2020年に向けて、世界で戦うために必要な力とは? 

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G1次世代リーダー・サミット 2020年に向けて今、やるべきこと[1]

1fa74e4aae84b4b1ad48bae8fc37ec5e 小泉進次郎氏

小泉進次郎氏(以下、敬称略):本セッションにおけるパネリスト御三方の役割は、G1U-40世代に、「まあ、頑張ってるみたいだけども、まだまだだからね?」と(会場笑)、先輩として“ぶち込んで”もらうことだと思う。ということで、まずはプログラミング教育やDNA検査サービス、あるいは球団経営や無人運転等々、常に挑戦をしているDeNAの南場さんから、目覚まし代わりにガツンとくるお話をいただきたい。

南場智子氏(以下、敬称略):私は現在、DeNAという会社で、私の次に社長となって4年になる守安とともに新しい事業を興したり、全体の経営をしたりしている。それで社業に集中しているけれども、今は別の思いもある。会場の皆さんはまだイケイケの段階だからそんな心境は分からないかもしれない。私は4年前に社業を一度退いて家族優先の2年間過ごした。会社に戻ってきたときには50代になっていて、そこからもう2年が経ったわけだ。それで、今はなんというか、以前と違う心境になった。もちろん会社の発展に専属で取り組んでいるけれども、そこに「自分の思い」というものが乗るようになってきた。

それ以前は、とにかく会社を成功させて、発展させたいという気持ちがすべて。今だって発展させたい。ただ、家庭優先の2年間でいろいろ考えさせられることがあったのか、戻ってきたときに以前より広い視野になっていた。DeNAにとって良いことだけを考えるのではなくて、「これって日本や世界にとってどうなの?」と。せっかくDeNAという誇らしいチームがあるんだから、チームで力を合わせ、もっと日本や世界に良いことをしようという気持ちに、1段階上がった気がする。

7fe79c5d5342b991ab6ed8c33f0efc62 南場智子氏

皆さんぐらいの歳の頃はがむしゃらだった。1週間の睡眠時間が合計で1桁というのもザラだったし、もう、がるがる仕事をしていた。で、会社を離れていた2年間で睡眠時間がやたら増えたわけじゃないけれども、仕事から少し距離を置いたのち、そこから戻ってきたときに幅が少しだけ広がっていた。それで今はロボットタクシーなんかにも投資をしている。西村副大臣と小泉さんが2020年の東京オリンピックで走らせてくれると言うから、それを信じて(会場笑)。

小泉:初耳ですね。

南場:(笑)。5年も先のことに、しかも東京で走らせることができるかまだ分からないという領域にDeNAが投資をするなんて。だから事業の幅だけじゃなくて時間のスパンも長くなった。「そうやって誰かがリスクを取らないと、日本もグーグルやアップルに追いつけない」と。株主さんもいるから大変だ。「本当に大丈夫なんですか?」と聞かれるし、私も取締役会で侃々諤々の議論をしてきた。ただ、それでも、「やっぱり我が社がやらなきゃ」と言って立ち上がっている。そんな風に、DeNAだけが発展すればいいという気持ちから、もっと広い視野と長いスパンで考えられるようになった。「大人はすごいんだぞ」と。今日はそれを言いにきました、みたいな(笑)(会場拍手)

小泉:仕事の側から考えれば、いわば寄り道をしたことで、逆に視野が広がったと。起業家の皆さんや政治家には、あまり立ち止まる機会がない。目の前のことをがむしゃらにやらなきゃいけない立場で、今のお話は我々も考えさせられる。

258d28c4df74f75e4326d62acb7a1fc3 西村康稔氏

西村康稔氏(以下、敬称略):まったくその通りだ。私も「将来どうするか」「これからどうしたらいいか」と、じっくり冷静に考える2~3時間が欲しいと思うときがある。ものすごい仕事量で、今はそれをこなすのも精一杯だけれども。

南場:そういう時間というのは、たとえば新幹線のなかとか?

西村:移動中もそうだし、やっぱり夜。昔はよく遊んだけれども最近はまったく。

南場:でも週に7回飲んでません?

