ポジショニングの基本:顧客の脳内にオンリーワンの居場所を作れ 

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『グロービスMBAマーケティング』の第4章から「ポジショニングの基本」を紹介します。

ポジショニングは、いわゆる「STP-4P」と呼ばれるマーケティング・プロセスの中でも、「セグメンテーション」「ターゲティング」と、「4P(マーケティング・ミックス)」をつなぐ、極めて重要なプロセスです。ポジショニングの仕方によって、その後の4Pがすべて変わってしまうことも珍しくありません。ポジショニングの究極の目標は、顧客の頭の中に、「価値があり、なおかつユニークなポジション(居場所)」を築くことです。そのためには、顧客のKBFを探ったり、場合によっては深層心理に切り込み、インサイト(洞察)を得て、それをポジショニングに反映させる必要があります。効果的なポジショニングをすることで、「オンリーワン」の位置づけを実現できれば、マーケティング全体の費用対効果も格段に上がっていくのです。

(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、ダイヤモンド社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

ポジショニングの基本

ポジショニングとは、ターゲットである顧客に自社製品がどのように魅力的であるかを認知させるための活動である。

競合となりうる製品群の中から自社の製品を選択してもらうためには、消費者にとってどれだけ魅力的な価値を提供しているのかを明確に示し、それを認識してもらわなくてはならない。

ポジショニングを考えるときに注意したいのは、製品の売れ行きを決するのは「他社製品と比較して、より優れた製品であるかどうか」よりも、「顧客が魅力的な製品だと“認識”しているかどうか」であるということだ。企業はとかく自社の視点で最高品質を追求しやすいが、消費者が評価するか、価値として認識するかという視点が欠けていると、多大な努力を注いでも報いられない結果になってしまう。

日産マーチが幅広い年齢層に受け入れられてきたのは、歴代モデルの訴求の仕方には多少の違いがあるものの、日常生活の足となる親しみやすい車であることがきちんと訴求できたからである。初代のモデルでは茶の間のテレビでよく見かけるアイドルが宣伝し、2代目では大自然の雄大な一本道ではなくヨーロッパの街の狭い小道を軽快に走らせ(日本の狭い道にも通じる)、3代目では愛嬌のあるキャラクターを起用するというように、常に身近で親近感が湧くようなコミュニケーションを行ってきた。そのため、モデルチェンジで新しいデザインに様変わりしても、一貫したイメージや世界観が保たれている。このように、既存ファンの期待を裏切らずにいることが、マーチの強さの一端を担っていると言えるだろう。

ポジショニングは、マーケティング・ミックスの方針を最終的に決定づける。例えば、若い女性をターゲットとした自然食レストランを開こうとするとき、それだけの情報では、具体的にどのような施策をとるべきかがまだ定かではない。ナチュラルで安全なイメージを打ち出すのか、スタイリッシュで洗練されたイメージを打ち出すのか、リラックスできる癒しの空間をつくるのか、ちょっぴり贅沢な非日常空間をつくるのか。顧客にどのように感じてもらいたいかによって、店の名前、メニュー、価格、店舗の設計や雰囲気、コミュニケーションの仕方など、すべてが変わってくる。

このように、ポジショニングに沿って、その後のマーケティング・ミックスが設計されることになるので、ポジショニングの決定はマーケティング戦略上のきわめて重要な意思決定と言える。

戦略的ポジショニングの作り方

ポジショニングを検討するアプローチとして、ます自社製品のユニークさを認識してもらえる簡潔な表現を考えるやり方がある。これは、その製品のコンセプト自体が、これまで市場になかったような場合には特に有効である。

例えば、1979年にソニーが初めて「ウォークマン」を出したとき、開発前の社内には、「録音機能のないテープレコーダーなんて売れるわけがない」などの意見もあったという。確かに、単に「録音できないが、小さいテープレコーダー」というポジショニングをとっていたら、売れなかったであろう。しかし実際には、「歩きながら音楽が聴ける」という新たな価値を打ち出すポジショニングをとったことで、ウォークマンは大ヒット製品となった。

