『ファンキービジネス』 

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2000年の発売(日本では2001年発売)以来、十数カ国語に翻訳された世界的ベストセラー「ファンキービジネス」を、7年後の2007年の視点で改めて読み直した。書かれている「ファンキーカンパニー」、「ファンキービレッジ」は果たして実現したのか――。

企業の競争ルールを大胆に予想 「知」創造の重要性を伝える

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"スキンヘッドの白人2人が頭をぶつけ合っているショッキングな表紙の本書が書店に並んでから、はや6、7年が過ぎた。ITバブルの熱気が残り、ミレニアムという言葉もまだ新鮮さを保っていたこの時代、本書は、新世紀の新しい競争ルールを高らかに宣言していた。

いわく、(土地や資本ではなく)知識こそが新時代の競争優位の源泉。
いわく、エンドレスな個性の追求こそが重要。
いわく、個人の知識とやる気を引き出すスモールカンパニーがこれからの主流。
いわく、コア・コンピテンスの時代は去った。これからはコアコンピーテント(人)だ。
いわく、感情は新ビジネスの宝の山。
いわく、フォーカス、レバレッジ、イノベーション、新しいヒエラルキーがファンキーカンパニーの要諦――。

当時、非常に印象を受けた本書を今回改めて読んで感じたのは、今も内容にそれほどの違和感がないことだ。逆に言えば、7年後の読者に大した違和感を感じさせないほど、本書が時代の趨勢を正しく見定めていたことになる。
小職はもともと、「個の可能性こそが企業の競争優位の源泉」が信条である。それゆえ、本書の趣旨には大いに共感したものだし、今回改めてその意を強くした。

さて、上記のうち、「個の可能性こそが企業の競争優位の源泉」という部分は、もう少し噛み砕くと「知識に裏付けられた情熱と創造性を持つ個の多さこそが企業の競争優位の源泉」という内容だ。そしてこれをさらに詳しく言えば、「知識を拡大再生産し、個の情熱と創造性を駆り立てる仕組みこそが企業の競争優位の源泉」となるだろう。難しいのは、この、属人的手法を離れ、組織の仕組み(組織文化なども含む)に落とし込む点だ。

先に、本書が予告した事柄は、その後概ねその通りに推移しつつあると書いた。しかし、いまだに各企業が模索、試行錯誤している点もある。それこそが、「どうすれば、そんな組織を作れるのか」という方法論の部分であり、小職が前段で「難しい」と書いた部分だ。先述したように、本書では、ファンキーカンパニーの要諦として、フォーカス、レバレッジ、イノベーション、新しいヒエラルキーの4つの指針・ヒントを提案している。しかし、それを実現するための詳細なステップ論までは示していないし、それらの優先順位やトレードオフ解消の方法も示していない(こうした書籍の宿命ではあるが)。

4つの指針のうち、「フォーカス」は、多くの企業が比較的成果を上げている部分だろう。しかし、レバレッジ、イノベーション、新しいヒエラルキー(新しい組織構造)の3点は、重要であることは誰も反論しないが、効果的な方法論はまだまだこれから創られる領域である。
対象となるのが単なる「知」であれば、ITの進化である程度の成果は上げうるのだろう。しかし、これから必要になるのは、情動や感性、美的センス、さらには生きがいなどとも結びついた「知」だ。(小職は勝手にこれを「知2.0」と読んでいる)。文脈や、より深い意味づけを必要とする知とも言える。いかに、こうした新しい「知」を組織の中で見出し、共有し、てこ入れし、ビジネスにまでつなげていくのか――自分自身の課題としても深く考えて生きたい。

さて、内容面ではいまだに色あせない本書であるが、あえて個人的な趣味から注文をつけるとすれば、翻訳とデザインは、もう少しオーソドックスなものにした方がよかったのではないだろうか。確かに「ファンキー」な作りにはなっており、その点で作り手の狙い通りなのかもしれないが、オリジナル(下の写真参照)が持っていた「上質なファンキーさ」にもっとこだわってもよかったように思う(自分自身、翻訳書も何冊か手がけており、関係者のご苦労も推察されるため、心苦しい点もあるのだが)。書籍の翻訳ひとつをとっても、「知」、特に感性と結びつけながら知を循環させることの難しさを感じる。"

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"「ファンキービジネス」オリジナルの書影⇒オリジナルの書影

※次回は2007年4月初頭掲載予定。文章を書く上で参考となる一冊を取り上げます。"

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