西村:基本的に9時以降はもう…。

南場:仕事しない、と。

西村:仕事しかしない。

小泉:西村さんってすごいスポーツマン。ボクシングもやっていましたよね?

西村:今でもときどき走ったりする。とにかく、体も鍛えなきゃいけないし、目の前の仕事もしなきゃいけないし、家族と一緒に過ごす時間も欲しいし。だから本当に時間がない。それで、20~30代の頃はよく遊んだけれども、今思うと「もう少しいろいろやっておけば良かったかな」って(会場笑)。皆さんもあまり遊び過ぎないように。

小泉:政治家の立場から別の大人メッセージをいただいた(会場笑)。では水野さん。巷では「くまモンの人」と言われていて、「俺、中の人じゃないぞ」とおっしゃっている、と(会場笑)。以前、面白い話を聞いた。くまモンはゆるキャラの代表格だけれども、「実は僕、ゆるキャラ好きじゃないんだよね」と。その辺の真意を伺いたい。

9e0839a5da328cb8c061d1254fb5a7bf 水野学氏

水野学氏(以下、敬称略):ゆるキャラ、好きじゃない(会場笑)。もう、つくって後悔しかしていない。その後もご依頼はたくさんいただくけれども。デザインは経営者が持つ「思い」のようなものを形にする仕事だ。で、あのときはその形が、たまたまくまモンというキャラクターになった。九州新幹線開通で熊本県庁の方々が「100年に一度のチャンスだ」とおっしゃっていたときだ。そこまではいかないかなと思ったけれども(会場笑)、熊本の方々にとってはそうだった。では、それをどうやって最大化するか。「キャラクターみたいなものがひと騒ぎしてくれると面白いんじゃないかな」というアウトプットになった。

そんな風に、今この企業で何が求められているかを、経営者の方はだいたい分かっている。でも、それを表現するのが難しくて、そこでデザイナーに丸投げしてしまっているケースが今の日本では多い。そこを橋渡しする仕事を今はしている。

小泉:ちなみにクリエイティブの世界って、ぱっと思いついたアイデアがたまたまヒットしてお金になるといったイメージを持っている方が意外に多いと思う。でも、くまモンのときは現在のデザインに至るまで…、何体つくったんでしたっけ?

水野:正確に数えてはいないけれども、たぶん3000ぐらいは。目の間隔が今より少し離れていたり、目が少し小さかったり。実際、人の顔って二日酔いでも気付かれるわけだし、すごく大切なパーツだ。それで3000ほど検証した。

小泉:最近は政治の世界もデザインやクリエイティブの力を見直しはじめている。ご同業の佐藤可士和さんにも内閣府主催のワーキンググループで委員を務めていただいているけれども、先日、佐藤さんがこういう話をなさっていた。「経産省、厚労省、国交相、外務省、防衛省等々、各省庁が別々にキャッチフレーズやロゴを使っていて、“日本って何か”というのが分からないよね」と。「だから、一番望ましいのは総理直轄の日本ブランディング戦略会議みたいなものを設け、そこで全省庁を通じたブランディングをすることだ」とおっしゃっていた。そういうことをしないといけない、と。

水野:まさにそう。ビジネスには社長がいて、その下に、たとえば広報・広告担当の方がいたりする。つまり長がいる。当然、政治の世界も総理大臣を筆頭とした組織がある。でも、クリエイティブだけは、「広告やCIはこの会社に頼もう」といったクリエイティブのパートナーがいない。だから僕最近、自分の名刺に「クリエイティブコンサルタント」という肩書を入れた。そういうことを仕事にしているから。それでDeNAさんの名刺フォーマットづくりもお手伝いさせていただいたりして。

南場:さっき待合室で名刺をいただいたのだけれども、皆さんの名刺には名前が堂々と書いてある。で、「なんか、あたしの名刺だけちょっと名前が小さいなあ、だっさいなあ」なんて言っていたら、「それ、ボクがデザインしました」って(会場笑)。

