キャンペーン終了まで

割引情報をチェック!

世界のリーダー不在 テクノロジーで「内向き」打破

投稿日:2016/03/18更新日:2019/04/09

※この記事は日経産業新聞で2016年1月29日に掲載されたものです。
日本経済新聞社の許諾の元、転載しています。

世界経済フォーラムの年次総会であるダボス会議。今年は中東問題や欧州の移民問題、イノベーションの広がりなど世界の政治・経済が激動する中で開かれた。会議を振り返って浮かぶキーワードは(1)内向き(2)漂流(3)テクノロジーへの期待――だ。期待と失望が交錯した印象だ。

まず国際政治が完全な内向き状態になっていることに失望感を覚えた。

米国はバイデン副大統領、カーター国防長官、ケリー国務長官、ルー財務長官と4閣僚がそろう豪華な陣容だった。だがダボスで最も語られたのはその場にいなかったドナルド・トランプ氏だ。大統領選で共和党の指名を争っている人物が最たる話題となることが米国の内向きさを象徴していた。

国際問題はリーダー不在のために漂流し続けている。現在、世界が直面する国際問題は中東の国家破綻と過激派組織「イスラム国」(IS)の台頭、イランとサウジアラビアの対立、そして欧州の不安定化だ。

欧州は今や「学級崩壊」状態だ。問題児のギリシャはクラスに残ったがいまだに不満をこぼしている。欧州連合(EU)議長国のオランダは「学級委員長」だが、議長国が半年ごとに代わるためリーダーシップを発揮できずにいる。フランスはテロ対策など内政で手いっぱいだ。「影の番長」とも言えるドイツは原理原則を主張するだけ。学級崩壊の解決役が期待される英国はクラスからの離脱を検討している。

その欧州に中東・北アフリカから移民という大量の「転校生」が入ってきた。だがクラス全体での受け入れ策が見つからない。各国が自国を守るための個別政策(国境管理の導入)を始めるなど学級崩壊は加速している。

中東は「学校」そのものが壊れて転校者が続出している。僕は質問してみた。「誰がどのようにすればISの問題が解決できますか?米欧が果たすべき役割は何ですか?」。驚くことに明確なビジョンを持つ者は誰もいなかった。米欧は意図的に中東の問題から目をそらし、中東自身も全く対応できていない。

失望感が漂う国際政治・社会問題とは対照的なのがテクノロジーの話題だ。今回のダボス会議の主要テーマの1つ「第4次産業革命」にふさわしく、激動と期待の予感で満ちていた。

大企業は強い危機意識を持って変わろうとしていた。米ヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)の最高経営責任者(CEO)メグ・ホイットマン氏は「スピード」を最重要課題として挙げ、米アルコアのCEOは3Dプリンティングとあらゆるモノがインターネットにつながる「IoT(インターネット・オブ・シングス)」による製造プロセスの革命を説明した。米ゼネラル・エレクトリック(GE)は「2020年までに世界のトップ10ソフトウエア企業へと変身する」と宣言していた。

ベンチャー企業も元気だ。民泊仲介サービスの米エアビーアンドビーや動画配信の米ユーチューブのほか、サイバーセキュリティー会社、SNS(交流サイト)会社、人工知能(AI)会社、クラウド会社が存在感を発揮していた。インドのIT(情報技術)企業も目立った。

テクノロジーに対する政府の姿勢の変化も印象的だった。昨年までの「取り締まってやろう」というスタンスから、今年は「うまく活用してやろう」というものに変わっていた。今や国レベルでもテクノロジーによるイノベーション、つまり「テクノベート」の競争をしている。

リーダーが積極的に顔を見せることの重要性も増している。隠れていると周囲から不信感を招く。SNSで発信し交流することがリーダーの重要な責務になっている。「内向き」で「漂流」する世界を変えていくのは「テクノロジー」の知見を持ったリーダーだ――。そう強く感じたダボス会議だった。

新着記事

新着動画コース

10分以内の動画コース

再生回数の多い動画コース

コメントの多い動画コース

オンライン学習サービス部門 20代〜30代ビジネスパーソン334名を対象とした調査の結果 4部門で高評価達成!

7日間の無料体験を試してみよう

無料会員登録

期間内に自動更新を停止いただければ、料金は一切かかりません。