「起業家精神」を天性のものと思っていませんか? 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

起業家精神(アントレプレナーシップ/「企業化精神」と表記することもある)に関する最も大きな誤解は、「起業家精神は持って生まれた資質であり、学ぶことはできない」というものでしょう。

実は、似たような誤解はリーダーシップに関してもありました。20世紀の前半までは、「リーダーは、リーダーに生まれるのであって、リーダーに育つのではない」という考え方が主流でした。しかし、研究が進むにつれて、リーダーシップとは学びうるスキルであり、天性の資質ではないということが分かってきました。そのスキルや手順さえしっかり学んでいけば、誰もがリーダーシップ行動をとることは可能であるというのが昨今の考え方です。

起業家精神も同様です。我々はどうしてもスティーブ・ジョブズやジェフ・ベゾス、マーク・ザッカーバーグのような突出した起業家を見て、「あの真似はできない」などと思ってしまいます。しかし、それは比較対象を間違ってしまったゆえの錯覚です。実は、起業家精神も学びうるスキルであり、どのような人間であっても、手順を正しく踏めば、起業家としての行動はとりえますし、一定の成果を残すことは可能なのです。

では、起業家精神を実現する手順とはどのようなものでしょうか?これも錯覚されがちですが、「情熱を持つ」ということはスタートラインではありません。まずは考え、ちょっと行動してみることの方がはるかに重要です。考え、行動していくと、自ずと情熱が生まれてくるのです。

その際に重要なことは、「想像力」を働かせ考えることです。興味のあることについていろいろ想像してみましょう。そしてそこで何かしらのビジョンを描いてみます。この段階ではまだ大きな情熱は必要ありません。

情熱が醸成されるのはその次の段階です。想像力を働かせているうちに、徐々にそれを実現(創造)したいというモチベーションが湧いてきます。モチベーションが湧けば、自ずと実験するようになります。単なるアイデアにとどめようとするのではなく、どうすればうまくいきそうかを実地検証しようと考えるわけです。この段階では、まだイノベーションすら必要ありません。ひたすら創造性を刺激する方が重要です。

創造性が十分に熟したら、いよいよイノベーションのステップに移ります。キーワードは「フォーカス」と「リフレーム」です。集中すべきものを見つけ、物事の捉え方を変え、それまでになかった方法論を考えるのです。

ここまでの流れをまとめると以下のようになります。
・貧困のない社会を思い浮かべるのは「想像」
・貧困のない社会を生み出す方法論を考えるのが「創造性(クリエイティビティ)」
・そして貧困のない社会を作る全く新しい方法論を考えるのが「イノベーション」

ここでいよいよ起業家精神の段階に至ります。ポイントは、逃げずに取り組む粘り強さと、周りの人間を巻き込むことです。どんなに良いアイデアがあっても、こうした粘りがないと、物事はうまくいきません。しかし、それまでの手順をしっかり踏んでいれば、すでにユニークなアイデアは湧いているでしょうし、情熱も湧いているはずです。

ここが重要なポイントです。何もないところで人を巻き込もうとしても難しいでしょうし、現実に人はついてきません。それまでにじっくり物事を考え、自分の内発的動機を高めているからこそ、起業家精神を発揮できるようになるのです。起業家精神が最初にあるわけではなく、それに至るプロセスを踏むことが、起業家精神の発揮につながるのです。

このプロセスは教えられるものですし、実際にこのプロセスを学生に踏ませることで起業家を多数生み出すことに成功している大学、大学院もすでに現れています。

実は、ここで紹介した方法論は、NHK白熱教室や『20歳のときに知っておきたかったこと』で有名なスタンフォード大学教授、ティナ・シーリグ教授の最新刊『夢をかなえる集中講義』のエッセンスをまとめたものです。同氏は起業家輩出校としても名高いスタンフォード大学において、さまざまな先進的なプログラムを開発し、実際に成果を残してきました。

いまの日本に求められているのが、独立ベンチャーや社内ベンチャーによる新たな価値創造であることはもはや説明の必要はないでしょう。しかし、それをできるのは一部の人間であるという錯覚が、多くの人をチャレンジから遠ざけてきたように思います。

しかし、今回ご紹介したように、それは錯覚にすぎません。「起業家に生まれるのではなく、起業家に育つことができる」というのは、非常に勇気づけられる考え方でしょう。一人でも多くの人がこのように発想を変え、実際に起業家精神を発露されることを期待したいものです。

3/9(水)グロービス東京校でティナ・シーリグ教授のセミナーを開催!

『夢をかなえる集中講義』の出版を記念し、ティナ・シーリグ教授によるセミナーを5年振りにグロービス東京校で開催いたします。起業家精神を育み、ひらめきを実現していくステップについてお話いただく予定です。グロービス生ではない一般の方もご参加いただけますので、ぜひお気軽にお越しください。

※通訳なしの英語セミナーです

日時: 2016年 3月 9日(水)19:00-20:30
場所: グロービス東京校
参加費: 2000円(グロービス生は1000円)

参加申し込みはこちら>>
 

東京大学理学部卒、同大学院理学系研究科修士課程修了。戦略系コンサルティングファーム、外資系メーカーを経てグロービスに入社。累計150万部を超えるベストセラー「グロービスMBAシリーズ」の著者、プロデューサーも務める。著書に『ビジネス仮説力の磨き方』『グロービスMBAビジネス・ライティング』『グロービスMBAキーワード
図解 基本フレームワーク50』(以上ダイヤモンド社)、『[実況]ロジカルシンキング教室』『[実況』アカウンティング教室』『競争優位としての経営理念』(以上PHP研究所)、『利益志向』(東洋経済新報社)、『ロジカルシンキングの落とし穴』『バイアス』『KSFとは』(以上グロービス電子出版)、共著書に『グロービスMBAマネジメント・ブック』『グロービスMBAマネジメント・ブックⅡ』『MBA定量分析と意思決定』『グロービスMBA事業開発マネジメント』『グロービスMBAビジネスプラン』『ストーリーで学ぶマーケティング戦略の基本』(以上ダイヤモンド社)など。その他にも多数の共著書、共訳書がある。
グロービス経営大学院や企業研修において経営戦略、マーケティング、ビジネスプラン、管理会計、自社課題(アクションラーニング)などの講師を務める。グロービスのナレッジライブラリ「GLOBIS知見録」に定期的にコラムを連載するとともに、さまざまなテーマで講演なども行っている。

名言

PAGE
TOP