水野:(笑)いろいろと社のご意向も鑑みてつくっておりますので。

小泉:以前、水野さんのお話で「なるほど」と思ったことがある。「ロゴというのはシンプルで可読性の高いものがいいという通説がある。でも、それは場所や場面や会社の歴史等々、状況によっては必ずしも正解じゃない」とおっしゃっていた。

水野:そのあたり、人間の記憶力や判断力を馬鹿にし過ぎているきらいがあると感じていた。人間には2時間の映画でもストーリーをすべて覚えるだけの能力がある。あるいは、政治家の方はさらに多いと思うけれども、人生のなかで出会ったおよそ1000人の顔から、なんとなくの属性を判断できるらしい。モノと比べたら、人間の顔にはそれほど大きな違いがないのに、それを1000人ほど覚える能力を持っている。でも、マークの話になるといきなり「可読性」とか「分かりやすく」なんて話になる。そうじゃなくて、思い入れや、その企業“らしさ”がきちんと入っているかが大事なのだと思う。そこに気をつけたデザインが売上や消費者の理解につながっていくと思う。

ここで働きたい、自分は絶対に成功するんだ、という強い意志を持った人材が必要

小泉:DeNAはロゴも認知されていると思うが、今は球団も持っている。以前、球団を持ったことで知名度が一気に向上して、信頼にもつながったというお話を伺ったことがある。「それで学生がDeNA入社を希望しても親が止めなくなった」と。

南場:そう。親はそれまで “絶賛”反対。もう、お母さんが来社して玄関に座り込んで、「息子に出した内定を取り下げてくれるまで帰りません」なんて言ってきたこともある。今はそれがなくなった。「12しかないプロ野球球団を持つ会社の1つだし」ということで、親の世代にも一定の社会的信頼をもらったと思う。ただ、それは事業ではプラスだけれども、採用で大きなプラスかというと、やっぱり親の反対なんて無視して、自分の考えをもとに猪突猛進型でやって来る人のほうが面白いわけで(笑)。

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小泉:まったく同感だ。先日、ある大学生が僕のところへ来て「弟子にしてください」と言う。今の時代にですよ?(会場笑) ただ、その学生に言われたのが、「僕のお母さんも“小泉さんのところだったらいい”って言ってますから」(会場笑)。だから申し訳ないけれども言わせてもらった。「あ、そうか、ありがとう。お母さんにはよろしく」(会場笑)。「けれども、“お母さんもお父さんも反対したけど、僕は小泉さんのところで働きたい”って言われたほうが僕は嬉しいな」と言った。

南場:本当にそう。20歳過ぎ男の子がそれ言っちゃいかんよねと思う。

西村:私のところにも毎年数人来る。「政治家になりたいから事務所で働かせてくれ」って。でも、そのほとんどが3日で辞める。本当に3日で。4日目から携帯に連絡が取れなくなるんだから。

南場:何やらせてるんですか(笑)。

西村:うちの事務所ね(笑)、ブラックって言われているかもしれないけれども(会場笑)。ただ、何年も働いている人だっているし、1年後には市会議員や県会議員に立候補したいと言う人だって出てくる。だから、きちんとやれば必ずできるんだ。ただ、外交、金融、農業のことから、地元の選挙区対策まで、とにかくやらないといけない仕事が多い。そのなかには支持者の方々を1軒1軒訪問したり、講演会を行ったりするような地道な仕事も含まれていて、これはオールド政治かもしれない。

一方、たとえば会場にも若い政治家の方々が何人かいるけれども、若い人たちはツイッターやフェイスブックで一気に発信したりしているわけだ。だからやり方は2通りある。ただ、その両方をやらなきゃいけない。会場にいる起業家の方々も営業活動に関しては悩んでおられるかもしれないけれども、両方やらなきゃいけないと思う。昔のように「まずは酒を飲んで云々」といった話は減ったけれども、人間関係をつくることは大切だから。で、併せて新しいツールも使って一気に発信する必要がある。

