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第7回 政策の伝え方(1)―選挙活動と政治活動の違い

投稿日:2007/12/07更新日:2019/04/09

フジテレビ報道記者を経て、弱冠31歳で逗子市長の役に就き、数々の実績を上げてきた長島一由氏が、官民比較の視点で、行政・政治の実態を赤裸々に語る「フジテレビ vs 逗子市役所」。政策の作り方について議論した前回に続き、今回はその使え方・考え方に迫る。

選挙のタイムマネジメント(1)―選挙期間外にも活動する

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「この人に政治家になってもらいたい」――。

有権者に自らの想いを託し、名前を書いてもらうことがすべての始まりだ。

そこに至るには、どんなに素晴らしい政策を考えても、それを自らのセールスポイントと一緒に有権者に伝え、理解してもらわなければ意味がない。

見ず知らずの人に名前を書いてもらう。これは大変なことだ。

どうやって自分自身の存在を知ってもらうか。また、いかにして自分の政策や考えを有権者に届けるか。落下傘候補はもちろん、出馬を考えた選挙区に仮に住んでいたとしても、突然、選挙に出て当選できるほどの有権者への知名度を持っている人というのは少ない。知名度の構築というのは、多くの候補者にとって、ゼロからのスタートになる。

そこから、何百、何千、選挙によっては何十万人もの人に、自分の名前を書いてもらうには、どうするのか。一つには、知名度を高めるために、どれだけの時間を投資できるかということがポイントとなる。商品を売るときのマーケティングでも、認知度を上げるためにかける時間が長ければ長いほど高い効果が期待できるが、選挙でも同じことだ。ただ、一般のマーケティングと異なり、選挙では一つ、忘れてはいけない制約がある。それが、告知日から投票日前日までの「選挙期間」と、告知日前の「政治活動期間」、それぞれに可能な活動内容が異なるということだ。

選挙期間は、市議選、市長選は1週間、衆議院選は12日間、参議院選や知事選は17日間と、選挙によって異なるが、いずれにせよ長くて2週間半と短い。

国政選挙で、1993年の新党ブームや、2005年の総選挙のように、物凄い追い風が吹いているときは、告示の直前に出馬表明をし、その後の選挙期間中の活動だけで当選した新人候補もいた。

しかし、多くの場合、候補者は選挙の告示日のかなり前から活動を始める。

現職の政治家であれば、日々の活動が結果として選挙につながるから、表立った活動は選挙期間が近づいてきてからという判断をすることもある。ただ、それでも選挙の3カ月前にもなれば、何らかのアクションは起こすし、議会などで日々の仕事をしながらも、どこか浮き足立っている様子がありありとわかる。

そんな現職政治家に対抗するためには、新人候補は1〜2年前から活動を始めなければならないように思うかもしれない。

もちろん長く活動するにこしたことはない。だが大切なのは、期間の長さではなく、やり方の質と私は思う。

私の認識では、どの選挙か、特に選挙区のエリアの大きさによって相違はあるものの、期間でいえば大体3カ月。その3カ月間を選挙期間中にできることに、なるべく近づけて活動することが勝利への鉄則だ。

「なるべく近づけて」ということは、どういうことか。

まず前提条件として、公職選挙法により、告示日の前に「選挙活動」をすることは禁止されている。ただし、「政治活動」をすることは認められている。それでは、政治活動と選挙活動は何が違うのだろうか。

例えば、選挙期間中は、街中の至るところに設置される選挙ポスターの公営掲示場に、ポスターを貼ることができる。だが、告示日前は公営掲示場が設置されないし、そもそも当該選挙まで6カ月を切ったら、街中にポスターを貼ることすらできない。そして、候補者の名前を記載した看板を取り付けて走る選挙カーも、告示日前は走らせることができない。

選挙期間外でも活動はできる

私が政治の世界に入る前は、選挙といえば、候補者のポスターが掲示されて、うるさい選挙カーが走りまわるというイメージが強かった。このイメージからすると、選挙期間中以外、候補者はほとんど何も活動できないように思える。しかし実は、選挙期間中とほとんど遜色ない活動をすることはできるのだ。