このように、製品のコンセプトそのものが顧客にとってまったく新しい場合、他の製品と比較する(例えば、テープレコーダーやオーディオセットなどと比較する)よりも、新しい価値観やコンセプトをそのままポジショニングとして提案してみるのは1つの有効な方法である。

もう1つのアプローチは、いくつかの軸をとってマップをつくり、自社や競合の製品をマッピングしてみるやり方だ。同じ製品カテゴリーの中で自社製品の優位性を訴えるような場合に効果的である。他の製品との違いを明確にすることで、自社製品の優位性がはっきりするからだ。マッピングに空白箇所が見つかれば、それが新製品のアイデアにつながることもある。また、同じカテゴリーに自社製品が複数存在する場合には、各製品の特徴がそれぞれどう異なるかを確認・整理することができる。

顧客が強烈に認識する特徴の抽出

顧客が多数の製品の中から最終的にある製品を選択するときに決定打となる要因を、KBF (Key Buying Factor:購買決定要因)と言う。例えば、似たようなTシャツがたくさんある中で、デザインやサイズなどを吟味しつつも最終的に一番安いものを選んだとしたら、その人のKBFは「価格」ということになる。

価格に敏感な顧客層をターゲットにするなら、「安さ」を打ち出したポジショニングがよさそうだ。しかし実際には、顧客が値段だけで選んでいるかというと、そうでもない。旅行客用の土産品であれば、「一目でその土地のモノであることがわかる」ことも重要な購買理由だろう。つまり、ポジショニングではKBFを意識しながら、自社製品の特徴を見つけていく必要がある。

ポジショニングを検討するときには、戦略的に有効な2つの特徴を絞り込んで、図表のように2軸のマップ(ポジショニング・マップ)で表現することが多い。自社の製品の特徴を顧客にアピールしようとするとき、優れていると思うことをすべて言いたくなるものだ。例えば、デジタルカメラであれば、「軽い」「画素数が多い」「安い」「デザインがよい」「扱いが簡易」「メモリーが大きい」……と、いくつも挙げたくなるのが人情だろう。

しかし経験的に、1人の顧客が特定の製品について強く認識する特徴は2つまでと言われている。それ以上だと、総花的に聞こえてしまい、「自社の製品がよいと勝手に言っているだけ」という印象を与える。また「いろいろといいらしいが、結局は何が優れているかわからない」というように特徴がぼやけてしまったりする。したがって、最も訴求したい要素を思い切って絞り込まなくてはならない。


次回は、『グロービスMBAマーケティング』から「製品のとらえ方」を紹介します。

◆グロービス出版

 

東京大学理学部卒、同大学院理学系研究科修士課程修了。戦略系コンサルティングファーム、外資系メーカーを経てグロービスに入社。累計150万部を超えるベストセラー「グロービスMBAシリーズ」の著者、プロデューサーも務める。著書に『ビジネス仮説力の磨き方』『グロービスMBAビジネス・ライティング』『グロービスMBAキーワード
図解 基本フレームワーク50』(以上ダイヤモンド社)、『[実況]ロジカルシンキング教室』『[実況』アカウンティング教室』『競争優位としての経営理念』(以上PHP研究所)、『利益志向』(東洋経済新報社)、『ロジカルシンキングの落とし穴』『バイアス』『KSFとは』(以上グロービス電子出版)、共著書に『グロービスMBAマネジメント・ブック』『グロービスMBAマネジメント・ブックⅡ』『MBA定量分析と意思決定』『グロービスMBA事業開発マネジメント』『グロービスMBAビジネスプラン』『ストーリーで学ぶマーケティング戦略の基本』(以上ダイヤモンド社)など。その他にも多数の共著書、共訳書がある。
グロービス経営大学院や企業研修において経営戦略、マーケティング、ビジネスプラン、管理会計、自社課題(アクションラーニング)などの講師を務める。グロービスのナレッジライブラリ「GLOBIS知見録」に定期的にコラムを連載するとともに、さまざまなテーマで講演なども行っている。

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