限られた時間でその両方をやろうとすると本当に大変だ。それで、まあ、1日目からすべてやるわけじゃないけれども、「今後、これだけのことを計画的にやっていくぞ」と話すわけだ。すると、「政治家になるのはそんなに大変なのか」と、滅入ってしまって辞める人が多い。だからこそ、あまり根性論を持ち出すつもりはないけれども、「自分はこれで成功するんだ」という信念は必要だと思う。それに加えて、新しい時代に対応したやり方を考えていく。その両輪でないと難しいと思っている。

あと、ベンチャーがどうやって知名度を上げるかというお話だけれども、日本ではすごく大変だ。会場には出雲さんもおられる。当初、ユーグレナは大変苦労されていて、伊藤忠商事が支えてくれなかったらその後もなかったというお話を伺っている。だから大企業がもっとしっかりしなきゃいけないんだ。大企業が変われば日本は変わる。日本には大きくてしっかりした企業がたくさんあるんだから、彼らがベンチャーを支える基盤をつくればベンチャーはもっと伸びると思う。

たとえば、デジタルハーツという、引きこもりの若い人たちを集めてデバッギングを任せている会社がある。そういう子たちはゲーム感覚で仕事をして、バグをきちんと見つける。すごくよくできたサービスだ。でも、デジタルハーツが日本の電機大手に「私たちにやらせてください」と言っても仕事をもらえない。大企業は自分たちのグループ内にそういう子会社を持っているから。でも、よくよく聞いてみると、要するに中高年の方々で、なんというか、なんとなく親会社に適用できなくなった人たちがその子会社に行っているのだという。だからバグなんか見つけられるわけがない(会場笑)。でも、そういう子会社を抱えているからベンチャーとは契約できない。

それでデジタルハーツはどうしたか。サムスンやGMといった外国企業と取引をしている。せっかく良い技術を持っていて、しかも引きこもっていた若い人たちの能力を引き出しているのに。彼らはもう一部上場したけれども、結局は海外企業と仕事をしている。日本の大企業もどこかが1社思い切ってやってくれたら、がらっと変わると思う。ベンチャーの人たちにも頑張って欲しいけれども、日本社会が新しい形へと変わるなか、やはり大企業が変わらなきゃいけない。政治も変わらなきゃいけないし、変わってきているし、大企業というか日本の経済構造も変わらなきゃいけないのだと思う。

世界で戦うには、発想やスピード感を大きく変える必要がある

小泉:南場さんはオールドエコノミーに大きな危機感を持っていらっしゃる。たとえば日本がかつて市場を席巻していたビデオカメラ市場も、今はヘッドセットでビデオカメラをセットして、スキーやスノボの映像を撮るというGoProが席巻している。「そんな風に1つの発想やアイデアで市場がかっさらわれる時代、日本のエスタブリッシュメントは大丈夫なのか」と。で、そんな話を大企業の方と南場さんがしていた際、「南場さんには僕らと新興IT企業との橋渡しをしてもらいたい」といったことを言われた南場さんが返した言葉は、「橋なんかかけてる暇ないんですよ」(会場笑)。そうした危機感から生まれているのが、たとえばプログラミングの授業だったりするのだと思う。

南場:すごい発想ができる一握りの人を入れても、影響がまったく限定的になってしまうほど日本の大企業はかたまりとして大きくなり過ぎた。だから組織の細胞すべてが変わるほどでないと。今後は、たとえば小学生の頃からデジタルネイティブで、かつプログラミングの基礎的素養も当然のこととして持っているべきなのだと思う。全員をプログラマーにするとか、コーディングができるようにするというわけじゃない。ただ、「プログラミングとは何か」「ITで何ができるか」という発想がナチュラルにできる人とすべて入れ替わらなければダメなほど、日本の大企業は厳しいのかなと感じる。

たとえばDeNAが発表した新規事業と同じことを、日本の昔の超一流企業が…、今でも子どもが入社したら親は喜ぶような一流企業が「やります」と同日に発表しても、私はまったく怖くない。でも、この会場にいる誰かが発表したら警戒する。スピード感が圧倒的に違うし、あるものを生かす発想をするから。デジタルハーツのお話なんていい例だ。そこで橋を架けてもまったく影響を及ぼすことができないほど、日本の大企業はかたまりとして大きくなり過ぎた。

