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インダストリー4.0、ドイツとアメリカの動きと日本企業の進むべき道

投稿日:2016/03/16更新日:2021/10/22

インダストリー4.0 ~第4次産業革命が日本の”ものづくり”を根底から変える~[3]

秋山: 今度は会場の皆さまに伺ってみたい。ここまでの議論を聞いて、「自分はこういうことをしてみたい」とか、パネリストの御三方に対する質問や要望が何か浮かんだ方はいらっしゃるだろうか。

会場(平手晴彦氏:武田薬品工業株式会社コーポレート・コミュニケーションズ&パブリックアフェアーズ オフィサー): インスパイアされた。お話を伺うなかで、「会社のどの部分が最も大きな付加価値をつくっていて、どの部分がコンベンショナルというか、昔から継続しているだけの状態になっているかを改めて見直す必要があるな」と。そのうえで、最も大きな付加価値をつくる、あるいはつくることができそうな領域へのリソース移動を加速させなければいけないとも思った。そこで島田さんにお伺いしたい。シーメンスさんはどのようにしてそうしたリソース移動の実務的作業を進めるのだろう。ドイツでも労働組合等の問題は難しいと思う。1年半ドイツでご覧になって知り得たところがあれば教えていただきたい。

島田: まず、日本がアメリカの真似をしようとしても無理がある。Googleのような会社を日本でつくろうとしても簡単にできるわけはないし、それはドイツに関しても同様だと思う。先般、シーメンスのカンファレンスでダイムラーのディーター・ツェッチェ社長がおっしゃっていたが、同社は今、「失敗を許容し、失敗させる」というチャレンジをしているそうだ。ダイムラーは非常に重厚な会社で、英語で言うところの‘flawless’というか、とにかく完璧な車をつくらないと言われていた。「そういう人たちはどうしてもコンサバティブになる」と。それを、失敗してもいいからチャレンジさせるようにすることが、今は非常に重要だということをおっしゃっていた。

で、ご質問をいただいて私はまず思ったのだけれども、IoTは本当に興味深い。なぜなら日本が勝てるかもしれないから。メカトロニクスで非常に複雑なシステムが絡んでいるし、他の領域というか、これまでに出てきたバズワードのお題と少し違う。IoTであれば日本が得意とする摺り合わせを含めたメカトロニクスで、プラットフォームにいろいろな部品を供給できる可能性が高いと思う。それを日本人も心の奥底で分かっているからこそ、インダストリー4.0というものに大きな興味持つのだと思う。

つまり、「本当はこういうことをしたほうがいい」というのは、実は皆が考えている。ただ、たとえば日本企業の誰かにそういう話を伺っても、「いや、そんなことはできません」と言われることが多い。「できるか否かでなく、本当はどうしたいらいいの?」と聞くと、「本当はこうしたらいいけど、それはできないでしょ?」となるのに。結局、皆が答えを持っているのに今までのしがらみや流れのなかでできないと思って、そのまま流してしまっているということだと思う。でも、本当にやらないといけないのならやればいい。でも、朝早く起きて毎日走ったほうがいいんだけど、やらない。きちんと体質改善しようと思ったら、それをやればいいだけなのに。変えるのは習慣だ。1~2日でダイエットはできないし、本当にやらなければいけないことをやるだけだと思う。

で、シーメンスはというと、これはすごく面倒で大変だけれども、各部門でファイナンスのビューを明確に出している。この点、日本はどんぶりだ。誰が本当にお金を失っているのかよく分からない。でも、それだと決断しようがない。たしかにシーメンスの仕組みは窮屈だし、レポーティングも厳しい。皆、ねちねちと「ここのコストはお前のコストだろ?」なんて、もう日本人からしたら考えられないようなことをしている。ただ、経営ビューは透明性があって、「これは必要がない」「これはきちんとしたパフォーマンスをしていない」といったことが明確に分かる。「それならなんとかしよう」となるよう見える化しているわけだ。まずはそれをしないとガバナンスの効かせようもないと思う。ひとつの例だけれども、シーメンスはそんなことをしている。

菅原: 私は役人なので個別のビジネスは分からないが、マクロな日本経済のデータを見て不思議に感じることがひとつある。在庫のことだ。日本の在庫率の高さはアメリカやヨーロッパの一部と比べても圧倒的に高い。最近、民間GDP予測がほとんど外れる理由として、この在庫変動が読めないことも影響していると思う。GDPにおける在庫率があまりに高く、消費や投資を見てもその変動が見えないからだ。なぜか。販売統計は一定でも、何が売れるのかはまったく分からない。ただ、日本企業はお客様第一。BtoCはCが第一だし、BtoBは親会社が第一だ。だから恐らくはありとあらゆるものに関して在庫をどこかに用意して、顧客のニーズにクイックレスポンスをしようとする。それは、ある意味では日本企業が持つ競争力の源泉だった。