確かに、選挙ポスターを公営掲示場に貼ることはできない。だが、選挙カーについては、候補者の名前を掲げて、街中を走りまわることはできないものの、候補者の名前を出さなければ、街宣車を走らせることも、街頭演説をすることも、政治活動としては認められている。

私の場合は、初めての市長選挙に向けて、「開かれた政治を実現する会」という看板とスピーカーを取り付けたワゴン車を選挙の3カ月程度前から使用して、政治活動をした。名前の連呼(「ながしまかずよし、ながしまかずよし」と繰り返し、名前だけを言うこと)は、選挙期間中も禁止されているが、時折、自分の名前を織り交ぜながら、自分の政策について訴えることは告示前でも、政治活動として認められている。

ただし、告示日前に「逗子市長選挙に立候補する長島一由と申します」とコメントしたらアウト。一方で、「逗子市長選挙に向けての取り組みに全力を挙げております、長島一由と申します」というのはOK。「・・・向けての取り組み」という言葉は、「=政治活動」だからだ。そのことを知らない有権者から「選挙違反じゃないのか」などと注意を受けることもたまにあるが、告示日前でも、政治活動としてできることは、実はたくさんあるのだ。

むしろ、選挙期間中は選挙活動時間が、午前8時から午後8時までと制限されているが、告示前の政治活動に時間制限はないなど良い面もある。また、市議会議員選挙では、政治活動として駅頭で早朝に個人の政治ビラを配布することが認められているが、選挙期間中は逆に、個人の政治ビラを頒布することが禁止されている。

ホームページの更新についても、政治活動期間は自由だが、選挙期間中の更新は事実上禁止されている(最近は解禁の動きもあるようだが)。

いずれにしても、有権者の政治的な関心が最も高まる選挙期間中に、有権者にとって情報に接する機会が失われるという矛盾点をはらむ公職選挙法である。大事なのは、何が許されて、何が禁止されているかを熟知すること。法律の制度と運用の中で、可能な限り政治活動を行なうことが勝利へのカギとなる。なにせ関係者の間では、告示日の時点で勝負の8割は決まっている、とさえ言われるほどなのだ。

しかし、にも関わらず、私が初めて逗子市長選挙に出馬した頃は、告示日前に街宣車を回して、演説をしている陣営はほとんどなく、「何で他の陣営は告示日前に活動しないのだろう」と思ったものだ。選挙のやり方が違うためかと思っていたが、選挙期間中の本番になってから、他の陣営も急にしゃかりきに同じようなやり方に切り換えてきた(これは地域によって異なるのかもしれない。今は告示日前に街宣車を作って活動することも珍しくなくなっている)。

以前、「選挙は有権者全員が面接官」と書いた。もし選挙が面接ならば、ライバルとの差異化が明らかに必要だ。とりわけ、組織や地盤、お金を持たない候補者は、それらを有する候補者たちと同じことをやっても、勝負になりにくい。このため、すべてを差異化する必要はないが、どこか特化して武器とするべく知恵を働かせなければならない。

ところで、選挙や政治活動への時間の投資は、一般的には長ければ長いほど知名度や認知度を上げられるが、しかし長くすればするほど労力もお金も余計にかかる。サラリーマンを辞めて選挙に出馬しようと考える人は、選挙のために1年も2年も前に会社を辞められないという事情もあるだろう。これについて、私の経験則では3カ月あれば大丈夫。選挙への立候補にあたって、3カ月以上の居住要件がある市議会議員選挙などの場合も、何人もの知り合いがぎりぎり3カ月前に住民票を移し、活動して勝利している。

*10月21日に長島一由氏の著書が2冊同時に発売されました。講談社の+α新書の『浮動票の時代』と、WAVE出版の『フィルムコミッションガイド』です。『浮動票の時代』では、本連載でも触れられている、全部浮動票で選挙に勝つことができる現象から時代や政治のダイナミズムを解き明かすとともに、全部浮動票で選挙に勝ち上がった場合の、役所のマネジメントについても記述されています。また、『フィルムコミッションガイド』には逗子市長在任中に重点的に取り組まれた、フィルムコミッションなど映画・映像によるまちづくりについて書かれています。首長の仕事、選挙、政治・行政、まちづくり、市民参加などにご関心の方は是非、手にとってみてください。

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