で、それについてもう1つ。ニューエコノミー側となる会場の人たちも、そこで「大企業を助けよう」「廊下を渡って少し刺激を与えてやろう」といった発想をしている場合じゃない。世界で勝ってもらわないと困る。壇上のお二方以外にも会場には政治家の方がたくさんいらっしゃるから言いづらい。ただ、日本の経済や社会、あるいは国際政治の力は、今はどう考えても右肩上がりだとは言えない。「そういう状況のなかで日本と一緒に沈まないでいいんですよ」と。会場にはもうがんがんグローバルに歩いている人たちが何人もいる。とにかく日本と一緒に沈まず、世界で成功して欲しい。

日本の市場はすごく大きいし文化的にも入りやすいと思うから、ターゲット市場の1つぐらいに捉えて、まずは世界で通用する人になって欲しい。で、そのあと愛国心が残っていたら日本を救って欲しい。世界で通用しないような事業家や政治家に日本を救うことなんてできないんだから。若者はとりあえず日本のことは短期的に忘れて、どこへ行っても成功できる実力を身に付けて欲しいと思う。そうして世界で通用する人材となって自身のチームをつくったら、将来的には日本を救ってくれ、と。そう思うほど、私は日本の状況を楽観視していない。なんて言うと怒られますよね(笑)。

小泉:日本の政治力に関して厳しいご意見があった。最近の先進諸国を見ていると、日本は意外と政治的にも経済的にも比較的安定しているほうだとも感じるが、国際的な会議にもいろいろと出席しておられる西村さんの感覚はどうだろう。

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西村:我々、日本を沈ませることはしませんので。今は世代交代も進んできた。もちろん先ほど言った通り、先輩方のやり方がダメというわけじゃない。70代の高村(正彦氏:自民党副総裁)さんや谷垣(禎一氏:自民党幹事長)さんは節目節目で調整役や引き締め役を果たしておられる。そして安倍さんが60歳。私は50代だし、小泉さんはまだ30代。若い政治家もいて、総理は若手の力もいいところでうまく使いながら、先輩方の良さも引き出している。これが今の自民党だと思う。世代交代進んでいて、世界でも決して引けを取ることはないと思うし、留学等、海外経験を積んだ人も多い。昔は自民党の政治家といえば2世議員と…、(小泉氏を向いて)ごめんなさいね?

小泉:僕は4世ですから(会場笑)。

西村:(笑)。それと官僚出身。私がそうだ。で、あとは元県会議員と元秘書。かつての自民党はそれでだいたいカバーできていた。でも、最近はお医者さんやビジネスマン、あるいは弁護士から政治家になられた方も出てきて、すごく多様化している。この点は日本の政治全体で言えると思うけれども、大きく変わってきた。

あと、まあ、アメリカの議会も結構ひどい。たとえばAIIBという中国の新しい組織がある。アメリカ議会はIMFで中国の発言権が大きくなることを望んでいないから、AIIBにアメリカが出資をしたりすることは絶対にない。断言したらいけないけれども、恐らく厳しいだろう。で、今回はやっとTPPを通すためのTPAという、政府に権限を委譲する法案が通ったけれども、こちらも大変な難産で何回もやり直していた。世界のルールを決めることにアメリカが参画するか否かというとき、これほど難産して議会でもなかなか通らない。下院議員は2年に1度選挙があるからだ。我々も2年に1回ぐらいやることはあるけれども、あちらはそれが決まっている。それで、特に民主党が反対していた。「労働組合の支持やお金を失ってしまうから」とか、目先のことだけを考えてやってしまう。だから物事がまったく回っていかないところがある。

我々も選ばれなければ仕事はできないわけで、選挙のことは考える。ただ、もう少し長い目で考えなければいけないことは多い。官僚も縦割り構造で自分たちの権限のことばかり考えていては、将来のことを考えなくなってしまう。今は時代の変わり目だ。政治も官僚組織も縦割りを乗り越えて、10~20年という中長期の視点で、あるいはもっと先の日本をどうするかという視点で考える組織に変わらないといけない。有権者の方々同じ。目先だけでなく、将来の日本をどうするか、ぜひ考えて欲しい。そうすれば日本は国際社会でもっと主導権を握っていけると思う。