でも、そうした在庫率の高さがキャッシュ・フローを悪化させ、在庫場所の確保等でも日本経済を邪魔している。これは個別企業でも同じだと思う。在庫が増えれば生産を減らすということで、在庫が生産も変動させる。それが労働者の労働時間も変動させる結果、非正規でパートさんにお願いせざるを得ないという話にもなる。あらゆる面で、あるいはマクロを見ても、実は在庫が日本経済を大いに邪魔していると思う。良い面だってあるかもしれないが、これがそろそろ大きな重荷になってきていた。

そこで、個別企業が在庫率を圧倒的に減らす、もしくはゼロにするという行動をとりはじめた瞬間、私はインダストリー4.0やIoTの日本版が加速度的に進むのではないかと思っている。そうなるとバリューチェーン等で縦も横もつなげなければいけなくなるし、ビッグデータを使って予測しなくてはいけなくなる。「注文をもらって3日で生産すれば在庫はゼロになるじゃないか」といった発想も出てくるだろう。でも、今は在庫を抱えることで皆が安心感を持っている。でも、結局それが個別企業を苦しめ、日本経済の変動幅を広げ、雇用慣行にも影響しているのではないか。だから、企業経営者の方々には在庫ゼロのキャッシュ・フローマネジメントに徹することも考えていただきたい。そうすれば巡り巡ってマクロにも相当いい影響を与えるのではないかと思う。

秋山: お客様のきめ細かく多様なニーズに在庫でクイックレスポンスをするというのは一種のビジネスモデルであり、コンセプトだ。ただ、マスカスタマイゼーションではお客様から入った個別オーダーを、大量生産のようにオペレーションするラインで1品ずつ生産し、デリバリーする。従って、こちらも限りなく在庫がゼロに近づく。このオペレーションは、突き詰めると既存のビジネスモデルやコンセプトと完全に異なっているわけだ。また、他セッションでは、たとえば小売とメーカーと卸がそれぞれ在庫を持っているが、それをITでつなぐことによってチェーン全体で在庫をコントロールすれば、さらなる最適化が実現するとの議論があった。「それを実際にやるのが難しいんです」といった現実論はあったものの、いずれにせよ、そうした課題があるということは発展の余地もあり、改善の種というか宝の山といった見方もできるように思う。

インダストリー4.0、アメリカの動きと日本の役目は?

会場: 今日はドイツの話をたくさん伺ったが、一方で、たとえばGEはファイナンス部門を売って製造業に回帰をするといった話も聞く。アメリカとドイツの違いという視点で、今後起こり得ることについてご示唆をいただけたらと思う。

島田: アメリカはかなり慌てたと思う。ドイツはもともと、デジタル的なことでとんでもない視点からビジネスモデルをつくってくるアメリカへの対抗策として、長年かけてどうしたら良いかを研究し、インダストリー4.0をつくった。それに対してアメリカ側が、まあ、僕の見方としては慌ててIIC(Industrial Internet Consortium)をつくった。それで、たとえばシーメンスでは「GEは素晴らしいマーケティング」をしていると言っている。そんな言い方はかえって失礼かもしれないが、ジョー・ケーザーに言わせると「IICの発表でGEは株価が30%上がった。うちも同じことをしているのにきちんと伝わらない。俺たちは何をやっているんだ」という話だけれども。

ただ、その成り立ちというか、立脚するところは両者で少し違うように思う。IoTをはじめとした各種テクノロジーで在庫をゼロするといったことは皆がやりたい。ただ、実際にはそんなことが簡単にできるわけもない。でも、そういうことをメディア等がバズワードで次々発信するから、ドイツとしては「何を言ってるんだ。言い過ぎだろ」と。「個別のものを真面目にコツコツ磨いた結果、最終的にそういうことができるようになるのに」と言っている。今はなにかこう、「すぐにクラウドへ全データを上げろ」なんて話になっていて、もうIT企業の陰謀としか思えなくて(会場笑)。すいません(笑)。「IoTでもっとセンサをつけろ」というのもセンサメーカーの陰謀かもしれないと(会場笑)。

