『戦略的思考とは何か――エール大学「ゲーム理論」の発想法』 

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「コーペティション経営」(日本経済新聞社)の著者としても著名な2人が、さまざまな事例をもとにゲーム理論の考え方を紹介する。あなたは戦略的に考えているだろうか。

静的な前提は適切か?

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" もう20年近く前のことになる。さまざまな戦略論を勉強していて感じたのが、「競争相手や市場は、静的なものではないはず。自社のアクションの反響は、あらかじめ戦略立案の際に考慮しなくていいのだろうか」という疑問だった。というのも当時、多くの戦略書は、環境分析に基づき自社の戦略を構築し、環境が変われば戦略も修正していくという手順を紹介していたからだ。

もちろん、戦略書にある手法は正しいアプローチに違いない。しかし、もし、自社の戦略に対するリアクションが最初からある程度の確度で予想できるのであれば、それを盛り込んだ戦略を構築するに越したことはない――という思いがベースにはあった。

ゲーム理論が、こうした疑問に対してヒントを提示することは知っていたが、ビジネスや戦略とリンクさせてゲーム理論を解説する書籍は、当時はほとんどなかった(ちなみに、私がゲーム理論に初めて触れたのはブルーバックスのシリーズだった)。そんな中、1991年に本書が日本で発売された。決して薄い本ではないのだが、知的好奇心を刺激され、あっという間に読みきったことを覚えている。"

ビジネスへの示唆に富む事例を揃える

"さて、ゲーム理論の解説書は、往々にして以下の2タイプに陥ってしまう。

・応用への言及がなく、数式が多い(専門家向けに多いパターン)
・事例は豊富だが、スポーツや単純化したゲームの事例が多く、ビジネスへの示唆が少ない。数式はほとんどない(初心者向けの啓蒙書に多いパターン)

本書の特徴は、上記を避けつつ、圧倒的に多くの事例を提供していることだ。しかも、その事例がビジネスはもちろん、政治、経済、そしてスポーツ、娯楽までと多岐にわたっており、読者を飽きさせない。本の作り手の立場から言うと、これは簡単なようで非常に難しいことだ。

以下に、本書に取り上げられた事例の一部を挙げてみよう。

◆1962年の「キューバ危機」は結局どのような、どの程度の危機だったのか
◆「インディ・ジョーンズ――最後の聖戦」のラストシーンでインディ・ジョーンズが犯した決定的な過ちとは
◆顧客のためになりそうな、家電店の「最低価格保証」がなぜ顧客の利益を損なうのか
◆販売よりもレンタルの方が望ましい商材とは
◆なぜ非効率なQWERTY(キーボードの配列)がいつまでも残るのか
◆スピード違反の制限速度はどのように設定すべきか
◆理想的なジョイント・ベンチャーの組み方とはどのようなものか
◆アメリカンフットボールの試合において、3ダウン1ヤードでロングパスを投げることは是か非か
◆アメリカの議会とFRB(連邦準備理事会)の対立はなぜ起こるのか

それぞれのケースについての詳しい解説は本書を実際に読んでいただきたいが、ここで本書の引出しの広さ、そしてゲーム理論がビジネスのみならず政治や経済にも応用可能な点を、感じていただきたい。"

プレーヤーは本当に合理的に行動するのだろうか?

"さて、ゲーム理論について、以下のような疑問を感じる方もいるのではないか。

・ビジネスは複雑だ。特定のゲーム理論(多くの場合、ある前提が置かれている)が、身近なビジネスの状況に応用可能かをどうすれば判断できるのか
・そもそも、ゲーム理論が前提としている「プレーヤーは合理的に行動する」というのは、どこまで信頼できる前提なのか

この問いは、私自身が持ち続けている疑問であり、いまだ決定的な解説を見たことがない。おそらく、こうした点がうまく説明できれば、もっともっとゲーム理論はビジネスの現場で使われていくだろう。幸い、本書を契機に、さまざまな人々の間でゲーム理論への関心が高まった。ぜひ、上記の疑問に応えるような書籍に登場していただきたいものである。"

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