今後はパッションの共有が重要な時代に

水野:今のお話は、福沢諭吉の「国を支えて国を頼らず」ということなのだと思う。小泉さんも以前のG1で、「地方にもっと権限を渡して中央から力を奪うべきだ」とおっしゃっていた。それもすべて今のお話につながると感じる。で、僕としてはそれで皆が支え合うとして、「じゃあ、どのように支えていけばいいか」という点が大切だと思っている。そこで考えみると、まず世界は1700年代半ばの産業革命以降、技術の時代が200数十年続いた。これは1980年頃まで続き、そこからアイデアの時代に突入した。それがここ20~30年続いているわけだ。ただ、僕はそこから表現の時代になると考えている。皆さんが持つ技術とアイデアをどのように表現していくか。今はそこで右往左往している最中じゃないかなと思っている。

今は発想の時代のまっただなかで、その次に求められるのが恐らく表現の力じゃないかな、と。フェイスブックやアマゾンが勝っているのを見ると分かりやすいというか、どんなところに皆が注目しているのかがよく分かる。サービス自体は日本企業のほうが良かったりするけれども、フェイスブックやアマゾンは細かい見え方との部分で消費者に選ばれている。今後はそういう時代に入るんじゃないかなと強く感じる。

南場:それはすごく大事なポイントで、日本の教育はそこにハンディキャップを負わせていると思っている。すなわち、パッションや感動を共有することにあまり重きが置かれていなくて、間違えない達人を量産するという戦後の教育システムが抜本的には変わっていない。そうして解答欄から文字がはみ出ないよう正解を書き当てて、マルをもらってほっとする、と。そういうことを繰り返した時期が、会場の皆さんにも少しはあったんじゃないかなと思う。細かい改良はされているけれども、日本ではそこが重視される教育システムから大きく変わっていない。

足りないのは、心から湧き出たパッションを共有する力だ。それがないと「うねり」をつくることができない。発想に関して言えば本当は日本人だって素晴らしい。それに、私も先ほどから「日本人は」と言っているけれども、もちろん個人差のほうが国の差より大きい。だからいろいろな人がいる。ただ、総じて新しい発想やアイデアがうねりになりにくい。素晴らしい発想をしていても世界のうねりにできないというのは、共有する力という点でハンディキャップを持っているからだと思う。

私は事業家だから事業家の皆さんに主にアドレスしているけれども、それを意識して取り組んで欲しいな、と。その意味で、今日、壇上に水野さんがいらしたことは素晴らしいと思う。アメリカの政治にもひどいところはあるし、教育は、総じて言えば日本よりも大きな問題を抱えていると思う。ただ、アメリカの良い小学校を見てみると、たとえば‘Show and Tell’ということをしているわけだ。自分の一番大切なものを家から持ってきてそれをプレゼンする、なんていうことを毎日やらされる。

小泉:そのあたり、南場さんが以前インタビューで話していたジョン・ルース前駐日アメリカ大使の奥様のエピソードが面白かった。ぜひ皆さんに紹介して欲しい。

南場:そうそう。スージーさんという方で、彼女とは仲が良くてときどき会っていた。それで彼女があるとき、「智子、大変。もうサプライズ・オブ・マンス。びっくりすることがあった」と言う。とある小学校3年生の女の子の家に行ったら、その子がフライパンでも落ち葉でもなんでも、とにかくものすごい数のミニチュアをコレクションしていた。だから、「これ、学校でシェアしたの?」と聞くと、「ううん」と言う。すると、その子のお母さんが飛び出てきて、
「いえ、これは学校と関係ないんです。彼女の個人的な趣味で」
「うん、だからこれ、学校でプレゼンした?」
「ですから、これは彼女の個人的な」
「だ・か・ら、それを学校で」
って(会場笑)。話がぜんぜんかみ合わない。