だから、日本やアメリカの盛り上がりを見るにつけ、正直、あまりよろしくないなと思う。そんなものじゃない。まずは真面目にひとつずつ磨く。本来なら今までやらなければいけなかったのに先延ばししていたことをきちんと行う。それで、最終的には先ほどお話ししていたようなことができるよう、企業体質を改善しようというのがドイツの基本的な考え方だ。たとえば「工場内のオートメーションをコツコツ進めよう」と。

それに対してアメリカは「このままじゃまずい」と。彼らが一番恐れているのは、そうしたことを進めるうち、少しずつ深いレベルで標準化が行われていくこと。コツコツ進めるうち、「これは無駄だ」といった話も出てきたりして。だから「その競争に負けたくない」という大きな視点から入ってきている。それで、IIC会長のリチャード・ソレイさんという人は、「とにかくインダストリー4.0と一緒にやりたい」と言っている。それでドイツにIIC支部もつくり、インダストリー4.0と懸命に話をして今はリファレンスモデルができてきた。スタンダードを集めたうえで、「どんなものをくっつければ標準化できるか」と。それをドイツではフラウンホーファー協会が出して、アメリカでもIICが出している。この2つには驚くべき相似性がある。もうほとんど一緒と言ってもいい。

そんな風に、今はとにかくグローバルにスタンダードを分けないようにしようとしているところだ。だからIICの人も、メディアが毎回アメリカ対ドイツの構図で伝えることにすごく困っている。「そんなことをやりたいんじゃない」と。その意味では同じものになっていくと思う。だから日本もリファレンスアーキテクチャはそのまま活用して、そのなかで自分たちにバリューが出せるところをつくり込んでいくことが極めて重要になる。勝手に新しいスタンダードをつくっては絶対にダメだと思う。

秋山: そこで日本は具体的にどう絡んでいくべきだろう。政府の報告書では、今までは「オールジャパン」といった言葉を見かけることも多かったが。

菅原: 標準化に関しては国が何かをしても皆が乗ってこない限りどうしようもない。規制緩和の話や「ルールはこうします」「独禁法上の扱いはこうします」といった話はできるけれど、標準化を含むプラットフォームづくりは企業サイドが動かない限り動かないと思う。やっぱりそこは一番の問題だ。ドイツはいくつかの主要企業による意思疎通で協調すべきところはするし、アメリカはドミナントが一気に「この指止まれ」で進める。日本はその中間というか、ドイツに近い形でやるのが近道だとは思う。

ただ、やっぱり主要企業の経営者の方々が胸襟を開かないがゆえに、なかなかドイツ方式にもいけない。それで、下手をするとアメリカのスピード感あるビジネスモデルに切り崩される。プラットフォームをつくったGoogleやAmazonやAppleに、「いついつまでにこちらへ乗ってください。時間がありませんよ? 時間が過ぎたら高くなりますよ?」と言われて個別に切り崩され、単なる部品またはサービス提供会社に、言い方は悪いけれども“成り下がる”リスクが常にある。

だからこそ、日本の良いところをしっかりと把握したうえで非競争領域を早く特定する必要がある。別に「日本人だから」「日本企業だから」という話でもないけれど、せっかく同じ国で隣り合う同じような人間がビジネスをしているなら、良い点はしっかりつなげ、競争領域と非競争領域とを早く特定すべきだ。我々としてもそこでできるだけお手伝いしたい。ただ、やはり大事なのは経営者の方々の決断。恐らく数十人の経営者の方がその気になれば、結構なことができるのではないかなと思う。

秋山: 遠藤さんはそうした点で、日本の経営トップにどのようなコンサルテーションを行っていくお考えだろうか。

遠藤: なかなか難しい。日本ではサラリーマン経営者が多いので。会社に対する忠誠心は高くて自社を守る発想はある一方、業界や日本社会を変えようといった大きな視点を持ちにくい。でも、たとえばセブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文会長が打ち出したオムニチャネルというのはもう流通革命だ。インターネットを使って、今までとはまったく違う利便性をお客様に提供しようとしている。セブン-イレブン店舗がプラットフォームになり、そこにアナログがあって、しかもデジタルを乗せながら、セブン&アイのものはなんでも買える形にした。今後はそこに過疎地域での給食や配食といった、地域に貢献するビジネスもつながるのだと思う。そんな風に、今は製造業以外のほうがITの環境をうまく使って変化を起こそうとしている。そうしてビジネスチャンスをつくると同時に、社会の問題を解決するような新しい事業に取り組んでいる。

