。すると、ものごとのもう一方の側面がすっかり抜け落ちるのである。冒頭のワインの例で言えば、分析は楽観的でも悲観的でもいけない。常にニュートラルな立場でものを見ることが必要だ。故に、機会とも脅威とも取れる事象はその二つのとらえ方を挙げておくことが必要なのだ。

弁護士は多すぎなのか、まだまだ足りないのか。道路特定財源はどう使われるべきなのかをここで論じるつもりではないのだが、異論争論大いに結構だと思う。

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