「智子、それで分かったんだけど、彼女はそれを学校に1回も持っていっていなかったの」と言われた。で、彼女の驚きようを見て私もびっくりした。私だって新潟で公立の小中高に18年間通い続けていた普通の人間だから、その驚きが共有できなくて(会場笑)。「それの何が驚きなの?」と。私も小さい頃、将来お店を開くことを夢見てインスタントラーメンの調味料をたんすの引き出し一杯に集めていた(会場笑)。で、それを親友に見せたことはあるけれども、さすがに学校へ持っていったことはない。

で、後日サンフランシスコにいる我が社の社員と電話会議をしていたとき、「そういえば、こないだルース大使の奥さんがこういうことで驚いていたんだけど」と言うと、「南場さん、こっちの小学校は大変なんです」と。毎週、家から自分の大事なものを持って来るように言われ、‘Show and Tell’。それがどれほど素晴らしいかプレゼンしないといけない。または自分の大切な人の絵を描いて、「この人は僕にとって私にとって大事です。なぜなら」という話をする。そんな風にパッションを共有するそうだ。

当社もアメリカでのオペレーションはいろいろ苦労していたし、私自身も社長時代は陣頭指揮を取ってしっかりやろうとしていた。ただ、敵は、小学校低学年からそういう訓練を受けているんだなと思って大変なハンディキャップを感じた。うねりをつくるというのは、そこだ。デザインや言葉、あるいはマーケティングであってもなんであっても、どうやってそのパッションを共有するかが大事だと思っている。

西村:うちは娘が3人いて、「なぜこんな数学の難しい問題をしないといけないの?」「なぜ日本史のこんな話を覚えなきゃいけないの?」と聞かれる。だから、まず数学は「順番に従って論理的に考えると答えが出る。論理的に考えることを学んでいるんだよ」と話す。別に問題のすべてが解けなくても、順番に論理立てて考えることによって結論を求める習慣が付いたらいい、と。で、日本史は、たしかに暗記は面白くない。ただ、「実はこの出来事の背景にはこんなことがあって、世の中がこうなったから、その結果としてこんなことが起きたんだよ」なんて説明すると、「あ、それは面白い」となる。だから、単に問題を解いたり暗記したりするだけだとダメなんだと思う。

会場には公務員の方もいらっしゃる。公務員の方々は受験勉強の権化みたいな人たちだ。それで公務員試験でも好成績を取って役所に入った。すると、そのあとどうなるのか。受験勉強では「簡単な問題から解きなさい。それで80点を取れば最後の難しい問題は解けなくてもいいから」と教えられてきて、その体質のまま役所に入る。でも、世の中には難しくて解けない問題が一杯ある。で、そこは先送り(会場笑)。できることだけをする一方で、役所間にまたがるような大きな課題を先送りする体質がある。受験勉強にもいいところはある。基礎的な教養が身に付くし、論理的に学ぶこともできる。ただ、現在の受験やテストの方式はどこかで変えないと、難しい問題を先送りする体質が染み付いてしまう。今やっと変わりはじているところだと思うけれども。

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水野:問題発見能力が大事なのだと思う。日本人の問題解決能力はすごく高いと思うけれども、発見能力のほうが低いように感じる。また、それを経営者や僕らデザイナーになんとなく任せてしまうところがある。でも、デザイナーにも発見しきれない課題はあるし、皆が発見できる能力を持つ、あるいは発見できるチームをつくることが大事になるのだと思う。あと、パッションの共有というのは本当にその通りだ。要するに「売る」時代から「売れる」時代に変わってきたのだと思う。今までは「買ってくれ、買ってくれ」。そうでなく、「私はこんな人間です」「私たちはこんな企業です」と伝えていくことで、向こうが勝手に買ってくれる時代になってきた。「売る」というマーケティング手法の時代から、「売れる」というブランディング手法の時代に入ってきたと強く感じる。

→2020年に向けて今、やるべきこと[2]は 10/17 公開予定

※開催日:2015年6月27日~28日

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