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裁判官が日本を滅ぼす

投稿日:2007/11/14更新日:2019/04/09

グロービス経営大学院講師の嶋田毅が創造と変革の志士たちに送る読書ガイド。今回は、司法制度の矛盾を実例を基に厳しく問い正した『裁判官が日本を滅ぼす』(門田隆将・著、新潮文庫)を取り上げた。

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"今回は、最近何かと話題の裁判関係の書籍についてご紹介します。読んでいくうちに怒りモードになること請け合いです(ただし、重要なのは、どのような怒りを誰に対して持つかですが)。「法律栄えて国滅ぶ」とならないように、皆さんもっと裁判に興味を持ちましょう!

本書は、ジャーナリストである著者が、裁判官の「わけのわからない」判決をこれでもかと斬りまくり、司法制度の矛盾や不備を明らかにしたものである。以下に引用したamazon.co.jpの商品説明を読めば、概ね内容やトーンは伝わるだろう。

極悪非道の強姦殺人魔を無罪とし、悲惨な再犯を招いた支離滅裂の判決。鑑定の虚偽を見抜けぬ思考停止した裁判官。元役員の正義の内部告発を罰した裁判官。陰惨な集団リンチによる殺人事件の、事件自体の存在をも否定した裁判官…。各個の事情を顧みぬ判例主義、相場主義、無罪病、欠落した市民感覚、正義感の欠落、倣岸不遜。緻密な取材で、司法を斬る渾身の告発ノンフィクション。

著者の職業柄か、事例が「言論の自由」関係や少年犯関係に偏っている、あるいは、問題のあるケースばかりをことさら強調して糾弾しており、大多数を占めるであろう真面目で善良な裁判官まで色眼鏡で見られかねないなど、さまざまな批判もあるだろう。しかし、本書で取り上げたような極端なケースのなかも真実は潜んでいる。また、ジャーナリストが問題提起する方法論として、多少センセーショナルに書くことは、全く否定されるべきものでもない。今回本書を紹介するに当たって、読者の皆さんには、健全な批判精神を持ちながら、何が真の問題なのかをしっかり考えていただきたい、ということをまず断っておく。

さて、なぜ小職が今回この本を取り上げたのかといえば、例のスティール・パートナーズ対ブルドッグソースの抗告棄却の理由に仰け反ったこと、その前のM&Aコンサルティング(通称、村上ファンド)の判決のときに(インサイダーに関する判決の内容は別として)「このような徹底した利益至上主義には慄然とせざるを得ない」なんていう裁判官の私見的文言が入っていて、「最近の裁判官はいったい何を価値判断の軸にしているんだろう」と疑問に思ったことがきっかけになっている。法律解釈のテクニカルな側面は別として、こうした判決(判例)が日本国民の生活向上につながるようには思えない。もっとぶっちゃけて言えば、「資本主義のロジックも企業経営のリアリティも知らないであろう裁判官が、なぜそんな越権的なことを、しかも感情論的に言うんだ!!」と感じたことがきっかけとなっている(判決理由の妥当性に関する論考については、既に多くの方が書かれているのでここでは割愛する)。

そこで思い出したのが本書だった。実は今回の文庫本を読む以前に、単行本の初版で読んでいた記憶があったので、改めて読み返してみたのだ。そして再確認したのは、結局は制度が疲弊しているんだなということ。

・制度や組織は巨大化するにつれて、本質から乖離し、技術論が優先する

・外部からのガバナンスが働きにくい制度や組織は必ず腐敗する

この「法則」が、今回も悲しいほど当てはまっている。これは、道路行政や教育行政、年金の問題でも当てはまることだし、古くは歴史上の宗教組織にもあてはまる。言い換えると、過去の失敗から何も学んでいない。

日本は残念ながら資源や食糧に乏しい国だ。少子高齢化のスピードも速い。そうした国がこれからも繁栄していくためには、「失敗から学ぶ」を他国以上に効率的に行なわなければならないはずだ。企業は行政に比べれば、まだしもガバナンスが働きやすいため、機能不全がそこまで極端ではないし(それでも少なくはないが)、近年、組織学習によって「失敗から学ぶ」能力を高めようという機運が高まっており、各社が試行錯誤している。ちなみに、近年の調査によれば、「グレート・カンパニー」の条件の1つとして、「過去の失敗は繰り返さない」というものがあることが提示されている(この調査については次回紹介する)。そうした取組みが、よりマクロなレベルでなされていないのは残念というしかない。

企業だけが頑張っていても、国としての生産性は上がらない。ビジネスパーソンとして、あるいは有権者として、どのような働きかけができるのか、我々はもっと真剣に考えるべきなのかもしれない。"

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