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第8回 政策の伝え方(2)―休む勇気と写真撮影の極意

投稿日:2008/01/09更新日:2019/04/09

フジテレビ報道記者を経て、弱冠31歳で逗子市長の役に就き、数々の実績を上げてきた長島一由氏が、官民比較の視点で、行政・政治の実態を赤裸々に語る「フジテレビ vs 逗子市役所」。前回に続き、選挙戦における有権者への政策の伝え方に迫る。

選挙のタイムマネジメント(2)―エネルギー充電に時間を割く

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選挙期間のタイムマネジメントとして、もう一つとても重要なことを挙げる。

それは、活動することが一番の精神安定剤になってしまうことによる弊害だ。

選挙は受験勉強と同じで、やればやるだけきりがない。受験生は、たっぷり勉強した日は満足感に浸ることができるし、スランプに陥って勉強が手につかないと不安になる。選挙の候補者も同じだ。握手をしたり、演説を聞いた人が、はたして投票所に足を運んで自分の名前を書いてくれるだろうか。保証はどこにもない。そんな雲をつかむような活動の連続だから、当然、活動が思うようにできないと不安になる。

だが、受験と選挙には大きな違いがある。周囲の目だ。受験生は、徹夜で勉強して、無精ヒゲに青白い顔をしていても、試験当日、得点さえできれば何の問題もない。しかし選挙の候補者は、人を引き付ける魅力がなければ、名前を書いてはもらえない。

2007年の参議院選挙で、赤城徳彦・農林水産大臣の顔の絆創膏をみて、「この人に総理大臣をやってもらいたい」と思った人がいただろうか。

選挙というのは、単に喋ればいいというものではない。朝の駅頭でペコペコとおじぎをしたり、ビラを配っていればよいというものでもない。

候補者は、人前に出ているときは常に人を引き付ける魅力を持ち、演説をするときは相手を唸らせる必要がある。少なくとも「あいつのいっていることはもっともだ」と相手を納得させる内容を話す力量が求められる。ビラの原稿も同じだ。

お笑いのタレントさんや、漫才師が舞台裏では、寡黙だったりするのは、エネルギーを溜め込んでいるからだ。それと同じように、徹底的に人前に出る選挙の候補者は、「休む勇気」をもつ必要がある。仮眠や休憩を取れるときは、無理してでもどんどん取る。そして、表舞台に立つときは徹底的に元気よく、かつ集中力を発揮するのだ。

私は、知事選挙や国政選挙も含めて、応援弁士だけでなく、スピーチライター、公開討論会のシナリオの作成など、裏方としてもかなりの選挙に関わってきた。冷静に他人の選挙を見ていると、これができる人とそうでない人がいることに気がついた。

「休む勇気」――。

これを持てるか否かは、その人の選挙での勝敗を分かつといってもいいほど、重要なポイントだ。

選挙ポスターの出来ばえをよくする法

ここで選挙ポスターに関する選挙技術の“企業秘密”を一つ明かそう。

政治家は、理念や志、政策、実行力など、あらゆる要素が試される。その中で、候補者の表情がとても大事だ。歴史家の塩野七生さんも「大衆はリーダーの顔をみてついてくる」というほどだ。

それでは、政治家が美男、美女ばかりかというとそんなことはない。選挙は人気投票と違う。政治のフィールドでは当然ながら、タレントの世界とは求められている資質が違うからだ。

政治家は法律や制度を策定し、ときには利害の対立する意見をまとめていかなくてはならない。親しみやすさや外見に魅力があるだけではとても務まらない。つまり、顔が大事、というのは表情にそうした賢さやしたたかさが滲み出ているかということだ。

だから、顔の美醜が問われるのではない。表情を見られるのだ。どんなに立派な政策を掲げていても、頼りなさそうな顔をして自信のなさそうな虚ろな目をした候補者にあなたは投票するだろうか。

そう考えていくと、いわゆる泡沫候補とされる人は、選挙公報の文字がごちゃごちゃしていることとあわせて、選挙ポスターの出来ばえがよくないことが共通していることに気がつくだろう。

選挙ポスターについては前述したように、背景やキャッチコピーなどの文字要素はもちろん、文字の色、字体まで細かく注意を払うが、最も大事なことは、顔写真自体の出来ばえだ。

最近は、技術の進歩でかなりのところまで写真を修正できる。公職選挙法では、いつの時点の写真であるか制限がないため、平気で10年前の写真を使うような人さえいる。ただ、どんなに修正技術が進化しても、元の写真自体が悪ければ限界はあるし、あまりに昔の写真を使えば、新聞の候補者紹介などの最近の写真と比べて、有権者はおかしいと見抜くだろう。

だから、ベストな写真が絶対に必要になってくる。それにはどうしたらよいか。

選挙ポスターを作成する場合、たいていはどこかの広告代理店や印刷会社に依頼する。撮影も、スタジオに行って、プロのカメラマンにたくさんの写真を撮影してもらい、その中から、ベストの1枚を選択して、ポスターに使うのが一般的だ。

ところが、人間の顔というものは、その日の体調によって表情が違う。寝不足でもダメだが、「明日はポスター撮影だから十分睡眠を取ろう」などと万全を期しても、逆に寝すぎて目が少し腫れぼったくなってしまうこともある。その日の体調だけでなく、体重やそのときの精神状態など、表情にはその人の現状が色濃く反映してしまう。

このため、1日でプロのカメラマンにスタジオで100枚の写真を撮影してもらうよりも、まちの写真屋さんに行って、何カ月にもわたって、10枚の写真を10回に分けて撮影した100枚の中から、選りすぐりの1枚を選んだほうが、ベストショットを獲得できる可能性が高まる。コストも後者の方が断然安く収まる。

さらに、たくさんの写真の中から、「この写真だ」と絞り込む選定作業は、ポジの段階で3〜5枚程度を選択する。そのポジを、実際のポスターの大きさに印刷会社などに作成してもらう。ポスターの制作会社によっては、写真だけでなく、文字要素の色が違ったバージョンや、レイアウトが違う様々なバリエーションを作ってくれる。そうして出来上がったゲラ段階のポスター大の写真を壁に貼って、なるべく多くの人にどれがよいか選択してもらうのだ。

選挙ポスターは、机の上に置いて見るのと、街中に掲示されて真横からや、少し上から眺めるのとでは感じが違う。また、本人が気に入っている写真と、客観的に他人が見ていいと思う写真は、案外、異なるものだ。

これらの作業は、本当に用意周到にやるべきなのだ。

もちろん、選挙ポスターだけではなく、練り上げた政策、選挙のタイムマネジメント、対抗馬の見極め、そのときの政治状況など、様々な要素が絡んで、最終的な数字となって有権者からの審判が下されるのが選挙。どれか一つの要素だけが突出しても勝つことはできない。

ただ、例えば候補者が何十人も乱立する市議会議員選挙では、国政選挙や首長選挙と違い、公営掲示板に一斉に選挙ポスターが掲示される。こうした選挙では、特に、選挙ポスターの出来ばえが当落選上のカギを握るといっても過言ではない。そうした重要なポイントを放念することなく、しっかりと押さえることが大切と思う。

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