トリンプが掘り出した「不」の字(アンメット・ニーズ)は何だったのか? 

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女性下着メーカーのトリンプ・インターナショナル・ジャパンは、05年に百貨店販路向けに立ち上げた、40代以上を中心顧客に想定したブランド「プレジアフォルテ」に注力しているようだ。その狙いは何だろうか。そして、どこに勝算を見出しているのだろうか。

中高年ターゲットに後手

日経MJ3月4日号の記事によれば、女性下着市場の先行きは厳しそうだ。「14年の女性下着の市場規模(小売ベース)は前年比2.9%減の6440億円だった。少子高齢化などで3年連続の減少になった」という。その中で、「トリンプの中心顧客は現在20代~40代。少子化によって中高年の存在感が高まる中で、『若い人に比べて購買力が高い、50代以上の新規顧客を取り込まなければいけない』との危機感は強い」(同紙記事より)という状況であったようだ。

ただ、購買力が高いからといって中高年ターゲットにシフトすることは、若年層の離反を招く恐れがある。しかし、「中高年は最大手のワコールが先行している」(同紙記事より)という状況であり、巻き返しが必須。また、同社の強みとしては、別ブランドとして若年層向けには「アモスタイル」ブランドを持っている点にある。「アモスタイル」は若年層が足を運ばない百貨店ではなく、主に路面店やショッピングセンターで店舗を拡大し、手ごろな価格と可愛らしいデザインで人気を博している。百貨店に強いワコールとは、その来店客層からして中高年の争奪が主戦場になるのである。

中高年女性の抱えた「不」の字

連載第15回で【「ニーズ」とは、「“現状”と“理想的な状態”のギャップ」である。ギャップのあるところには「不」の字が隠れている。「不足」「不満」「不自由」「不明確」などなど・・・】と記した。「不の字」を別の言い方をすれば「アンメット・ニーズ」でもいい。

では、今回のターゲットである中高年女性の「不」はどこにあったのか。トリンプが実施した調査では、ブラジャーの選択基準が35才で「デザイン」と「付け心地」の比率が逆転するという。

同記事ではトリンプの商品開発担当シニア・マネージャーが「若い世代は多少の窮屈さをがまんしてでも胸をきれいに見せたい人が多いのだが、年を重ねていくほど、着け心地を重視する女性が増える」と語っている。具体的には「肌は加齢と共に乾燥しがちになる。そのため、年齢を重ねるほど肌触りや肩ひもの食い込みなどを気にする人が多いという」(同紙記事より)ことのようだ。では、この着け心地を解消すれば、中高年女性の「不」は解消されるのだろうか?

「上品な大人の女性を演出できる」という価値?

着け心地にこだわった中高年向けの下着は大手のワコール、トリンプに限らず数多い。店頭販売ではなく通信販売チャネルまで広げてみれば、数に限りがないほどだ。例えば大手通販化粧品のファンケルが派生事業として取り扱っているシリーズは、「痛くない。かゆくない、その先の美しさへ」というキャッチコピーにあるように、文字通りかゆい所に手が届く機能性で人気を博している。しかも百貨店ブランドと比べれば桁一つ違うぐらいのお手頃価格である。

強大なリーダー・ワコールに立ち向かい、お手頃お手軽な代替品である通販ブランドとも戦うトリンプの秘策は何だろうか。少し長くなるが、日経MJの記事をそのまま引用しよう。「中高年の下着は従来、ベージュなどの落ち着いた色が中心だったが、プレジアフォルテではピンクや青など彩り豊かな色を取りそろえる。加齢でくすんだ肌が美しく見えることで、『上品な大人の女性を演出できる』と考える。レースや花柄なども取り入れ、着用時の見た目も重視する」ということだが、それはどのような効果が期待できるのか?

女性下着の製品特性分析

連載第1回で、「製品特性分析」と「プロダクトライフサイクル」の関係を述べた。製品特性分析は、普及論で有名なE. M. ロジャースの「普及曲線」と一緒に考えるとより意味合いがわかりやすい。市場の普及は導入期→成長期→成熟期→衰退期という流れを経る。同時に、導入期では実現したい「中核」的な便益、成長期では中核を実現するために欠かせない「形態」が求められ、成熟期以降では中核の実現には直接関係ないが、あると価値が高まる「付随機能」が求められる。

現在、女性下着は洗練され、機能も高まっている。成熟期であることは間違いない。いや、課題である人口減少・少子化を考えると衰退期ですらあるかもしれない。そうなるといずれにしても付随機能勝負である。

下着の価値を製品特性で考えれば、中核は「肌を覆う」だろう。形態は今日では「肌触り良く、体型に合わせて」ぐらいは最低限実現したい価値となるはずだ。その上で、付随機能としては「自分をより美しく粧う」という要素が入ってくるのではないだろうか。

中高年女性の下着に関するインサイト(深層心理)構造

上記の図に記したとおり、製品特性を別の角度から見れば、中核・実体は「機能的便益」であり、付随機能は「情緒的便益」である。つまり、今まで中高年女性向けの下着においては、形態・機能的価値までしか提供していなかった。そこに「不足」「不満」という「不の字(アンメットニーズ)」を見つけて勝負をかけたのだ。それをターゲット女性の心理として構造化してみると、下図のようになるだろう。

百貨店のトリンプの売場では「プレジアフォルテ」ブランドのピンクや青など色鮮やかなブラジャーやショーツが、ずらりと並び売場を彩っているという。果たして、ターゲットである中高年女性の「不の字」は解消され、同商品は競合を追い抜くほどの売上の伸びを見せるのであろうか。

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