だから、製造業の方も業界で閉じるのでなく他の産業へ開いて欲しい。物流業であるヤマト運輸も今はさまざまな取り組みをオープンマインドに進めている。今は製造業のほうが過去の成功体験を否定できず、自分の会社で閉じている状態だ。流通や物流を見ても今はそういう時代じゃないことが分かる筈だし、他業界から学ぶべきだと思う。それを誰かがやりはじめたら、たぶん日本人の特性として皆がそこへ乗っかるのではないか。そういうことを誰かにパイオニアとしてやって欲しい。

島田: 正直に言うと、民間のサラリーマン社長には荷が重いのかなと(会場笑)。そこで国に対してお願いがあるとすると、皆が集まることのできる実験場を、お金を出してつくっていただけたらと思う。そうしたプラットフォームは特に中小企業の方にとって大変なメリットだ。そこに日本企業の製品もすべて入れて、世界標準とされているような、インダストリー4.0でやっているようなものやIICがやっているテストベットに組み込んでいく。彼らは彼らで「これがグローバルスタンダード」と勝手に決め打ちしたものでやっているから、そこに日本企業のものもつなぐ。そうして日本のテストベットでもグローバルにつながるというものを、お金を出して実現して欲しいと思う。

そうでもしないと、「自分たちでやりなさい」と言われても、やっぱり自社がかわいいからやらないと思う。で、それができたら今度はユーザーサイドから、それを使って実験をするヤマトホールディングスさんのようなところが出てくると思う。そうして流通もアパレルも、あるいはまったく異なるインターネットビジネスもそのプラットフォームを使う流れになれば、お金を出しても十分ペイするのではないかなと感じる。

菅原: IoT推進コンソーシアムのひとつの出口は、今言ったような大実験場をいくつかのフィールドに分けてつくるというものだ。ただ、普通の民間ビジネスに我々がお金を出す理屈はないから、社会の課題解決にお金を出すというイメージ。たとえば「医療現場でどのようにITや医療機器をつなげ、患者のQOLを高めて医療費を下げるのか」と。自動運転も同じ。東京の真ん中で自動運転を行うのが最終形かもしれないが、まずは過疎地における高齢者の方々の安全な移動、高齢運転者の支援といった領域に出したい。あるいは物流なら高速道路だけを隊列走行するといった活用でも、我々がお金を出して問題解決に取り組んでいただくことはあり得ると思う。

IoT推進会議としては、小企業やベンチャーの方も含めてそういう方々を積極的に発掘する形で大実験フィールドをいくつかつくりたい。そして2~3年で、できれば2020年ぐらいまでに、いろいろなビジネス体験ができるようになれば、オリンピックと併せて世界へ発信できる。そこでビジネスチャンスを嗅ぎとってもらって、「あとは純粋な民の世界で活用してもらえたらなあ」と。それがひとつの出口だと思う。

秋山: 物事が前へ進むイメージが湧いた。ただ、そのように新しい技術や手法を活用するとき、各種規制を緩和または撤廃しなければいけないケースも出ると思う。で、それを実際にやろうと思ってもなかなか…、私自身も少しそこでお手伝いをしたことがあるが、小さな規制をひとつ変えるにも大変なエネルギーと時間が必要になる。そのあたりで民間や国民に「こういう部分で手伝って欲しい」「こういうことを期待する」といったお話があれば、そちらも伺っておきたい。

菅原: 日本人は安全や安心に大変敏感で、何かひとつトライアルが失敗すると皆で叩いて規制強化の理屈をつくり出すことがある。そこはもう少し冷静に、客観的に見て欲しい。なんらかの形での責任の所在を明確にしてコンペンセーションを誰かが行う形にすれば、「トライアルはいいんだ」と。マスコミ含め、あまり失敗を取りあげて叩くのではなく、「失敗もあり得る」という前提でビジネスを新しく展開するコンセンサスが必要だと感じる。役所で規制を司っている人と話をしても、「万万万が一、1億ぶんの1の確立で起きる可能性があるから、この規制は外せません」と言う。「1億ぶんの1ならいいじゃないか」と、社会として受容する必要もある。普通に歩いていても事故に遭う可能性を考えたら、もちろん各種安全対策は最大限に施すけれども、トライアルは皆で認め合うこと。で、失敗も今後の参考材料にする。そうして皆で叩き合うのは止めると決めたら、日本はまだ結構いけるのではないかなと思う。

