第7回 『西洋の着想 東洋の着想』ほか 

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"昨年末、欧州系戦略コンサルティング会社コーポレート・バリュー・アソシエイツ(CVA) のマネジング・ディレクター、今北純一さんにお目にかかる機会がありました。

今北さんといえば、エンジニアご出身で様々なグローバル企業(仏ルノー、仏エア・リキードなど)の要職を歴任された、まさに「グローバル・ビジネス・リーダー」。プロフェッショナルとして欧州に深く根を張り、フランス政府より「国家功績勲章」を受賞するなど日本人ビジネスリーダーの「欧州代表」といった感じです。

お話の間中、ニコニコと穏やかな笑顔を絶やさない。「一体いくつの引き出しを持っているのだろう」と感心してしまうほど話題が豊富で、それぞれの話が深い・・・。すっかりファンになり、「今北さんのような方に少しで近づきたい」と思ってしまいました(^^)

今北さんは『ビジネス脳はどうつくるか』『ミッション―いま、企業を救うカギはこれだ』『世界で戦う知的腕力を手に入れる』など沢山の著作をお持ちですが、今回はその中の1冊を含め、計2冊をご紹介します。"

『西洋の着想 東洋の着想』 今北純一・著 文春新書・刊 1999年

これまでに今北さんの著作を何冊も読みましたが、その中で最も好きな本です。とても難解な内容が平易な言葉で分かりやすく書かれている。それが最初に読んだ時の読後感でした。一般的な新書よりも読むのに時間がかかると思いますが、ページをめくりながら考えさせられる本です。話題の幅、引用元のバリエーションもお楽しみください。

今北さんの問題意識は・・・

要するに世間の常識の実態は極めて曖昧模糊としたものであり、これこそが世間の常識だと箇条書きにして封印したものはどこにも存在しないということなのだ。世間の常識の実態はぼほ幻想に近いと言ってもいいくらいのものでしかない。ところがそんな世間の常識に日本人ほどマインドコントロールされている国民はいない。(中略)世間の常識を自分の頭で吟味し、おかしいと思ったら世間の思惑から自由な立場で、自分の考え方、そして生き方を変えていくだけの勇気を持つことだ。

というとことにありますが、特に第2章「二つのアプローチを考える」では、何が西洋でなにが東洋かというようなことではなく、物事に取り組み、ブレークスルーを試みる際には二つの方法でアプローチすることが重要であると書かれています。

マクロとミクロの相対性
似て非なる二つのコンセプト
微分的な機動性と積分的なコントロール
粘土細工と紙切細工
技能と技術のシンクロニゼーション
円陣方式とバケツ・リレー方式

本当にたくさんの「学び」がつまった一冊ですが、心に残ったフレーズをいつものように少しご紹介します。

私は、国境を越えた共同プロジェクトを論ずる時、それが芸術の世界であれ、技能や技術、あるいは商品開発の世界であれ、日本人の発想の空間と外国人の発想の空間とも、それぞれ「伝統及び風土」というもう一つの次元を加えた四次元空間としてとらえていく必要があると考えている。

学問の世界を、細分化し、専門化したのは他ならぬ人間自身であって、それぞれの分野と分野の間には、本来境界線は存在しないのである。自らこしらえた境界線のために」自由な発想を閉じこめてしまうことはない。

独創性豊かな個人とは結局は、設定した目標に近づくための事象を必然的に導き出すための準備作業において、運やツキという一見偶然と思われる現象の奥に潜む因果関係の糸を見逃さず、必然と偶然のペアリングをうまくマネージしていく人のことである。

(フランス人の友人のコメント)
西洋には「全」と「無」しかない。「全」は、自分が存在しなければ何も存在しない、という世界であり、「無」は、自己否定の世界、ただし、自己否定する行為そのものも、実は、イニシアチブをとっているのは自分にほかならない、という考え方だ。これに対し、東洋には、「全」と「無」、以外に「空」という世界がある。完全に自分を自然の流れにあずけきった時に、本当の自分を取り戻せる、とするのが「空」だ。

(フラクタル理論のマンデルブロー氏の「面白い人」の定義)
個人としての“独自の発想”を優先し、常に自分自身の知的好奇心をドライビング・フォースにして新しいことに挑戦している人

長期展望は計算でするものではないということである。計算機を使っていると、暗算が遅くなるように、人間は、もっと自分の頭の中での思考を大事にしないと、発想がなまってしまう。(中略)人の意見、つまり世間の常識の後追いに汲々とする人間には、イノベーションを見つけることもできなければ、リーダーシップを発揮することもできないからである。

10年近く前に書かれた本とは思えない。胸躍る知の冒険がつまった一冊です。

『インテル経営の秘密』アンドリュー・S・グローブ・著 小林薫訳 早川書房・刊 1996年

著者はあのインテルを作ったアンドリュー・S・グローブさん。バリバリのエンジニア出身の方です。マネジメントのハウツー本のように読めてしまう部分もありますが、実は「マネージャー、リーダーはどうあるべきか」をかなり深い所から追究した本です。

グロービス経営大学院院に「経営道場」という科目があります。吉田松陰の松下村塾をイメージしたクラスで、良書を読み、意見を交換することを通じて学びを深めていきます。講師はファシリテーターと呼ばれます。「教師と生徒」ではなく、意見を交換するなかで「共に学ぶ」というコンセプトだからです。現在私が担当しているクラスの初回でもこの本を採用しており、このコーナーで紹介しておきます。

序文にあるこの問いを読むたび、背筋が伸びます。

(1) あなたは本当の価値を付加しているのか、それとも単に情報をあちこちへ流しているだけなのか。
(2)自分の周辺で何が起こっているかに関して、いつもアンテナを張り、回路を接続して、情報収集を怠らないでいるか。
(3)新しいアイデアや、新しい手法や、新しい技術をいつも試みているか。

以下の二つは、最も心に刺さったフレーズです。「もし、私だったらどうするか?」をキーワードに2回ぐらい丁寧に読んでいただくと、この本のすばらしさがわかると思います。

こうした会社の中のすべてのマネージャーは、新しい環境に自らを適応させていかなければならない。(中略)なしうることはすべてなされうるということであり、たとえ自分がやらなくても、必ず誰かよその人間がやってしまうと言うことである。

自信というものは結局のところ、誤ったビジネス上の意志決定をしたり、不適切な行動をとったり、提案などを否決されたりしても、それで死んだ人はいないじゃないかと肚をくくるところからたいていは生まれてくる。

とても分かりやすい事例やメタファーを使いつつ話が進みます。エンジニア出身の経営者の方が書かれたマネジメント関連本として、「分かりやすさ」という点では秀逸です。

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