【特別取材】デアゴスティーニの勝ち残りの法則を探る 

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ちょっとマニアックなコレクションや組み立てホビーの紹介と共に流れる「デアゴスティーニ♪」というCMのサウンドロゴ、頭に残っている読者も多いのではないだろうか。今回は世界初にして日本最大のパートワークを主に出版する会社、デアゴスティーニ・ジャパンのヒットのヒミツを解き明かすべく、マーケティング本部メディア&プロモーション マネージャーの長谷川慎一郎さんにお話を伺ってきた!

 

Company: 意外に古いデアゴスティーニの歴史

同社のビジネスは、主に「パートワーク」と呼ばれる、特定分野やテーマを分冊という形式でコンプリートさせる雑誌の企画・出版である。その歴史は創設者である地理学者ジョバンニ・デ・アゴスティーニが、1901年にイタリアで地図を普及させることを目的として始まっている。パートワークの特徴である分冊形式が始まったのは、1959年。「イル・ミリオーネ(100万という意味)」と呼ばれる地理辞典であった。毎号32ページ、計312号の最大かつ完全なこの地理辞典は、マルコ・ポーロの「東方見聞録」の別名と同じ名称ということでも一般に知られている。

日本市場には1988年に航空機マニアの心を捉えた週刊「エアクラフト」で進出。そして大ブレイクしたのが、1994年にCD付雑誌として発売された隔週刊「クラシック・コレクション」。「クラシックマニアではないが興味はある。これを揃えればちょっとツウになれる・・・」そんな人々のキモチを捉えて創刊号180万部、トータル1600万部を売り上げた。(ちなみに、筆者の実家にもシリーズがぞろっと並んでいた・・・)
 

業界: パートワークのタイプと人気のヒミツ

同社のヒミツに迫る前に、パートワークにはどんなタイプがあるのか、少し基礎知識を付けておこう。大きく分けると4つのタイプがある。「マガジン系」「学べるコース系」「コレクション系」「組み立て系」である。

「マガジン系」は、最も前出の「イル・ミリオーネ」当初の形式に近いものということになるだろう。例えば、既刊の週刊「日本の城」は「全国7千以上の城を網羅」しているとあり、「日本全国の城の当時の姿を再現した復元 CG や内部の断面図、古絵図、古写真など、貴重なビジュアルを多用しながら、あらゆる角度から城の魅力をつぶさに伝えるマガジン(同社Webサイトより)」というから、城郭マニアにはたまらないだろう。

「学べるコース系」は全号読むと料理やハンドクラフトなどの技術が習得できるというもの。調理レシピ集が分冊化されたようなものだけでなく、ハンドクラフトには材料キットが付録されていて数号毎に1つの小物などが完成する楽しみもある。

「コレクション系」は毎号自分の趣味のアイテムが付属するというもの。例えば隔週刊「ジッポーコレクション」は多くのファンを持つオイルライターの逸品Zippoの名作復刻版が毎号1つ、マガジンと共に楽しめる。他にもCDやDVDが付属するものもある。個人的には隔週刊「必殺仕事人DVDコレクション」はかなり惹かれるものがある。

「組み立て系」は昨今の同社の真骨頂といえる領域だろう。2013年に発売されたコミュニケーションロボット「ロビ」を作り上げる週刊「ロビ」が発売されたが、ロビは現在パートワークの世界を飛び出してキャラクターとしても大活躍だ。また、週刊「マイ3Dプリンター」は、3Dプリンターを組み上げながら、3Dモデリングも学べるという「学べるコース系」との合わせ技で、「いきなり3Dプリンターを買ってきても使いこなす自信がない」という人の需要を集めて大人気。この1月に刊行した第55号で3Dプリンターがいよいよ完成するが、その時には現在日本に存在する個人用3Dプリンターの台数が倍以上にふくれ上がることになる程の発行部数に達しているという。

Targeting: 購読者は誰なのか?

グロービスのマーケティング講師である筆者は常々クラスで、「セグメンテーションは性別・年齢などの典型的な属性だけで考えるな」と力説しているが、まさにデアゴステー二のターゲットはそんな単純なセグメント軸では語れない。

筆者にはコレクション癖があり自宅には色々なものが転がっている。しかし、コツコツ系がダメなので買うときはいつも「大人買い」だ。また、不器用なので作るのが苦手で白状すれば今までの生涯でプラモデルはクルマを1台何とか作り上げたことしかない。とすると、確実にターゲットではないことがわかる。

ターゲットとなり得る条件は、「当該分野に対する興味の深さ」×「作り上げる・集める情熱」×「コンプリートまで待てる根気」という3拍子が揃わなければならないことになる。筆者はニッチでマニアックなモノに反応する嗜好があるのだが、完成品を即買いするようなタイプなので前述の通りターゲット外だ。だとすると、ターゲットはニッチもニッチ、かなり限定されることになるように思われる。その、ニッチなターゲットが反応する商品テーマを読み解き、そのターゲット数を正確に把握することこそが同社の真の力なのである。

Product(1): トレンドを読んだ商品テーマ選定

デアゴスティーニは世界約30カ国に展開しているが、年間10~15タイトル発売されている商品の8~9割は日本独自企画で商品テーマはほぼ社内で考え出されるそうだ。常に社員がアイディアをひねり出す努力を欠かしていないだけでなく、時には社屋を出て全員私服で開放的な場所に行き、役職抜き・ニックネームで呼び合うようなアイディア出しのイベントもあるという。

テーマを出すには、当然、トレンドを読む必要があるが、理由は後述するが同社商品の開発には半年から長ければ5年以上もの歳月を費やす。そのため、一過性のブームに乗ることは厳禁なのだ。インタビュー時に筆者は「最近、擬人化されたキャラクターの人気で女の子に日本刀が流行っていますけど、どうですか?」と進言してみたが一蹴された。確かに件の擬人化キャラコンテンツ「刀剣乱舞」も登場時ほどの勢いはなくなっている気がする。そういう「流行り物」ではダメなのだ。

とはいえ、同社も「歴女ブーム」は定着していると見て、前掲の週刊「日本の城」や週刊「日本の神社」、戦国武将を取り上げた週刊「戦国武将データファイル」などを商品化している。

技術トレンドを読むことも欠かせない。2003年と2006年に自ら組み立てながらプログラミングもできるロボットのシリーズを発売しているが、2007年と2011年にロボットを2足歩行型に高性能化して発売している。

一方、同じような商材でもテーマを変えることによってターゲット拡張を図る仕懸けも怠っていない。例えば、週刊「ロビ」は同じ二足歩行型でもロビとのコミュニケーションを楽しむというコンセプトで、組み立ては付属のドライバー1本で簡単にでき、プログラミングも不要となっている。そのため、それ以前のロボットシリーズの購買者がほぼ男性で占められていたのに対し、ロビは数割の女性購買者を獲得しているという。

次号では、デアゴステー二がヒット作を作り続けて外さないヒミツと4Pの整合性、時代に合わせた今後の展開について伺った内容を記すことにしたい。

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