会場(青井浩氏:株式会社丸井グループ代表取締役社長代表執行役員): お客様との対話を通して「ニーズの本質ってなんだろう」ということを追求し、それで分かってきたことひとつに、「私仕様」「自分仕様」というキーワードがある。これ、今日のお話にあったマスカスタマイゼーションと「対」だと思う。今回はそれが国や産業や企業の競争力という視点で議論されたが、これは消費者のニーズでもある。従って、私どものような小売がメーカーさんにそれを求めることで、コラボレーションのような形でやっていく必要もあると感じた。メーカーさんが自ら大量生産のモデルをひっくり返して行っていくのは少し難しいのかなという気もするので。ドイツでは、そのようにして小売側からの要請で生産システムが一変したような事例はないのだろうか。

遠藤: ドイツは産業をプル型モデルに変えようとしている。日本のモデルはプッシュ型。供給者の論理で、供給者の都合の良いように生産し、それが在庫になり、無駄を抱えながら売っていく。それでビジネスが回る時代は終わる。インダストリー4.0とはプル型モデルに変えることでもある。それが最も効率的だし、「それを解決するのがIoTでありビッグデータになる」と。ただ、今はそうしたモデルに変わるためのデザインがまだできていない。なぜなら工場があるから。そこに人がいて設備があって、メシを食わせないといけない。実際、概念としては「プッシュ型からプル型へ」ということが言われ続けているけれども、変わっていない。それを変えるため、まさに小売業の方と一緒に進める必要があるのだと思う。もっと大きな枠組みでサプライチェーンやバリューチェーンを再設計しないと。メーカーだけでは絶対にプル型に変わることはできないので、ご指摘の部分でぜひリードしていただけたらと思う。

秋山: 「第4次産業革命が日本のものづくりを根底から変える」とすれば、それは製造業のなかだけの話ではなくなるということは、ひとつ、本セッションで共有できたことだと思う。では、御三方から最後にそれぞれメッセージをいただきたい。

遠藤: 今お話しした通りになる。ひとつは、それぞれの会社が自分の殻を超えて10~20年、あるいは30年後かもしれないが、ビッグピクチャを描くこと。それは若い人に描かせないといけない。これが第一条件だ。そしてふたつ目は、それを基にしてできるところからもうはじめること。そのふたつをお願いしたいと思う。

島田: 「インダストリー4.0、恐るるに足らず」と。自分が「今本当にやらなければいけない」と思っていたことで、「けれどもやっていなかった」ということをやれば、負けることはないと思っている。

菅原: 日本も捨てたものではない。日本の最大の競争力は、会場からも少しご指摘をいただいたが、消費者だ。日本には世界に冠たる消費者がいて、日本の消費者に満足を与えることができたら世界のどこでも満足を与えることができる。BtoCのみならずBtoBでも同じ。また、少子高齢化やエネルギー問題といった社会的課題が多い点でも日本は世界をリードしている。それはニーズやビジネスチャンスの塊でもあるから。だから、気付かないところで世界は皆日本を目指してきている。GoogleもAppleも欧州企業も、日本市場へ来るのには理由がある。日本の消費者を満足させて日本の課題を解決すれば将来は世界の課題も解決できる。そういう大変有利な立場に我々はいるのではないか。この恵まれた機会チャンスを逃す手はないと思う。

秋山: G1経営者会議2015全体のテーマは、「テクノロジーが実現する成長戦略」。そこでIoTやAIやインダストリー4.0といったトピックを各セッションで取りあげている。ただ、本セッションでも感じられたのは、そうした同時多発的に起きている各種テクノロジーがひとつのきっかけとなり、既存の経営のスタイルが議論されていくということだ。ガバナンス、サプライチェーン、生産性、さらにはワークスタイルの問題等々、今はいろいろな形で私たちが抱える経営の課題が浮き彫りになってきた。そこで、今は経営者が各フィールドで課題を解決するためのビジョンやピクチャーをフリーに描くことができる、ある意味では素晴らしいタイミングであるとも思う。

経産省トップの方のメッセージを聞いても、国はその背中をしっかり押してくださるということを今日は感じることができたのではないだろうか。その意味ではラッキーな時代なのかなと思いつつ、各課題を皆さまにはお持ち帰りいただき、それぞれのフィールドでご活躍いただきたい。では、素晴らしいお話をしてくださったパネリスト御三方に拍手をお願い致します。ありがとうございました(会場拍手)。

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※2015年11月3日開催

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