組織の時代: 二面性の理解が組織運営のカギ 

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『グロービスMBA組織と人材マネジメント』の第1章から「組織の時代」を紹介します。

我々の生活は組織なしには成り立ちません。ビジネスパーソンであれば、組織で結果を残すことで金銭を得、その金銭を使って、企業が用意したさまざまな商品・サービスを利用するという人が多いでしょう。さて、組織運営の難しさとして、組織は理屈どおりに動かないということがあります。本来営利企業などは、営利を目的に合理的に動くべきはずなのですが、そのような企業は稀です。むしろ、個人の感情の赴くままに非合理的な行動をとる企業も少なくありません。それは一見、理に適っていないようですが、古代より共同体社会を営んできた人間という動物の性に照らせば、実は一面の合理性があるのです。組織運営に当たっては、そうした人間の「性」を正しく理解しておくことが極めて重要と言えるのです。

(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、ダイヤモンド社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

組織の時代

人間が複数集まり協働することは、おそらく人類が誕生して以来のものだが、いまのような大規模組織が人間の歴史に出現したのは20世紀初頭である。そして21世紀の現在、我々は大半の時間を組織のなかで過ごしている。たとえば、日本においては、大半の人が病院で誕生し、学校という組織で教育を受け、経済的な基盤を得るために組織で働く。たとえ組織で働いていなくても、我々の生活は組織なしでは成り立たない。朝食のパンは工場で大量生産され、トラックでスーパーに運ばれ、店頭に並べられる。組織間の巧みな連携があって初めて、我々はトーストを口にすることができる。

このように組織は社会を構成する不可欠な要素であり、とりわけ企業組織の活動は、我々の生活を豊かにすることに貢献している。さらに、近年の規制緩和の流れのなかで、いままで以上に企業組織が社会活動の中心的役割を担うことを期待されるようになっている。組織が適切に機能を果たすことは、あらゆる面で重要なのだ。

組織の二面性

社会には大きく共同体と人工的社会の2つの分類があるが、組織と人材のマネジメントを考えるに当たって、企業組織はその両方の特徴を合わせ持っていることを理解しておかなければならない。

共同体としての組織

共同体(コミュニティ)は、メンバーになるかどうかを個人が決めることができない組織である。その典型は、親子など家族を基本とする血縁社会である。同じ集落に住む住民同士など、地縁で結ばれる社会も血縁社会とほぼ同じ特徴を持っている。

共同体はその構成員の相互扶助のなかで成立している。農村社会であれば、入会地を共同で管理する。それにより、自然災害の発生を最小限に防いだり、森林資源を活用したりすることができる。共有財産を協力して守ることによって、生活が成り立つ。

したがって、共同体の構成員は個人的な事情よりも共同体の事情を優先させる必要がある。このような共同体のあり方は農村社会に限らない。都市部においても、小学生の登校や下校時に地域住民が交通事故から守るために、あるいは犯罪に巻き込まれないように、ボランティアで監視するという活動が見られる。

人工的社会としての組織

人工的社会は、個人が自分の意思でメンバーになるかどうかを決めることができる組織である。代表的なものとしては、学校、会社などがある。原則論ではあるが、どこの学校で勉強するかは本人の希望によって決定できる。どこの会社で働きたいかも自分で決められる。

これらの組織は、共同体とは違い、何かの目的を追求するために人工的に構成された人為的社会である。自分の意思により組織メンバーになれるということは、同時に組織からの退出も可能ということだ。つまり、出入りが自由なのである。

本書で対象とするのは、こうした人工的社会としての組織であり、特に営利を追求する企業組織を前提として議論を進める。したがって、組織の目的に達成に貢献しない、さらには障害となるような要素は、原則に従えば排除されることになる。これが実行されなければ、組織目的は達成できないし、存続そのものが危ぶまれるからだ。

とは言うものの、営利を追求する人工的社会である企業組織においても共同体的な性格は強く残っており、これを無視したマネジメントは成立しない。ここに企業経営の難しさがある。

会社組織の二面性

会社という組織は営利追求を目的としており、利益の獲得に失敗すれば、市場から退場せざるをえなくなる。したがって、意思決定や行動は一見きわめて経済合理性に基づくように思われる。しかし現実に目を向けると、必ずしも合理的な行動ばかりではない。

政治的な駆け引きがあるかと思えば、強い連帯感や仲間意識の下に不祥事を隠蔽することもある。あるいは、財務状況が芳しくなく、給与が半分になっても懸命に会社のために働く社員もいる。いずれの現象もけっして例外的なケースではない。

このことは、会社組織においても、人間が単純に経済合理性だけをルールとして行動するわけではないことを示している。そこには、共同体のルールが生きている。たとえば、相互に協力し合うこと、利他心から行動することなどである。たとえ営利目的の組織であったとしても、人間が他の人間と一緒の空間を共有し、行動を共にすることにより、共同体としての特徴が生まれてくるのだ。

(本項担当執筆者: グロービス経営大学院教授 佐藤剛)

次回は、『グロービスMBA組織と人材マネジメント』から「組織の戦略と行動」を紹介します。
◆グロービス出版

 

東京大学理学部卒、同大学院理学系研究科修士課程修了。戦略系コンサルティングファーム、外資系メーカーを経てグロービスに入社。累計150万部を超えるベストセラー「グロービスMBAシリーズ」の著者、プロデューサーも務める。著書に『ビジネス仮説力の磨き方』『グロービスMBAビジネス・ライティング』『グロービスMBAキーワード
図解 基本フレームワーク50』(以上ダイヤモンド社)、『[実況]ロジカルシンキング教室』『[実況』アカウンティング教室』『競争優位としての経営理念』(以上PHP研究所)、『利益志向』(東洋経済新報社)、『ロジカルシンキングの落とし穴』『バイアス』『KSFとは』(以上グロービス電子出版)、共著書に『グロービスMBAマネジメント・ブック』『グロービスMBAマネジメント・ブックⅡ』『MBA定量分析と意思決定』『グロービスMBA事業開発マネジメント』『グロービスMBAビジネスプラン』『ストーリーで学ぶマーケティング戦略の基本』(以上ダイヤモンド社)など。その他にも多数の共著書、共訳書がある。
グロービス経営大学院や企業研修において経営戦略、マーケティング、ビジネスプラン、管理会計、自社課題(アクションラーニング)などの講師を務める。グロービスのナレッジライブラリ「GLOBIS知見録」に定期的にコラムを連載するとともに、さまざまなテーマで講演なども行っている。

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